ロシアがモルドバ選挙介入計画、大統領府直接の指揮で策定-内部文書
ロシアはモルドバの選挙に介入し、同国の欧州連合(EU)加盟路線を妨害する計画を策定していた。ブルームバーグが確認した文書で明らかになった。
この戦略は複数の柱から成り、ロシア大統領府が直接指揮し春にまとめられた。ロシア内部の計画が記された文書が示唆するところによると、目標は9月28日の総選挙で親EU派のサンドゥ大統領が基盤とする与党「行動と連帯(PAS)」の支持を切り崩し、最終的にはサンドゥ氏を権力から排除することだ。
戦争で荒廃するウクライナと、EUおよび北大西洋条約機構(NATO)の端に位置するルーマニアに挟まれた小国モルドバは、親EU派と親ロシア派がぶつかり合う舞台となってきた。28日の総選挙から1年足らず前に行われたモルドバのEU加盟路線の是非を問う国民投票では、僅差で加盟路線が支持され、ロシアの介入を指摘する声も上がった。
今回の文書によると、ロシアを含む国外在住のモルドバ人を雇い入れてEUなどの投票所で投票させる、大勢の人々を動員して破壊的なデモを引き起こさせる、ソーシャルメディアで偽情報を広範囲に拡散する、などの戦術をロシアは計画。さらに、不名誉になるような情報を活用してモルドバの公務員に圧力をかけ、選挙を妨害する計画も中核的な分野として盛り込まれている。
28日に投開票を迎えるモルドバの選挙で、ロシアがこれらの計画を実行に移しているか、ブルームバーグは確認できなかった。だが、この件に詳しい欧州政府当局者2人は、大半を実行する意図があったことは「ほぼ間違いない」と語った。
一方、モルドバ警察は偽情報キャンペーンや買収の試みに対し取り締まりを強めている。先月だけで、同国当局は短編動画アプリ「TikTok」の443のチャンネル閉鎖を公に要請した。
ロシア大統領府はコメントの要請に応じなかった。同国は外国の選挙には干渉しないと繰り返し主張している。
旧ソ連構成国のモルドバは240万人の人口のうちロシア語を母語とする少数派がかなりの割合に上り、ドニエストル川以東の地域は実質的にロシアの支配下にある。この地域の指導者はロシアの資金を不法に得ているとして、モルドバの裁判所は有罪判決を下している。
サンドゥ氏の政党、PASはEU加盟プロセスを開始し、その過程で切実に必要な資金へのアクセスを得ることを公約としている。だが、最近の世論調査ではPASが議会過半数を失い、不安な連立政権に陥る見通しが示唆されている。
原題:Revealed: Putin’s Secret Plan to Hack Moldova’s Pivotal Election(抜粋)
— 取材協力 Irina Vilcu