英国が方針を転換、海外製防衛装備に契約額と同額のオフセットを義務化
国際的な武器取引に伴うオフセットは常識に近く、現在では多くの国でオフセットポリシー(法律による相殺契約の義務化)を導入して防衛装備品調達に契約額の30%~100%のオフセットを要求しており、英国も10月30日「海外の防衛関連企業に契約額と同額=100%のオフセットを義務付ける」と発表した。
参考:Defence contracts to prioritise British jobs and skills
もはや国際的な武器取引に伴うオフセットは常識であり、従来はオフセットの内容や条件を取引毎に交渉することが多かったものの、現在では多くの国でオフセットポリシー(法律による相殺契約の義務化)が導入され、例えばカナダ、マレーシア、タイは防衛装備品調達に契約額と同額=100%、インドネシアは契約額の最大85%、トルコは契約額の70%以上、サウジアラビアとアラブ首長国連邦は60%、韓国は最大50%、インドは30%の価値をもつオフセットを要求することを法律で定めている。
出典:SAAB
オフセットの内容は直接投資、間接投資、技術移転、ライセンス供与、産業協力、商品やサービスの購入など様々だが、オフセット達成率はオフセットクレジット(部品購入への投資額をオフセットクレジットに換算すると1倍、技術移転やライセンス供与は2倍、現地で研究開発は3倍、中小企業への発注は5倍といった感じ)で判断するため、契約額と同額=100%のオフセットを要求されても実際には契約額の半分程度で収まることが多く、そもそもオフセット履行コストを上乗せして契約額を見積もっているため「契約額と同額のオフセットを要求されれば受注企業側は儲けを全て吐き出す」という意味ではない。
英国も1990年に導入したオフセットポリシー(Industrial Participation=正確には産業参加)で海外調達額の100%相当のオフセットを要求していたが、非契約、違反してもペナルティーなし、企業の自主性に任せる、オフセットクレジットによる乗数なしというもので、2012年に導入したDefence and Security Industrial Engagement Policy(DSIEP)で更に条件を緩めて実質的にオフセットを求めないという立場に移行したが、英国防省は10月30日に新しいオフセットポリシーを発表し「海外の防衛関連企業に契約額と同額=100%のオフセットを義務付ける」「5,000万ポンドを超える契約が対象になる」と変更した。
We launched the Defence Offset Policy today which will help prioritise buying British wherever possible and where the UK must buy defence equipment from overseas, ensures that Britain gets something back.
Defence Secretary @wesstreeting explains 👇
Video credit: @BBCNews https://t.co/ZTVEwrJtnM
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) October 30, 2026
新しいオフセットポリシーではオフセットの内容と条件を契約化し、オフセットの履行を監視し、オフセットクレジットを導入し、もし達成できなければ違約金などのペナルティーを受けることになり、要するに多くの国で導入されている強制力が伴うオフセットポリシーを英国も導入したという意味で、オフセットを求めないという立場=DSIEPからの大転換だ。
結局のところオフセットクレジットを導入すると「契約額の幾らを実際にオフセットとして投資するのか」が変わってくるため、契約額に対するオフセットの固定比率はさほど重要ではなく、仮に契約額の50%しかオフセットを要求しなくてもオフセットクレジットの乗数の倍率を低く設定すればいいだけで、オーストラリアなど少なくない国では契約額に対する固定比率ではなく「調達に自国企業を参加させることを契約化するオフセットポリシー」を採用している。
出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Duncan C. Bevan
韓国もオフセットクレジットを導入しているものの「オフセットの要求額が欧州諸国に比べて低すぎる」と問題になっているが、このあたりは「契約額と同額のオフセットを義務付けた=海外製装備品調達への投資が全て国内に還流される」という政治的イメージの話なので実質的には大きな意味はなく、日本は長年「対米貿易黒字対策としてオフセットなしで米国製兵器を購入するという状況(あくまで管理人の予想)」が続いてたためオフセットポリシーが整備されておらず、武器取引のオフセット自体についてよく知らないかネガティブなイメージをもちがちだ。
米国製兵器に関しても日本がオフセットを要求しないだけで、他の同盟国は米国製兵器の購入にオフセットを要求しており、少なくとも日本が防衛装備の調達先を米国依存から分散化していくならオフセットポリシーの整備が必要になるはずで、こうした国への売り込みで日本企業に足りていない経験の1つは「オフセットクレジットを組み合わせて要求されたオフセット額を如何に有利な条件で履行するのか」という部分だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:UK Ministry of Defence