家賃高騰で87歳の女性が退去させられ……スペインの住宅危機、抗議受け政府が対策を発表

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画像説明, マドリードをはじめとする都市で、住宅危機への抗議が行われている(26日、プエルタ・デル・ソル広場)

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アリス・デイヴィス記者、ガイ・ヘッジコー記者(マドリード)

住宅危機が続くスペインで左派連立政権は29日、賃借人の強制退去を一時的に停止する住宅対策を承認した。同国の首都マドリードで先週、87歳の女性が70年以上住んだ自宅から立ち退きを強いられたことをきっかけに国内各地で起きた、抗議活動を受けた措置。スペインでは家賃高騰と住宅不足が深刻化している。

この日の閣議では、立ち退き強制を2030年まで禁止する案などが協議された。

モニカ・ガルシア保健相は、この措置は500万人以上に救済をもたらすと述べた。一方、野党政治家のミリアム・ノゲラス氏は、この対策は「小規模の家主を冷遇するものだ」と批判した。

発表された2件の政令は即日発効するが、1カ月以内に議会の承認を得る必要がある。政府は、早くて10月2日の採決を目指している。

ガルシア保健相によると、今回の政令には立ち退き強制の禁止に加え、賃貸契約の2028年までの延長、短期賃貸や部屋貸しに対する規制の強化、投資会社による住宅購入の禁止などが、措置として含まれる。

「投機的な住宅市場に介入し、一般市民とハゲタカファンドとの間でバランスを取るべき時が来た」と、保健相は述べた。

保健相は抗議活動にも言及し、「動員と野営に感謝する。皆さんがいなければ、これは実現しなかっただろう」と付け加えた。

中道右派のカタルーニャ民族主義政党「ジュンツ・パル・カタルーニャ」の報道官を務めるノゲラス氏は、スペインの公共放送RTVEで、「数百万ユーロを運用するファンド、いわゆるハゲタカファンドが所有する物件について、そこからの立ち退き強制は、明らかに阻止する必要があるという点で、我々は全員一致した」と述べた。

一方で、「貯蓄をマンションやレストラン、不動産に投資した人たちをひとまとめにして、同じカテゴリーに入れるのは間違いだ」とも指摘した。

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画像説明, マリカルメン・アバスカルさんは23日、ストレッチャーに乗せられて自宅のアパートから立ち退きさせられた(マドリード)

スペインの住宅危機を象徴する存在となったマリカルメン・アバスカルさんは、父親が1956年から借り始めたマドリードのアパートに、両親の死後も家賃の上限が設けられた状態で住み続けていた。しかし、2018年にこの物件を購入した投資会社ウルバジェスティオンは、家賃を500ユーロ(約9万円)から2650ユーロ(約47万円)に釣り上げた。

その後、家賃は1650ユーロまで引き下げられたが、それでもアバスカルさんの月々の年金支給額の1350ユーロよりも高かった。

裁判所はこれまでに3回、アバスカルさんの強制退去を差し止めており、メディアの注目も集まっていた。しかしアバスカルさんは今月23日、70年以上住み続けたアパートから担架に乗せられ、強制的に立ち退きさせられた。

強制退去が報じられると、マドリードでは住宅支援策を求める抗議活動が発生。抗議はその後、バルセロナ、セビリア、マラガ、カディスなどの都市にも広がった。

26日には数千人がマドリードを行進し、住宅不足と家賃の高騰に直面する中で、賃借人の保護強化を求めた。それ以来、マドリードのプエルタ・デル・ソル広場には数百ものテントが設営され、抗議が続いている。

マドリード賃借人組合の広報担当を務めるバレリア・ラク氏は、この闘いは「まだ始まったばかりだ」と述べ、今週末にもスペイン全土で引き続き抗議活動を行うよう呼びかけている。

29日の政府発表に先立ち、アバスカルさんの弁護士は28日、ウルバジェスティオンと合意に達したと発表。アバスカルさんは自宅に戻れるだろうと述べた。

退去後に病院に搬送されたアバスカルさんは、会議に出席できておらず、新しい契約にまだ署名していないという。

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ペドロ・サンチェス首相率いる与党・社会労働党と左派・スマール連合からなる少数与党政権は、政令の公布から30日以内に議会で承認を得る必要があるが、これまで右派政党から支持を得るのに苦労してきた。今年4月には、賃貸契約の自動更新を求める政令が、右派政党によって阻止されている。

イサベル・ロドリゲス住宅相は、アバスカルさんの件を受け、各党に政令を支持するよう促した。

「議会には、マリカルメンに彼女の苦しみは無駄ではなかったこと、そして彼女の闘いから多くの人々が恩恵を受けることを伝える機会がある」と、ロドリゲス氏は述べた。

内閣が承認した2件の政令には、少なくとも政府がここ数日マドリードやバルセロナなどで抗議活動を行っている活動家たちの要求に真摯に耳を傾けてきたことを示唆する内容が含まれている。

立ち退きの一時停止、賃貸契約の更新、そして政府が「ハゲタカファンド」と呼ぶ投資会社による不動産購入の禁止などは、いずれも住宅問題の活動家たちがここ数日議論してきた政策だ。

パブロ・ブスティンドゥイ社会福祉担当相は、閣議で承認された措置を「国の経済的・社会的変革に向けた第一歩」と評した。同氏が所属するスマール同盟は、住宅問題に強い関心を持っており、社会労働党との連立交渉でも、この問題について明確な立場を示す決意を固めていた。

比較的大胆な新措置は、左派の大勢を喜ばせるかもしれないが、ジュンツ党の反発を招いている。過半数議席を持たないサンチェス政権が議会で政令を通すには、ジュンツ党の支持が必要となる可能性が高い。

ジュンツ党をはじめとする右派政党は伝統的に、地主や家主が支持基盤になりやすいため、賃借人に有利となるような住宅市場への介入に消極的な傾向がある。

問題は、アバスカルさんの件によって生み出された社会的勢いが、こうした懸念を払拭し、この一連の措置を法制化できるかどうかだ。

中央銀行のスペイン銀行は、需要と新規建設のギャップに基づき、国内で70万戸の住宅が不足していると推定している。

スペイン国立統計局(INE)が発表した2026年第2四半期のデータによると、住宅価格は過去1年間で12.2%上昇した。

不動産会社イデアリスタは、賃貸住宅の不足により、2025年には家賃が8.5%上昇し、マドリードだけでも9.7%上昇したと報告している。

この報告書によると、バルセロナとマドリードはスペインで最も住宅賃貸料が高い都市で、それぞれ1平方メートルあたり23.80ユーロと22.70ユーロとなっている。

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