米空軍のF35操縦士、機体墜落前にエンジニアと50分の空中電話会議行う 事故報告書
米アラスカ州のイールソン空軍基地に配備されたF35戦闘機=2021年撮影/Colleen Coulthard/U.S. Air Force
(CNN) 今年発生した米空軍のF35戦闘機の墜落事故で、パイロットがロッキード・マーティン社の技術者と50分間の空中電話会議を行い、機体のトラブル解決に努めた後で脱出していたことが分かった。今週発表された事故報告書で明らかになった。機体はアラスカ州で墜落した。
墜落事故は今年1月28日、同州フェアバンクスのイールソン空軍基地での訓練飛行中に発生。機体が真下に落下し、火の玉となって爆発する様子が映像に記録されていた。パイロットは無事脱出し、軽傷で済んだものの、製造コスト2億ドル(約295億円)の戦闘機は破壊された。
空軍の調査では、F35の機首と主脚の油圧ラインが凍結し、着陸装置を正常に展開できなかったことが墜落の原因とされている。
報告書によると離陸後、パイロットは着陸装置を格納しようとしたが、完全には格納されなかった。再び降ろそうとした際にも、中央に収まらず、左に傾いたままロックされた。着陸装置を修理しようとしたため、戦闘機のセンサーは地上にいると誤認し、最終的に墜落に至った。
パイロットはシステムチェックリストに沿って問題解決を試みた後、基地付近を飛行中に、製造元であるロッキード・マーティン社のエンジニアと電話会議を行った。報告書によると、電話会議には上級ソフトウェアエンジニア、飛行安全エンジニア、そして着陸装置システムの専門家3人を含む5人のエンジニアが参加していた。
その後、パイロットは「タッチ・アンド・ゴー」着陸(機体を短時間着陸させる)を2回試み、動かなくなった前輪をまっすぐにしようとしたと報告書は述べている。
しかし、これらの試みでは前輪の位置を中心に戻すことができなかった。また結果的に左右後方の着陸装置も凍結してしまい、実際の着陸に必要とされる十分な展開ができなくなった。
その時点でF35のセンサーは機体が地上にいると検知し、機体のコンピュータシステムが「自動地上運用モード」に移行したと報告書は述べている。
これを受け、機体は「制御不能」に陥った。「飛行中に地上にいるかのような挙動を示した」ためで、パイロットは脱出を余儀なくされた。
機体の残骸を調査したところ、機首と右主脚で油圧系統の作動油の約3分の1が水で満たされていたことが判明した。本来なら水は含まれていないはずだった。
調査では墜落から9日後にも、同じ基地で別のF35に同様の油圧結氷の問題が発生したことが分かった。ただ当該の機体は無事着陸できたという。
報告書の指摘によれば、ロッキード・マーティンは墜落の約9カ月前の2024年4月、整備に関するニュースレターで、極寒の気象条件下におけるF35のセンサーの不具合に関するガイダンスを発行していた。ガイダンスでは、この問題により「パイロットが機体の操縦を維持することが困難になる可能性がある」と述べていた。
報告書が明らかにした墜落時の気温はマイナス18度だった。
上記の電話会議の参加者が24年の整備ニュースレターを参照していれば、「計画された完全停止着陸、または制御された脱出を勧告した公算が大きく、2回目のタッチ・アンド・ゴーは試みていなかったとみられる」。報告書はそう指摘する。最終的にこの2回目のタッチ・アンド・ゴーで、墜落につながる条件がそろったという。
CNNは空軍の報告書について、ロッキード・マーティンにコメントを求めた。
空軍の事故調査委員会は、「飛行中の電話会議を含む乗組員の意思決定」に加え、油圧作動油の貯蔵と配分を管理する「危険物プログラムへの監督の欠如」、「航空機の油圧整備手順の適切な遵守の欠如」に言及。これらすべてが墜落の原因に相当すると結論付けた。