プーチン氏、友好国集め戦後80年式典 トランプ氏「親ロシア」修正

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ロシアは9日、首都モスクワで対ドイツ戦勝記念日を祝う式典を開催する。ウクライナ侵略が長期化するなか、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席ら20カ国以上の外国首脳を招き、結束を誇示する狙いだ。

米国のトランプ政権がウクライナを支援する姿勢をみせるなど、ロシアにとって「誤算」も生じるなかでの式典開催となる。

ロシアは2025年で戦勝80年となる記念日に合わせてBRICS加盟国や旧ソ連諸国の首脳をモスクワに招いた。

プーチン大統領は8日、習氏と首脳会談を開き「直接対話ができる機会に感謝する」と謝意を示した。式典に前後して15人以上の首脳と個別に会談し、協力関係の強化を狙う。

ベトナムやコンゴ共和国など22年3月の国連総会でウクライナ侵略に対するロシア非難決議で棄権票を投じた国の首脳参加も目立つ。

旧ソ連諸国は同盟国ベラルーシのルカシェンコ大統領や中央アジア諸国の首脳が参加する。結束を示し「ロシア離れ」を防ぐ狙いもあるとみられる。

7日になってアゼルバイジャンのアリエフ大統領が国内行事への出席を理由に急きょ欠席することが明らかになった。24年12月の旅客機墜落事故でアゼルバイジャンとロシアの関係は悪化していた。

9日に開催する軍事パレードにはロシア軍のほか、旧ソ連諸国や中国、ベトナムなど13カ国の外国軍の部隊が参加する。

会場となる「赤の広場」などモスクワの中心部ではスマートフォンでのネット接続速度が低下したり、つながりにくくなっている。ウクライナのドローン(無人機)攻撃への対策とみられる。

地下鉄駅近くなどには警官が多数配置され、安全確保のために厳戒態勢が敷かれている。

プーチン氏は22年2月から丸3年を超えるウクライナ侵略の成果を国内外に訴え、自国の侵略の正当性を主張するものとみられる。

戦勝記念日を控えた4月26日、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長はウクライナ軍が24年8月から越境攻撃を続けていたロシア西部クルスク州を完全に奪還したとプーチン氏に報告した。

25年に参加する外国首脳の数は戦勝70年にあたる15年を上回る見通し。だが式典・パレードに参加する外国首脳はBRICS諸国など制裁に加わらない親ロ的な国に限られる。米国や日本などの首脳は参加していない。

ウクライナをめぐって米国が仲介する停戦交渉については、米国は従来の「ロシア寄り」の姿勢を修正しつつある。

米国とウクライナは4月30日、同国のエネルギーや鉱物資源を共同開発することを柱とする経済協定に署名した。

ウクライナが強く求める「安全の保証」は確約しない一方で、米国はウクライナの安全保障や復興、世界経済の枠組みへの統合を支援することを確認した。ウクライナは米国との経済協力を軍事支援の継続につなげる狙いだ。

ロシアと米国の停戦をめぐる交渉に影響を及ぼすとの見方がロシアの外交専門家からも出ている。「米国とウクライナの合意でロシアは交渉を通じた目的の達成が難しくなる。譲歩か戦争継続か、より厳しい分かれ道となる」(ロシアの政治学者)

トランプ米大統領は停戦交渉に時間稼ぎを続けるロシアにしびれを切らし、圧力を強める考えも示している。

同氏は4月、自身のSNSでロシア軍によるウクライナの首都キーウ空爆などを念頭に「プーチン(ロシア大統領)は戦争を止めたくないのかもしれない」と批判し、ロシアと取引する第三国を制裁対象にする「2次制裁」に踏み切る可能性にも触れた。

ベッセント米財務長官は5月7日、連邦議会下院の公聴会でプーチン氏は「戦争犯罪人」との認識を示し、ロシアに対する姿勢の変化を伺わせた。バンス米副大統領も同日、協議でのロシアの態度を「要求が過大だ」と指摘した。

ロシアのペスコフ大統領報道官はプーチン氏と米国のウィットコフ中東担当特使が4月にモスクワで会談した際、プーチン氏が「ロシアは前提条件なしにウクライナと交渉を再開する用意がある」と伝えたと述べた。

いらだつ米国に歩み寄る姿勢をにじませたものの、ウクライナとの溝は大きく直接交渉の動きは鈍い。

ロシアは戦時下で軍需がけん引し経済成長が続く。だが人手不足や制裁によるインフレで政策金利が上昇、製造業などへの重荷が膨らみロシア経済の成長率は25年に急減速が見込まれている。

国際通貨基金(IMF)によると、同年のロシアの国内総生産(GDP)は1.5%増となる見通し。24年の4.1%増(速報値)から成長率は大幅に下がる。米国が追加制裁を打ち出せばロシア経済の減速に拍車がかかる可能性がある。

対ドイツ戦勝記念日ロシアの前身であるソ連が第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う、ロシアでは最も重要な祝日の1つ。毎年5月9日で、首都モスクワのほか北西部サンクトペテルブルクなど各地で軍事パレードなどが開催される。戦勝記念日は1965年、戦勝20年に合わせて制定された。ソ連崩壊後は95年から軍事パレードが開催され、プーチン政権が発足した2000年以降は国民の結束を強める行事としての色彩が強まっている。タス通信によると、11年には過去最大となる2万人規模の軍人が参加した。戦勝記念日の式典は60年の節目だった05年、50カ国規模の外国首脳が参加し、米仏独や日本の小泉純一郎首相(当時)ら西側諸国の首脳が出席した。

ロシアがウクライナ侵略を開始した直後に開かれた22年は外国首脳の参加はゼロだった。24年は旧ソ連諸国など9カ国が参加した。

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