3DO復活計画、1週間でスピード終了 権利をほぼ持たないまま見切り発車
先週、1990年代に歴史の闇へ消えていったゲーム機「3DO」を復活させる計画を、英ゲームパブリッシャーEmpire Interactiveが発表しました。しかし、それから約1週間後、この計画は突然終了したとして、ハードウェアの再構築とゲームのリマスター作業を打ち切ると明らかにしました。
その理由について同社は、「ゲームおよびゲーム機本体の双方について、所有権を主張する複数の当事者が現れたため」と説明しています。また、「長期化する法的紛争」のリスクを負いたくなかったとも述べており、そのコストは3DO復活によって得られる可能性のある利益を大きく上回る公算が高かったとしています。
もっとも、ゲームメディアTime Extensionの調査によると、実情はさらに複雑だったようです。そもそもEmpire InteractiveのオーナーであるIşık Şekercigil氏が保有しているのは「The 3DO Company」という会社名の商標が中心であり、それ以外の権利は複数の企業に分散しているとみられています。
たとえばThrowback Entertainmentは同社の主張に異議を唱え、「3DO」の商標や関連デザイン、さらに「3DO.com」ドメインの権利は自社が保有しており、売却や譲渡、ライセンス供与は行っておらず、今後もその予定はないと述べています。
さらにŞekercigil氏自身も、3DOゲーム機の製造については「パナソニックやゴールドスター(現LGエレクトロニクス)など少なくとも4社が関わっていた」と認めています。
そもそも3DOはゲーム機そのものではなく「規格」であり、複数メーカーがライセンスを受けて独自の3DO本体を販売するビジネスモデルだったため、複数の企業が何らかの権利を持っていたのは当然です。
そのうえ、当時から現在までに権利がどう移転しているかも分かりづらく、ハード製造や発売を強行すれば、法的な地雷原に踏み込むのも同然でしょう。
要するにEmpire Interactiveは、「3DO」の権利の一部しか取得しておらず、肝心なゲーム機ブランドやゲームIPの主要部分は保有していない、ほぼ手ぶらの状態で復活を宣言したことになります。わずか1週間で計画を撤回したのも、自然な成り行きだったように思われます。
もっとも、3DOは初代PlayStationやセガサターンの登場によって、あっという間に市場から姿を消したプラットフォームです。仮にハードウェアが復活したとしても、強い思い入れを持つユーザーは決して多くなく、我先にと買い求めるような状況も考えにくいため、始まる前に終わったことが結果的には幸せだったのかもしれません。
京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、マグミクスで記事を執筆中。