たった1人の握手会「私って必要なのかな…」 SKE48相川暖花が明かす「40分間の葛藤」と「転機」

アイドルとして「40分の葛藤」を明かした、SKE48でTeamSのリーダーを務める相川暖花さん(本人提供) この記事の写真をすべて見る

 ファンが訪れる「握手会」に参加者が1人だけ――。アイドルグループSKE48の相川暖花(ほのか)さん(21)が4月12日、そんな内容をXに投稿して話題になった。握手会とは何か、アイドルとは何か。キャリア11年目の本音を本人に聞いた。

【写真】誰もいないレーンにポツンと佇む相川さん。実際のツイートも

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先輩のプライド的には「恥ずかしい」

「後輩から『あの先輩、人気がないんだ』って思われちゃうことは、先輩のプライド的には恥ずかしいですよ。握手会ってほかのメンバーのレーンも見えるので、人がはみ出すくらい並んでいるほかのメンバーとどうしても比べてしまって……」

 こう話すのは、アイドルグループSKE48でTeamSのリーダーを務める、相川暖花さんだ。

 相川さんは4月12日、「本日の握手会、ヲタク約1名」とXに投稿。握手会の相川さんのレーンで、男性がたった1人、満面の笑みで手を振っている写真をアップした。

「ヲタクの鏡」「めちゃくちゃ良い笑顔で手振ってる」と話題になり、24 日現在、34万いいねが付いている。

 この日の握手会は、千葉市の幕張メッセで行われた。名古屋市・栄を本拠地とするSKE48にとっては、いわばアウェー。それでも、心中は複雑だった。

劣等感や悩みがぐるぐる

「劣等感を感じましたし、『私って必要なのかな』とか、『どうやったら人気が出るかな』とか、『どうやったらファンの方に喜んでもらえるかな』とか、『遠征費や宿泊費がかかっている握手会なのに運営は大丈夫かな』とか、いろいろなことをぐるぐる考えてしまいました」

 SKE48の「握手会」は、CDを購入して「チケット」を得たファンとメンバーが交流するイベントだ。「会いに行けるアイドル」としての原点でもある。メンバーにもいくつかの決まりごとがある。

 たとえどれだけ来場者が少なかったとしても、握手会の受付時間である40分間(各部)はその場に立って、ファンを待っていなければならない。

「握手会は『自分の気持ち』との闘いでもあるんです。ひとりただ立って待っている時間が長いと、いろいろ考えてしまって……」

 相川さんがしみじみ語るのは、ファンの「あたたかさ」だ。


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ファンの予定を思いながらも寂しい気持ちもある…4月13日、誰もいなくなったレーンに佇む相川さん(本人提供)

「気持ち的にしんどいところはもちろんあるけれど、寂しい気持ちが大きかったわけではないんです。私のことをすごく愛してくださるファンの方が来てくれていて、私が寂しくないように時間内に何回も会いに来てくださって、私が立っている40分は私が寂しくないように、その場にいてくださって同じ時間を過ごしてくださる。それはとても幸せなことだなと思いました」

 翌13日は、「本日の握手会、ヲタク約10名! 沢山いて嬉しい!!!」として、前日の男性のほか、約10人が握手会のレーンに集まり、手を振っている写真をポストした。

「Xを見て来てくださった方もいましたし、私がTeamSのリーダーになったので、『うちの子をよろしくお願いします』とほかのメンバーのファンの方も来てくださいました」

 そして、こうも言う。

「皆さん仕事とか学校とか大事な予定があるなかで、お金と時間をかけて会いに来てくれている。都合が悪くて来られなかった方もたくさんいると思うから、私の投稿で複雑な思いになった人もいると思う。本当に一人一人が大切で、力をいただいていることを伝えたい」

自身の原点も「握手会」

 実は相川さん自身がアイドルになるきっかけも、「握手会」だった。

「小さいころからAKB48が好きで、家でコンサートのDVDを見ては、ほうきをスタンドマイクにして歌って踊っていました。初めて握手会に参加したとき、メンバーとたった数秒、話しただけなのに、そこから3カ月はなんでも頑張れたし、元気でいられた。『アイドルってすごいな』『こんなに力をくれるんだな』『私もそんな人になりたい』と思ったことがきっかけでした」

 2015年、11歳でSKE48に加入した。アイドルとして自分が握手する立場になって、改めて思う。

「CD1枚で数秒間、そのわずかな時間のために会いに来てくださる方がいる。それはありがたいことですし、私自身、直接会って少しでもファンの方に恩返しできたらと思っています」

「危機感」を「伸びしろ」に

 SKE48に加入して11年目。グループ60人のうち、先輩は4人だけで、21歳にしてベテランだ。

 どこかで「危機的状況」を感じている自分もいる。SKE48の立つステージは以前より小さくなってきたと思うし、「推し活」が多くの人に広がり、活動するグループも増えたと思う。

 時代の移り変わりもある。SNSでの相互交流が盛んになり、数少ないコミュニケーションの場だった「握手会」に来る人も少し減ったように思う。

「落ち込んではいません。むしろ、今の状況は伸びしろだと思っているんです」

 状況を「ポジティブ」に受け止める。内面的に転機が訪れたのは昨年だった。


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握手会
2025/04/25/ 11:00

「実は、去年ぐらいまでSNSは苦手だったんです。たまによくないコメントを見ることもあったので」

 だが、徐々にSNSが楽しくなった。そのきっかけの一つに、前出の、たった1人来てくれた、あのファンの男性の書き込みがあったという。

「『今日も暑いけど頑張ろうね』『(公演終わりに)お疲れ様。ここがよかったよ』と毎日コメントをくださる」

 そんな声が実はたくさんあることに気づいた。すると、悪い言葉を怖がらずに、SNS上のさまざまな声も見ることができるようになった。視野が広がったできごとだった。

今は屈伸の「く」の字

「家族じゃないのに自分のことを好きでいてくれて、活躍を喜んでくれて、うれしいことを同じようにうれしいって思ってくれる人がいる。こんなにも見てくれている人たちがいるんだと気づいて、応援してもらう幸せを一層感じるようになりました」

 たくさんのファンを獲得し、大きなステージに立つことは「悲願」だ。

 経験を積んできた自負があるという。

「歌はそこそこですけど、ダンスは自信あるし、自分で言うのもなんですけど、SKE48の中で屈指のトーク力があると思っています(笑)。今は屈伸の『く』の字で、しゃがんでいるとき。自分を応援してくれたら、すごく楽しいんじゃないかなって。今が『推し時』だと思うんです」

(編集部・井上有紀子)

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