マンション耐震化「2億円超」 “倒壊の恐れ”でも高騰で改修できず

毎日新聞 2025/3/19 05:30(最終更新 3/19 05:30) 有料記事 2933文字
築40年超になる、老朽化したマンション(本文とは関係ありません)=東京都大田区で2023年7月20日午後2時32分、飯田憲撮影

 「地震で倒壊する危険があるのに、改修も建て替えもずっとできていない高層マンションがある」

 記者はそんな情報を耳にした。現場を訪ねてみると、多くのマンションの前に立ちはだかる課題が見えてきた。

 安心してマンションで暮らすには、どうすればいいのか。現場の実情と専門家のアドバイスを伝えます。21日まで連日午前5時半にアップ予定です。 ・突きつけた欠陥マンションの証拠 自ら調査した住人の執念 ・設備業者が「やらせ見積もり」告白 「まるで詐欺」 <関連記事>

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対策できないまま7年

 その分譲マンションは東京23区内、JR山手線のとある駅から徒歩圏内の大通り沿いにあった。

 壁面のタイルは浮き上がり、地盤沈下のため、建物と路面の間には隙間(すきま)ができている。

 耐震性の問題を指摘され、改修や建て替えを7年間も模索してきたが、実現していないという。

 「いろいろ試行錯誤したんですが、難しいですね……」

 管理組合の理事長を務める女性(50代)は、建物の詳しい場所を明らかにしないという条件で、取材に答えてくれた。耐震性の有無は、資産価値に大きく影響する。

診断は「倒壊、崩壊の危険性」

 このマンションが完成したのは1980年代初頭。いわゆる「旧耐震物件」だ。

 建築基準法では、住宅が一定の強さの地震に耐えられるよう、耐震性の基準が決められている。

 81年6月以降の「新耐震基準」では、震度6強や7にも耐えられる強度になっているが、それ以前の旧耐震基準では、震度5強程度の揺れを想定していた。

 災害時の輸送網を確保するため、国は2013年に法律を改正。主要道路沿いの古いマンションについて、耐震診断を義務化した。

 この物件も該当したので診断を受けると、震度6強から7の地震で「倒壊、崩壊する危険性が高い」という結果だった。

 住民はみんな「怖いね」と漏らした。しかし、理事長は「すぐに売却して引っ越すだけの経済力はなかった」と振り返る。

改修→タワマン化→建て替え→?

 7年ほど前に耐震改修を検討したが、管理会社が出した見積もりを見た理事長は驚いた。提示された金額は2億円近く。建物の完成から約40年がたち、改修には大規模な工事が必要になるという。

 それまでの細かい補修で修繕積立金は枯渇しており、行政…

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