焦点:トランプ氏に警戒強めるロシア保守強硬派、イラン攻撃で評価一変
[モスクワ 3日 ロイター] - トランプ米大統領が昨年2期目に復帰した際、ロシアの保守強硬派からは慎重ながらも楽観的な観測が浮上した。トランプ氏の予測不能な行動や気まぐれな性格は、ロシアの対ウクライナ戦略にとってプラスに働くかもしれない、と。
だが、トランプ氏がイラン攻撃に踏み切ったことで、ロシア保守強硬派の多くはトランプ氏がロシアの脅威になりつつあると見なすようになってきた。トランプ氏は現実主義者でロシア寄りのディール(取引)に応じるのではないかという従来の想定も揺らいでいる。
一部の保守強硬派はプーチン政権に対し、米国が仲介するウクライナとの和平協議から手を引き、ウクライナ領土での戦闘により力を注ぐよう公然と要求する。核開発を巡る米・イラン協議は攻撃を前にした策略であり、もはや米国は信頼できないと証明されたというのがその理由だ。
ロシアの大物実業家でプーチン政権に近いナショナリストのコンスタンティン・マロフェエフ氏は「無節操な米国は世界全体にとって脅威だ。こんな米国とウクライナに関して交渉しようというのか。確かに米国は欧州を弱体化させたいが、ロシアも弱体化させたいのだ」と述べた。
テレグラムチャンネル「コロネル・カッサド」を開設し、80万人近くのフォロワーを持つ有力軍事系ブロガーのボリス・ロジン氏はトランプ氏について「怪物であり、誰にも罰せられることがないため狂気に支配されている。その(怪物)とのいかなる合意や取引を本気で当てにするのは、愚劣と裏切りのどちらかに値する」と切り捨てた。
著名な政治学者アンドレイ・シドロフ氏は国営テレビでトランプ氏を「危険な男」だと断言し、2024年7月の暗殺未遂事件を生き延びたのは残念とまで言い切った。
シドロフ氏は「今やわれわれは誰が世界を牛耳っているのか分かっている。トランプ氏がやっていることを見れば、次第に誰も止められなくなっている。正直に言えばロシアはウクライナで身動きが取れず、現在われわれの行動は全てウクライナ問題への対処だ。(そして)われわれの主敵(米国)が、その交渉の仲介者となっている」と語った。
一方、プーチン政権は引き続き、トランプ氏がロシアに有利な条件でウクライナとの戦争を終わらせてくれるのではないかと期待しており、イラン攻撃を「挑発によらざる侵略」と非難しつつも、トランプ氏個人への批判は避けている。イランに対しても外交的な支援にとどめ、目に見える物理的な援助は提供していない。
プーチン政権は、イラン情勢を受けてウクライナ和平協議の道筋や時間軸を巡る不透明感は増大したとはいえ、なお協議を続けるのがロシアの利益になると信じているともコメントしている。
こうした姿勢からは、少なくとも当面はロシアに有利な形でトランプ氏をウクライナ問題協議に関与させ続けることを目指しつつ、ロシアが同意できないトランプ氏の政策には「ノー」を突きつけるという微妙な外交のかじ取りをプーチン政権が続けていく意向がうかがえる。
米国のイラン攻撃は、ロシアにとって明るい材料だとの声もある。プーチン氏の特使を務めるキリル・ドミトリエフ氏が言及したのは、これまでロシアが財政収支を均衡させる上で十分な水準に達しなかった原油価格が上昇する可能性だ。
何人かのロシアの専門家は、中東での紛争が長引けば、米軍の防空ミサイルがペルシャ湾岸諸国に送られ、米国のウクライナに対する関心が低下し、ウクライナ向け武器弾薬供与が減少するかもしれないとの見方を示した。
それでも強硬派から懸念が出ているのは、ロシアの政治・安全保障の中枢に渦巻く不安の表れと言える。強硬派の目には、ロシアがウクライナに拘束され、国益を守るために旧ソ連のような方法を駆使できない中で、攻撃的な米大統領がロシアの世界的な影響力をじわじわと削いでいる光景が映っている。
こうした観点では、確かにトランプ氏はロシアから同盟勢力を次々と奪い去ってきた。例えば24年12月にはシリアで親ロシアのアサド政権が倒され、その後就任したシャラア暫定大統領はホワイトハウスでトランプ氏から歓待を受けた。
ロシアと友好関係にあったベネズエラのマドゥロ大統領も今年1月に米軍によって拘束され、つい先日にはイラン最高指導者のハメネイ師が殺害された。
長年ロシアと同盟を結んできたキューバにも、トランプ政権が圧力を強めている。
トランプ氏批判派は、同氏がロシアに対してあまりに弱腰だと主張する。しかしロシアの保守強硬派の一部は、トランプ氏がロシアの重要な同盟勢力を相次いで消滅させている動きに動揺を隠せない。いつかトランプ氏が直接ロシアを標的にするかもしれないと考えているからだ。
超国家主義哲学者で強硬派思想を持つアレクサンドル・ドゥーギン氏は自身の支持者にこう呼びかけた。「イランが持ちこたえれば全てが逆方向に転じるだろう。(しかし)イランが崩壊すれば次はわれわれの番だ。トランプ氏が本来の『MAGA(米国第一主義)』思想に忠実だったころは、われわれには共通の基盤があった。だがトランプ氏が急速にMAGAから距離を置き、ネオコンに接近するとともに、われわれとの接点は急速に消えてしまった。今のトランプ氏とはかかわらないのが得策だ」
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As Russia Chief Political Correspondent, and former Moscow bureau chief, Andrew helps lead coverage of the world's largest country, whose political, economic and social transformation under President Vladimir Putin he has reported on for much of the last two decades, along with its growing confrontation with the West and wars in Georgia and Ukraine. Andrew was part of a Wall Street Journal reporting team short-listed for a Pulitzer Prize for international reporting. He has also reported from Moscow for two British newspapers, The Telegraph and The Independent.