ゲームエンジンはもうゲーム専用ではない トヨタやGoogleも活用、ゲーム技術が社会インフラ化する未来へ
ゲーム開発ではもはや必須とも言えるゲームエンジン。「Unity」や「Unreal Engine」などが高いシェアを誇っているが、近年のゲームエンジンは、もはやゲームのためだけのツールではなくなってきている。ゲームエンジンが社会インフラ化するような未来も、すぐそこまで来ているのかもしれない。 ■トヨタ関連企業が独自ゲームエンジン「Fluorite」を発表 たとえば今年2月に開催されたオープンソースソフトウェア開発者のカンファレンス「FOSDEM 2026」では、トヨタ自動車の関連企業であるToyota Connected North Americaが、独自の3Dゲームエンジン「Fluorite」を発表。コンソール(家庭用ゲーム機)級の3Dレンダリングを実現しており、自動車の車載システムなどに利用される。さらには各種ゲームコンソールなど、さまざまなプラットフォームに対応していく展望もあるという。 そもそも既存のゲームエンジンが別の分野で活用されるという事例は数多くあった。たとえば同じ自動車メーカーのソニー・ホンダモビリティは、次世代車AFEELAのコクピット開発に「Unreal Engine」を活用していた(現在は開発・販売の中止を発表している)。 また農業の分野では、Silicon Studioが株式会社クボタに提供した「製品検査向け機械学習用CG画像合成ツール」において、開発に「Unreal Engine 4」を利用していることが話題を呼んだ。 さらに『スター・ウォーズ』シリーズの実写ドラマ『マンダロリアン』では、「Unreal Engine」のリアルタイムレンダリングを使って撮影を行うバーチャルプロダクションという手法が用いられていた。そのほかにも外科医のトレーニングや手術シミュレーションでのゲームエンジン活用など、さまざまな分野に浸透しつつある。 こうした事例が示しているのは、「もはやゲームエンジンはゲーム専用ツールではない」という現状だ。トヨタ自動車の関連企業が内製でゲームエンジンを生み出したというニュースは、まさに時代の流れを象徴しているのではないだろうか。 ■ゲームエンジンが「デジタル空間のオールインワンツール」になった経緯 そもそもゲームエンジンといえば、ゲーム製作を効率化させるために、個々のゲーム開発会社が独自に作っていたものだった。しかしその後、ライセンス契約で誰でも使えるゲームエンジンが普及すると、より一層多機能化していくことに。今ではデジタル空間を作るためのオールインワンツールとなっている。 こうしてゲームエンジンはリアルタイムで3D映像を作るための汎用基盤として、ゲーム以外のさまざまな産業で必要とされるようになった。 ■Googleの「Project Genie」が示すゲーム技術の次のフロンティア なおゲームエンジンのほかにも、今後多くの企業が活用しそうなゲーム開発の技術は色々と挙げられる。たとえば今年Googleが実験的AIプロトタイプとして試験提供を開始した「Project Genie」。これは“生成世界AI”などとも呼ばれており、テキストや画像からAIがリアルタイムで3DCGの世界を生成するというもの。しかもそれだけでなく、生成された仮想空間をユーザーが探索することもできる。 いわば3Dゲームをイチから作り上げる画期的なツールなので、実用化されればゲーム開発の分野で重宝されるはず。しかしそれ以上に、さまざまな産業分野での応用可能性に注目が集まりそうだ。 テクノロジーの進歩と共に発展してきたゲーム業界だが、今後はゲームの技術こそが社会を引っ張っていくことになるのかもしれない。
キットゥン希美