OpenAIとNVIDIAが険悪化。AIの金回りが悪くなって泥仕合

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蜜月の終わりは突然に。

昨年9月に大型提携を発表したAIの2大巨頭、OpenAIとNVIDIAが空中分解寸前です。

計画では「NVIDIAがOpenAI用に10GWのデータセンターを作って10回の分割で1000億ドル投資する見返りに、OpenAIがその投資を使ってNVIDIAのチップをリースする」予定でしたが、それがサッパリ進んでいないようなのです。

発表された当初からこの大型ディールに関しては、AI業界内部からも「どこから見たって循環型取引」だという懸念の声が出ていました。相互依存でお金が回ってるうちはいいけど、ひとつでも歯車が狂ったらドミノ倒しで経済総崩れ。そういう危うさを内包しているところが、ネットバブル崩壊前の状況と酷似してるというんですね。

こうした一般の反応を考慮したのか、11月にNVIDIAが米証券取引委員会(SEC)に提出した資料には具体的なことは一切書かれていなくて、「投資機会の意向書」という位置付けに後退していました。

Wall Street Journalによると、その後もまったく進展はなくて、最近ではNVIDIAのジェンスン・フアンCEO自らが「OpenAIのビジネスアプローチには節度というものがない」と陰でブツクサ言ってて、ここ数カ月、取引先には内々に「あの1000億ドルの話は契約履行義務ないし契約締結済みでもない」と力説して回ってるらしいのです。

さすがにこの記事内容はまずいと思ったのか、台北で開かれた記者会見ではOpenAIをべた褒め。今年予定されるOpenAIのIPOに向けた最新の資金調達にも「絶対関わる」「おそらく弊社の創業以来最大の投資になる」とフォローしていました。まあ、「金額は1000億ドルですか?」という質問には「いやいや、そこまでじゃない」と答えていたので、どこまでの用意があるかは不明ですが。

OpenAIも不満爆発

以上のフォローで、投資家の不安が収まればまだよかったのですが、数日置いてReutersが報じた匿名筋の話で、OpenAI側もNVIDIA製チップの推論パフォーマンスに不満を抱えていたことが判明。ChatGPTの一部の推論リクエストに適応できないことから、10%の推論処理を肩代わりできるチップを提供できるメーカー(Cerebras、Groqなど)を物色中なことや、OpenAIのAIコード作成アシスタント「Codex」が力不足なのを、NVIDIAのハードのせいにしていることなどが明らかになりました。

これで慌てたのはOpenAI側です。 役員総出でNVIDIAを褒めちぎり、サム・アルトマンCEO自らがX上で「NVIDIAのAIチップは世界一」と全力フォロー。

インフラ最高責任者のSachin Katti氏も、「トレーニングと推論の両面でもっとも重要なパートナー」だと書いてますが、その一方で

推論と高すぎるメモリ要件が、最近NVIDIAの肩に重くのしかかっているのもまた事実。AIモデルの成熟につれ、トレーニングより推論の重要性が増しており、さらにエージェント型AIのブームも推論段階にAIが手がけるデータ量を増大させていて、メモリの重要性は増すばかりだ。

と現在置かれた状況を述べています。

NVIDIAがGroq(イーロンのGrokじゃないよ)を買収したのにはこういう背景があったんですね。OpenAIが目をつけたスタートアップだった、というわけです(Groq買収額は約200億ドル:3兆円超。NVIDIA創業以来最大の金額)。次世代AIインフラ「Rubin」発表のプレゼンでやたらと推論やメモリ帯域幅をPRしていたのも、これで納得ですね…。

Googleの追い上げが焦りを加速している

NVIDIAとOpenAIの不安に拍車をかけているのが、競争の激化です。

特にGoogle(グーグル)の追い上げは目覚ましく、昨年終盤のGemini 3リリースで完全にChatGPTの後ろ髪を掴みました。OpenAIにとっては存亡の危機。目下コードレッド発令で対応に追われています。

Googleの存在はNVIDIAにとっても脅威です。Google独自のカスタムAIチップTensor」は推論処理用にデザインされたものなんですが、タスクの内容によってはGPUより処理性能は上だと言われていて、ここでNVIDIAの牙城であるGPUにがっぷり食い込んでくるんですね。

GoogleのTPUはAIモデルで使えるのみならず、OpenAIの競合のAnthropicMetaでも利用可能っぽいって話もあるし。GoogleとAnthropicがOpenAIのリードを脅かしていることに、フアンCEOは言いようのない不安を募らせていると報じられています。

もし仮に、OpenAIがトップ集団から脱落するようなことがあれば、OpenAIを最大顧客として抱えるNVIDIAの売上には大打撃です。ここはなんとかCodexへのテコ入れで、競合Anthropicの人気コード作成エージェント「Claude Code」を打破したいところかと。

投資家筋の不安が的中して、OpenAIとNVIDIAの大型提携が破談に終わった場合、OpenAIは他社との大型契約の支払い目途が立たなくなってしまいます。OpenAIがOracleと結んだ3000億ドルのクラウド契約なんて資金繰りどうなっちゃうんだろう…。

ひとつ滞れば、ふたつ、みっつと広がって、世界経済総崩れ。なんかリアルに想像できるんですけど。ソフトランディングなんてあるのかな…。

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