特別区目指す自治体ゼロ…「必要ない」副首都の要件化に反対意見相次ぐ 全国アンケート

統治機構改革に関する産経新聞アンケートで、6政令指定都市と3府県の計9自治体が「副首都」を目指す意向であることが明らかになった。ただし、日本維新の会が法案骨子で要件とした特別区設置には反対意見が続出した。要件は理念や目的と不可分。副首都の目的を明確化し、客観性を担保できるかが焦点になりそうだ。

人口だけ「本質的でない」

「副首都構想という危機管理に関する議論と、大都市制度という地方自治のあり方の議論は切り離すべきだ」

名古屋市はアンケートで、特別区の要件化に反対する理由をこう記述した。名古屋市と同様に副首都を目指す意向を示した北九州市や福岡県はそれぞれ「必ずしも必要ではない」「バックアップ拠点の整備という観点からは直接的に関係ない」との意見だった。

大都市地域特別区設置法(大都市法)では、特別区を設置できる自治体を人口200万人以上の政令市か、「同一道府県内で総人口が200万人以上になる政令市と隣接市町村」と定める。

人口167万人余の福岡市はアンケートで「副首都に求められる要件によって適性を判断すべきであり、人口だけで判断するのは本質的ではない」と指摘した。

大阪市も「検討していない」

特別区の要件化に「賛成」と回答した大阪府は維新の吉村洋文代表が知事を務める。アンケートで「副首都機能を継続的かつ安定的に担うには、広域行政が一元化された広域自治体が必要」と説明。特別区設置が「最も制度的に安定性がある」とする。年明けに大阪市とともに、特別区設置を法案の要件に含めるよう政府に要望する構えだ。

副首都推進本部会議後、記者団の取材に応じた大阪府の吉村洋文知事(右)と大阪市の横山英幸市長=23日午後、大阪市北区

一方で、特別区設置を目指す意向が「ある」と答えた自治体はゼロ。大阪府は「大都市法に基づく協議会の設置などの手続きが必要で、その予定はない」とし、大阪市は「現在検討していない」と答えた。

政府関係機関移転に関する有識者懇談会に参加した牧原出・東京大先端科学技術研究センター教授は「副首都の議論ではどういう政府機関や機能を移転するかがポイントになるだろう」と指摘。維新が想定する二重行政解消については「副首都とは関係がなく、特別区である必要はない」との見方を示した。

特別市、県側で相次ぐ懸念

大都市制度の新たな選択肢をつくるべく、国民民主党は、政令市の権限を拡張し道府県から独立させる「特別自治市(特別市)」の法制化に向けた議論を進めている。

アンケートで特別市を目指す意向が「ある」と回答したのは仙台、千葉、横浜、川崎、名古屋、広島、岡山の7市。川崎市は「効率的かつ機動的な大都市経営を可能とする」と評価する。仙台市などは「圏域全体の活性化」を挙げた。

ただ特別市が法制化されたとしても、県側の同意が必要になるなど実現のハードルは高い。

実際、7市が存在する6県のうち宮城、神奈川、広島、岡山の4県は、特別市を目指す意向は「ない」と回答。神奈川県は「行政サービスが大幅に低下する」とし、岡山県は「広域犯罪への対応や県が担う財政調整機能などを巡って懸念がある」と記述した。

日本が目指すべき統治機構改革については「地域の実情に合わせた都市制度」を訴える自治体が多かった。(江森梓、木ノ下めぐみ)

「副首都」熊本県など9自治体が意欲 特別区要件「賛成」は維新系のみ

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