兵庫県知事選から半年、相次ぐ告訴や告発に被害届…捜査の焦点は?
兵庫県の斎藤元彦知事が再選された昨秋の知事選を巡り、県警や神戸地検には、公選法違反や選挙運動に絡む違法行為があったとする告訴や告発、被害届の提出が相次いだ。知事選の投開票から今月17日で半年。告発文書問題に端を発する県政の混乱がいまだに収まらない中、慎重な捜査が続いている。
【斎藤氏】PR会社に報酬、運動対価?
県警や地検が受理した事案は少なくとも10件ある。その一つが、知事選で斎藤知事が違法な報酬を支払ったのではないかという公選法違反(買収)の容疑だ。
PR会社の社長が選挙後、インターネット上に「広報全般を任された」と投稿。公式の交流サイト(SNS)を監修者として運用したと記していた。
このPR会社には斎藤陣営から71万5千円が支払われている。公選法は選挙運動に報酬を支払うことを原則禁じているが、総務省のガイドラインに照らすと、SNS運用を主体的に企画立案するのは選挙運動とみなされる可能性がある。
捜査では、社長の行為が選挙運動に当たるか▽斎藤陣営から支払われた金銭が業務の対価ではなく、選挙運動の報酬に当たるか-が焦点となる。
告発した検事出身の弁護士と大学教授は、PR会社に支払われた金銭が「ネット広報活動の対価なのは明らか」と指摘。対する知事側は、ポスターデザインや公約スライド制作など業務に対する適法な対価であり、SNS動画の撮影などは「個人のボランティア。報酬は支払っていない」と違法性を否定している。
県警と地検は2月、社長の関係先を家宅捜索し、スマートフォンなどを押収。社長の関わり方や金銭の趣旨を調べている。
【立花氏】県議批判、情報信じた根拠は
知事選では政治団体「NHKから国民を守る党」(NHK党に名称変更を発表)党首の立花孝志氏も立候補し、街頭演説やX(旧ツイッター)、ユーチューブで主張を展開。斎藤氏への投票を呼びかけつつ、県議会の調査特別委員会(百条委員会)の委員長を務めた奥谷謙一県議を批判した。
立花氏は元西播磨県民局長の死亡原因について、奥谷氏が隠蔽(いんぺい)したとXに投稿。また奥谷氏の事務所兼自宅前で「出て来いよ」「これ以上脅して奥谷が自死しても困る」とマイクで話し、さらにインターホンを押したとされる。
奥谷氏は名誉毀損(きそん)容疑で立花氏を告訴。脅迫と威力業務妨害の疑いで被害届も出している。
政治家に対する名誉毀損事件では、内容が真実であるか、真実と信じるに足りる相当な理由がある場合は罪に問われない。立花氏がどんな情報を根拠としたのかが立件のポイントになるとみられる。
県警は昨年12月以降、立花氏から任意で事情を聞き、構成要件を満たすかなどについて調べている。
【投稿者】デマ拡散、「虚偽」の認識必要
一方、知事選で落選した稲村和美氏の後援会は、Xの規約違反という虚偽通報が一斉に行われてアカウントが凍結された▽外国人参政権の推進や尼崎市長時代の退職金増額というデマを流された-と主張。偽計業務妨害や公選法違反(虚偽事項公表など)に当たるとして、告訴・告発している。捜査関係者は、デマ投稿の立件には「当選させない目的で、うそと分かって発信した、という裏付けが必要」とする。
今夏には参院選が予定されており、立候補を表明している関係者もいる。事案によっては、捜査終結のタイミングに影響する可能性がある。