青梅市民が愛飲のワイン「ボッパルトの雫」、名称変更へ…税務署「地名入れたらダメ」
ドイツの姉妹都市から東京都青梅市に贈られたブドウで造られ、市民らに愛飲されてきたワイン「ボッパルトの 雫(しずく) 」が、地名を表示するための基準に違反していたことがわかり、名称を変更することになった。今年8月にも発売するワインから新たなラベルにするため、市は名称を公募している。(鈴木章功)
今年1月に販売した「ボッパルトの雫」。同名で店頭に並んだのはこの白ワインが最後となった=青梅市提供ブドウを贈ったのは独西部のボッパルト市で、ライン川に面し、広大なブドウ畑が広がる。青梅市と同様に観光や保養地として有名なことから、1965年に姉妹都市となった。ブドウは、79年に苗木が贈られた白ワイン用の「リースリング」品種で、市内の農家や障害者施設の畑で育てられている。
青梅市によると、収穫したリースリングは山梨県内の酒造会社で醸造し、99年に白ワイン「おうめワイン・ボッパルトの雫」の名称で、市が市内の酒販組合とともに販売を始めた。さわやかな酸味と、甘くてすっきりした後味が徐々に人気を呼び、今年1月発売の約1200本は完売したという。
2008年には赤ワイン用の黒ブドウの品種もボッパルト市から贈られ、18年からは赤も生産しており、昨年8月に発売した約860本は完売。「青梅の名物として市民に定着し、愛される」(市秘書広報課)ワインに成長した。
酒類業組合法に基づき、2015年に定められ、18年に施行されたワインのラベルの表示基準では、地名を記すには、その地域内に原料のブドウの収穫地と醸造場所(ワイナリー)がある必要がある。ブドウの原産地やワイナリーのある場所のブランドを守るためだ。
基準ができたことで、醸造地が市外にあるため「おうめワイン」をラベルから削除し、「ボッパルトの雫」だけの名称に改めて販売を続けてきた。
今年は姉妹都市提携60周年にあたり、市は記念ラベルの作成を企画し、公募を経てデザインを決定していた。ところが、市によると、今年1月、このラベルを山梨県内の税務署に示したところ、「ボッパルトという地名は入れることができない」と指摘されたという。
青梅市内の畑で収穫したブドウを酒造会社に運ぶための作業をする農業者(2019年撮影)=青梅市提供市秘書広報課の担当者は「毎年税務署にラベルを見せてきて、ずっと問題はなかったのに、なぜ今年になって突然ダメになったのか」と困惑する。
市の依頼でブドウを育ててきた農家の男性(83)も「友好のために使ってきた名称で、今になって変えるのは……」と寂しそうな様子だった。
表示基準に違反しているとの指摘を受け、市は、今夏のワイン販売を前に市民らから新名称を公募している。デザインが決まっていた記念ラベルは、新名称の決定後に改めて作り直すという。同課は「友好のシンボルとして、多くの市民に親しまれるような名前を待っている」としている。