世界の学生の宿題を代行してきた「論文工場」ケニアでいま起きていること(クーリエ・ジャポン)

ケニアの首都ナイロビ Photo: Ed Ram / The New York Times(COURRiER Japon)

何万人ものケニア人が、欧米をはじめとする世界中の大学生たちから依頼を受け、レポートや論文の執筆を「代行」していた。だが、AIの登場により、その仕事は激減。彼らの生活の糧は奪われた。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が現地を取材する。

【画像】論文執筆代行ビジネスを運営していたテレシオス・ブンディ

ケニアの農村出身のテレシオス・ブンディは、一族で初めて大学に通うため、2011年に首都ナイロビへ移り住んだ。そこで友人から、新しい仕事を紹介された。海外に住む大学生の論文を代筆するという、オンラインでの仕事だ。最初の依頼は、「ガルシニア」という果物の健康効果に関する2ページの論文だった。彼にとっては聞いたこともない果物であり、知りもしない学生のために書いた論文だった。3時間の作業で、7ドル(現在の為替で約1100円)を稼いだ。「お金が必要だった僕にとって、命綱でした」と、現在34歳になったブンディは振り返る。ときには1日3本を仕上げながら、彼はその後の12年間で2500本以上の論文を執筆した。公衆衛生の学位取得に向けた自分の勉強もしつつ、はるか遠くにいる工学、医学、コンピュータサイエンスを学ぶ学生たちの学位取得の手助けもしていたわけだ。なかには、彼が自分の課題の進捗状況を把握できるように、学校のプラットフォームのログイン情報を渡してくる学生もいた。当時のブンディは知る由もなかったが、彼はオンライン・ギグ・ワークの黄金期にいた。仕事を切望していたケニア、フィリピン、インドといった地域の高学歴な若者たちは、インターネット接続を手にし、デジタル経済の隙間にチャンスを見出したのだ。彼らは、経済的階層のより上位にいる人々がやりたがらない、華やかさとは無縁のタスクをオンラインでこなすことで、収入を得られるようになった。

しかし、人工知能(AI)が登場し、良き時代は終わりを告げた。

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