【大河ドラマ べらぼう】てい役・橋本愛さんインタビュー「蔦重さんは人生をまるごと肯定してくれた」「『書をもって世を耕す』に心から共感」「爆発力ある横浜さんのお芝居に感激」

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で主人公の妻てい役を演じる橋本愛さんにインタビューしました。第23回の登場以来、凛とした姿や時折見せるチャーミングな表情で視聴者を魅了し続けているおていさん。出家しようとしたとき、蔦重(横浜流星さん)から想いを伝えられたシーンでは多くのファンが感動しました。感情をあまり顔に出さないていは、蔦重にどんな気持ちを抱いているのでしょう? 橋本さんにお伺いしました。

人生をまるごと肯定

――まず、いつ頃からていは蔦重に惹かれはじめたのでしょうか?

橋本さん:浅間山の噴火で降り積もった灰を片付けるシーンです。「遊びじゃねぇから、遊びにすんじゃねぇですか」という蔦重さんの言葉に度肝を抜かれました。ていさんはまじめで遊びの余白がない人だったと思いますが、彼は遊びによって日本橋のみなさんを笑顔にしたのです。豊かな発想力と行動力がある蔦重さんにはかなわない、と思ったのが最初の感情でした。そこから尊敬の気持ちが芽生え、人として好きになっていったと思います。

――第26回で、蔦重から出家を止められ想いを伝えられたシーンは感動的でした。あのとき、ていはどんな気持ちだったのでしょうか?

橋本さん:蔦重さんの言葉すべてがうれしかったです。まず、「俺はおていさんのことつまんねえって思ったことねえですぜ」というセリフ。ていさんは、「自分はつまらない人間」とレッテルを貼って生きてきたと思います。そのうえ理解者だった父親を亡くし、心の拠り所を失っていたとき、コンプレックスだと感じていた部分を才能だと認めてもらえたのです。自分の人生をまるごと肯定する言葉を投げかけてもらえて、最高に幸せでした。

――ていは、自分が蔦重の妻としてふさわしくないと思って出家しようとしたのですよね?

橋本さん:蔦重さんに惹かれれば惹かれるほど、自分がまた店を傾かせてこの人を不幸にしたらどうしようと不安になったのだと思います。だから、「この人ならこの先、山があって谷があっても一緒に歩いてくれんじゃねえか。いや、一緒に歩きてえ」と言われたときは感激しました。これ以上ないプロポーズの言葉です。この先何が起きても怯えず、蔦重さんとともに生きていこうと覚悟を決めることができました。

――「俺が俺のためだけに目利きした、俺のたった一人の女房」という口説き文句はいかがでしたか?

橋本さん:あの言葉は、「本当かな」と(笑)。本来なら泣いて喜ぶセリフですが、元夫に裏切られた過去がトラウマになっているのです。蔦重さんの人柄を見ていると嘘ではないとわかるのですが、人間には考え方のクセがあるので、ていさんにも少しだけ不安が残っていたと感じています。

――お寺のシーンでも、ていは泣きませんでした。

橋本さん:心の中では最高にうれしかったのですが、ていさんには涙を見せない強さもあるのかなと思っています。

「書をもって世を耕す」に共感

――ていは感情をあまり顔に出さない人ですが、ご自身とギャップを感じる部分はありますか?

橋本さん:私はいつも大笑いしているタイプなので、笑わないので過ごすのは難しいです。また、私自身も真面目ではありますが、ていさんのような堅さはないので、ギャップはいつも感じていますが、だからこそ自分のクリエイティブが試され、おもしろいです。ていさんならどう行動するかな、と発想する時間が楽しいです。

――逆に、ていに共感できる部分はありますか?

橋本さん:和尚さんとの会話で、ていさんが「本で子供たちの人生を豊かに」という趣旨の話をしましたが、この考え方に深く共感できます。私も本が大好きですし、ドラマや映画などで人生を豊かにしてもらった恩があります。また、自分もエンターテインメントをつくる側の人間として、作品が誰かの人生を豊かにしていると信じています。だから、いつも恩返しのつもりで作品づくりに取り組んでいます。本やドラマ、映画は社会を変える力があると思うので、その力を雑に扱ってはいけないと覚悟をもって演じています。蔦重さんの信念「書をもって世を耕す」にも、ていさんの本に対する想いにも、心から共感しています。

爆発力のある横浜さんのお芝居に感激

――横浜流星さんと共演されて、いかがですか?

橋本さん:体幹がしっかりされているのでお着物がとても似合っていて、武士みたいな迫力がある方だなと思いました。ていさんみたいに実直でまじめな印象ですが、お話してみるとフランクな方で、私もいつも助けられています。

――横浜さんとの演技で刺激を受けたシーンはありますか?

橋本さん:たくさんありますが、一番刺激を受けたのは26回のお寺でのシーンです。また、祝言のシーンも印象に残っています。あの日は朝から晩まで収録があり、終盤で一番大事な「いただいた暖簾、決して汚さねえようにします」というシーンを撮ったのです。長い収録で疲れていたと思うのですが、そこで横浜さんはすごく爆発力のあるお芝居をされたので、本当に感激しました。

――第28回の「お口巾着」シーンも反響がありました。

橋本さん:シリアスな場面だったので、本当に演じられるのかなと思いました(笑)。でも、ていさんだからこそ出せるおもしろさは意識しています。少しずつ蔦重さんのユーモアがうつり、今後ていさんにも茶目っ気が出てくると思います。

――第30回では、歌麿が家を出ることになりました。ていにとって、歌麿はどんな存在ですか?

橋本さん:蔦重さんの大切な家族なので、ていさんにとっても大事な存在で、絵師としての才能も尊敬しています。ていさんは恋愛経験が少ないと思うので、歌麿さんの蔦重さんへの気持ちには気づいていないつもりで演じています。また、気づいていないから、遠慮なく蔦重さんへの想いを深めていけるのだと思います。

今後はもっと幹が太くなります

――森下さんの脚本については、どんな部分に魅力を感じられていますか?

橋本さん:女性の描き方がすごく好きです。主人公を支える役回りであっても、私はその人物の能動的な生き方をお芝居に反映できるよう常に意識しています。このドラマでも、今後ていさんは一人の女性としてもっと幹が太くなり、蔦重さんと対等な関係性になっていきます。そんな風に女性を描いてくださるのがうれしく、これから演じるのもすごく楽しみです。

――今回は四度目の大河ドラマご出演ですが、どんなことが勉強になりますか?

橋本さん:歴史については常に勉強になっていますし、所作を学ぶのも楽しいです。これまで所作の先生にいろいろ教えていただきましたが、ついに今回からクランクイン前の所作指導は不要といわれました!(笑)。成長できたようで、うれしいです。また、決まったわけではないのですが、初めて大河ドラマの最終回まで参加する可能性もありそうで、楽しみにしています。もし最後まで立ち会えたら、まさに大きくて長い河を流れてきたような感慨に襲われる予感がしますし、そんな体験は今後の俳優人生にも生かされると思っています。

――主人公の妻は今回で三度目でしたので、次は主演で出られるのを楽しみにしています。

橋本さん:主人公になれたらいいですね(笑)。

橋本愛(はしもと・あい)さん 1996年、熊本県出身。主な出演作品に、ドラマ『同期のサクラ』『35歳の少女』連続テレビ小説『あまちゃん』、映画『リトル・フォレスト』『私をくいとめて』『早乙女カナコの場合は』など多数。大河ドラマは『西郷どん』『いだてん〜東京オリムピック噺〜』『青天を衝け』に出演。 (ライター・田代わこ) <あわせて読みたい>

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