イスラエル国会、「テロ行為」認定されたパレスチナ人を死刑にする法案を可決
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イスラエル国会(クネセト)は30日、殺人を伴うテロ攻撃で有罪となったパレスチナ人を原則死刑とする法案を可決した。新法をめぐっては、差別的だとする声も上がっている。ヨーロッパの複数の国は、「民主主義の原理原則」を損なうおそれがあると警告した。
法案はこの日、最終採決となる3度目の投票で、62対48の賛成多数で可決された。ベンヤミン・ネタニヤフ首相も賛成票を投じた。
同法はイスラエルの軍事法廷において、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区のパレスチナ住民がイスラエル人を殺害する、「テロ行為」と見なされる攻撃を実行した罪で有罪となった場合、最大90日以内に絞首刑を執行するよう定めている。執行は最長180日まで延期が可能だという。
理論の上では、ユダヤ系イスラエル人も同法によって死刑となる可能性がある。しかし、攻撃の意図が「イスラエル国家の存在を否定すること」にある場合に限られるため、実際にはほぼあり得ない。
法案は、クネセトの極右勢力が強力に推進し、イタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相が主導した。同氏は採決後、ソーシャルメディアに「我々は歴史を作ったつ!!! 我々は約束した。我々は実行した」と投稿した。
ベン=グヴィル氏の政党「ユダヤの力」に所属するリモル・ソン=ハル=メレク氏は、パレスチナ人による銃撃事件で夫を殺され、自分は生き延びた。同氏は、犯人の1人が釈放後、ガザ地区の武装組織ハマスが主導した2023年10月7日の攻撃に参加した例を挙げて、この法律が必要だと主張した。
ソン=ハル=メレク氏は審議の中で、「私たちは何年もの間、残酷なテロの連鎖、投獄、無謀な取引による釈放、そしてこれら人間の怪物がユダヤ人を殺すために戻ってくるという状況に耐えてきた」と述べた。
一方、野党・民主党のヤイル・ゴラン党首はこの法案を批判し、国際的な制裁につながると懸念を示した。
ゴラン氏は、「テロリストへの極刑法は、ベン=グヴィルが『いいね』をもらうために作った不要な立法だ」と批判し、「イスラエルの安全保障に一切寄与しない」と指摘した。
採決の前には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアがこの法案に「深い懸念」を表明。「民主主義の原理原則について、イスラエルの姿勢を損なうおそれがある」と述べた。
ヨルダン川西岸を統治するパレスチナ自治政府は法案採択を非難し、「立法の名を借りた超法規的殺害の正当化を目指している」と述べた。
ハマスは31日夜の声明で、法案可決はイスラエルの刑務所にいるパレスチナ人収容者の「命を脅かす」ものだと述べ、国際社会に対し「我々の収容者を確実に保護してほしい」と求めた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはイスラエル当局に、この法律の撤廃を強く求めた。エリカ・ゲバラ=ロサス氏(調査・政策提言・政策・キャンペーン担当シニアディレクター)は、「イスラエルは、パレスチナ人を処刑するための白紙委任状を、公然と自分に与えた。その一方で、最も基本的な、公正な裁判を受ける保障をパレスチナ人から奪っている」と批判した。
イスラエルの公民権協会はすでに、この法律について最高裁判所に異議申し立てを行っている。
同協会は声明で、「この法律は違憲で、意図的に差別的で、特にヨルダン川西岸のパレスチナ人に対しては法的権限なしに制定されている」と述べた。
イスラエル最高裁は今後、この異議申し立てを審理するかどうかを検討することになる。
イスラエルがこれまでに死刑を執行したのは、建国以来2人のみ。その1人は、ナチス幹部でホロコースト遂行に大きく関与したアドルフ・アイヒマンだった。