AppleがiPhoneやiPadの耐久性テストを実施する研究所の詳細が明らかに

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AppleはWWDC25において、調査会社のCounterpointを含む一部の参加者に、耐久性の高い製品を開発するための「耐久性テスト」の一部を公開しました。Counterpointによると、Appleがハードウェアの厳格なテストを行うために運営している200か所の研究所のうちのひとつを訪問したとのことです。

The Unseen Grind: A Visit to Apple’s Durability Lab

https://www.counterpointresearch.com/insight/the-unseen-grind-a-visit-to-apples-durability-lab/

AppleはiPhoneなどの自社製品の耐久性をテストするべく多大な努力を払っており、その結果、iPhoneのリファービッシュ品は市場においてAndroidスマートフォンよりも40%も高い価値を維持しているとCounterpointは指摘しています。また、AppleはAndroidよりもソフトウェアおよびセキュリティアップデートを長く配信していることで知られています。これらにより、Appleデバイスは中古品やリファービッシュ品でも高い人気を維持できるようになっているとCounterpointは指摘。

実際、iPhoneは世界のリファービッシュスマートフォン市場で56%以上のシェアを占めているそうです。また、Mac、iPad、Apple Watch、AirPodsといった他のApple製品も同様にリファービッシュ市場で高いパフォーマンスを示しているとCounterpointは指摘しました。

そんなリファービッシュ市場で高い人気を誇るApple製品を支える耐久性テスト研究所を訪問したCounterpointが、その詳細を明らかにしています。

◆環境試験

Appleは世界中で最悪の環境シナリオを自社の研究所とデバイスで作り出しています。Apple製品は175か国以上で販売されており、幅広い環境で使用されているため、Appleの環境試験では湿度と温度の高い環境を想定し、Apple製品を何時間もそれらの環境にさらします。Counterpointによると、Appleの環境試験では100時間にもおよぶ塩分ばく露(ばくろ)テスト、高強度の光へのばく露テスト、アリゾナ砂漠の塵へのばく露テストなどが実施されている模様。これは、微細な砂粒がiPhoneのスピーカーや充電ポートに入った場合に何が起こるかを分析するためのものだそうです。AirPodsの場合、人工の汗と耳垢にばく露するテストもあり、これらのテストはAppleがアクセスできるデバイスの使用状況データの一部を考慮し、さらに調整されています。これらは変化する環境に対応するためのAppleの複雑な取り組みを浮き彫りにするものであるとCounterpointは指摘しました。

◆液体/水テスト

Appleは自社製品向けのハードウェア保証としてAppleCareを提供しており、修理や診断中にデバイスがどのような状況に置かれてきたかを詳細に把握するために役立ちます。日常での使用において、液体や粉塵へのばく露など、デバイスが様々な状況に晒されることはよくあることです。IP等級のIPは「Ingress Protection(侵入保護)」の略で、最初の数字は防塵性能、2番目の数字は防水性能を表しています。Appleの耐久性テスト研究所のIPXチャンバーは、雨や水の状況をシミュレートし、様々な製品の耐水性を評価し、特定の防水レベルを満たしているかどうかを評価するそうです。

IPXチャンバーでは、雨や水の浸入をシミュレートする基本的な天井からの滴下テストから始まります。次に、製品の四隅に噴射された水圧をシミュレートする試験が行われ、このテストに合格すると、IPX5等級の防水性能を有していると認められるそうです。次に、高圧水を遠距離から噴射する試験が行われ、これに合格するとIPX6等級の防水性能を獲得。最後に、水深をシミュレートする加圧タンクで水深1~6メートルまでの浸水に耐えられるかをテストすることで、IPX7~8等級の防水性能が得られます。他にも、日焼け止め、香水、炭酸飲料、ジュースなど、様々な液体への浸水試験も行われます。

◆落下試験

Counterpointの消費者調査によると、「偶発的な落下」は携帯電話修理の理由の上位3つに含まれています。Appleの耐久性テスト研究所では、Apple製品が日常使用中に経験する可能性のある「様々な偶発的な落下」をシミュレートするそうです。Appleは現実のシナリオに近づけるため、様々な角度で、パーティクルボード、花崗岩、アスファルトボードなどにデバイスを落下させるロボットを利用しており、各落下はAppleのエンジニアがアクセスするアプリを通じて分析されるそうです。

◆振動試験 振動試験では様々な製品を異なる周波数で振動させることで、輸送中やその他の実環境(様々なメーカーのオートバイを含む)で製品が受ける可能性のある振動環境と衝撃を再現します。振動台には製品が長期間固定され、様々な周波数にさらされるそうです。

Appleの耐久性テスト研究所を見学したCounterpointは、「2つの点で心を打たれました。1つは、耐久性と修理容易性が設計上のジレンマにつながる可能性があるということです。耐久性を重視して設計された製品が必ずしも修理が容易であるとは限らず、その逆もまた然りです。しかし、耐久性の高いデバイスは、修理サイクルで使用される材料が少なく、より長期間使用される可能性が高いため、持続可能性にプラスの影響を与える可能性があります。理想的な世界では、修理容易性と耐久性の両方が循環型経済の中核を成すはずです。もうひとつ印象的だったのは、Appleが個々の製品から高度な機械やテスト方法に至るまで、あらゆる面で細部にまでこだわっていることです。発売前に少なくとも1万台のiPhoneを厳密にテストするという、その大規模なテストは、Appleの品質保証への取り組みの深さと広範さを物語っています」と指摘しました。

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