高性能のみを追求するマインドとの決別、韓国も自爆型無人機を戦力化
米中央軍は対イラン作戦中に投入したシャヘド型無人機の米国バージョン=LUCASについて「この作戦に欠かせない兵器だ」と公言していたが、韓国の国防部長官も26日「戦略的攻撃および敵防空網の無力化を目的とした韓国型長距離自爆無人機=K-LUCASの戦力化を迅速に推進する」と発表した。
参考:軍, 장거리 자폭무인기 전력화…저가·소모성 드론 2만대 확보 参考:Mach Industries Wins DIU Contract For Runway-Independent Navy Drones
軍事利用されるプロペラ推進の無人機について「低レベルな紛争向け」「正規軍同士の戦いには通用しない」「高度な防空システムの保護を突破することはできない」という評価が一般的だったが、有人機と比較してサイズの小さい無人機は低観測性に優れ、弾道ミサイルや巡航ミサイルよりも調達コストが安価なため量を揃えることができ、ウクライナとロシアは自爆型無人機を使用して互いの軍事施設やインフラを攻撃し合っている。
出典:ТЕЛЕКАНАЛ ЗВЕЗДА
特にイラン製自爆型無人機=Shahed-131/136の大量使用(もしくは他の攻撃手段との併用)は防空リソースに無視できない影響をもたらし「これを従来概念の防空アプローチでは対処できない」と証明され、米軍も産業界に「安価なShahed型無人機を開発して欲しい」と要請し、米軍と産業界は中東で鹵獲したShahed-136の設計や特徴を模倣してShahed型無人機=LUCASの開発を進め、ヘグセス国防長官は7月にSpektreWorksが開発したLUCASを視察していたが、米中央軍は2025年12月「中東地域に一方通行の攻撃ドローン部隊=Task Force Scorpion Strikeを配備した」と発表。
TFSSにはSpektreWorksが開発したLUCASが配備され、War Zoneの取材に応じた米軍関係者は「どれだけの数が配備されたかは言及したくない」「それでも相当なレベルの能力を提供できる数が配備された」「この無人機は自律的な協調が可能な機能が含まれているためスウォーム戦術や協調攻撃に適している」と、別の関係者は「LUCASの調達コストは1機あたり3.5万ドルだ」「この拡張可能なシステムは従来の長距離攻撃兵器と比べて極めて安価で最新の機能を提供できる」と言及。
出典:U.S. Central Command
さらに米中央軍は配備したLUCASの画像を複数公開し「LUCASの機体後部には小型の衛星データリンクが搭載されていること」「ジンバル式カメラを搭載したタイプとそうではないタイプが存在すること」が判明、これはLUCASが発射後のMan-in-the-Loop制御に対応していること、特にジンバル式カメラを搭載したタイプは目標付近の状況を視覚的に認識することができ、War Zoneも「ジンバル式カメラを搭載したタイプとそうではないタイプをペアで使用すれば視覚的な状況認識力を共有できる」「これによりLUCASは静止目標だけでなく移動目標への攻撃が可能になる」と指摘している。
要するにLUCASはウクライナやロシアが採用しているモバイルネットワークを利用した不安定なMan-in-the-Loop制御ではなく、衛星データリンクを使用した高品質なMan-in-the-Loop制御が可能で、LUCASの取得コストはShahed-136(2万ドル~5万ドル)よりも多少高価だが、それでも600万円未満で視界外の移動目標を攻撃できるのは、それを大量に調達できるのは魅力的で、米中央軍も「LUCASは対イラン作戦=エピック・フューリー作戦に欠かせない兵器だ」と述べるほどだ。
Last night, U.S. forces launched one-way attack drones into Iran during Operation Epic Fury. CENTCOM made history a month ago when it began using low-cost aerial attack drones in combat for the first time.
“Today, hundreds of U.S. drones are fully integrated into offensive and… pic.twitter.com/yxsAf8pTAH
— U.S. Central Command (@CENTCOM) April 7, 2026
バイデン政権下でLUCAS開発を推進したマイケル・ホロウィッツ元国防次官補代理もWar Zoneの取材に「精密誘導兵器の大量使用時代に突入していたのに、米国の兵器体系は依然として高性能で高価かつ製造が困難なものばかりで構成されていた」「そのためより低コストで消耗を前提とした自律的に稼働する代替システムの模索に関心が集まっていた」「私は低コスト兵器を高性能で高価な兵器を補完する存在として位置づけ、米国もこうしたローエンドの精密攻撃システムを大量に製造すべきだと考えた」と答えている。
米軍がローエンドの大量精密攻撃システムを導入するのに時間がかかった理由については「米軍は常に最高の能力を保持するという前提で構築され、我々のシステムは圧倒的に優れているから数が少なくても問題ないというマインドが主流だったからで、そのマインドを払拭して『2番目に優れた能力であっても実用的な価値がある』という考え方を受け入れてもらうのに時間がかかった」「LUCASはトマホーク400発の製造コストで4万6,000機も製造できるため米軍の弾薬備蓄を新しい次元に引き上げられる」「この能力こそが中東地域やインド太平洋地域の競争を勝ち抜くのに不可欠な要素だ」と指摘した。
出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Jonathan Sunderman/Released
LUCASを含むShahed型無人機は精密攻撃が可能でも「撃墜されやすい」という側面があり、ホロウィッツ氏もLUCASの運用方法について「防空網を飽和させる目的で軍事目標に大量に投入するか、あるいはより高性能な兵器と組み合わせて敵の防空網を欺き、高性能兵器の突入経路を切り開くために使用すべきだ」と述べ、欧州市場にはLUCASと同じコンセプトの自爆型無人機が次々登場し、英国、フランス、ドイツ、スペイン、トルコなどで正式採用に向けた動きが観測されている。
韓国の安圭伯国防部長官も26日、発表したドローン・対ドローン発展政策の中で「戦略的攻撃および敵防空網の無力化を目的とした韓国型長距離自爆無人機=K-Low-cost Uncrewed Combat Attack System(K-LUCAS)の戦力化を迅速に推進する」「近距離偵察ドローンや自爆型小型ドローンなど低コストで消耗可能なドローンを2万機以上迅速に確保し、AI技術を適用したスウォームドローンなど次世代のドローン戦力の確保も並行して進め未来の戦場に備える」と発表した。
出典:DoD photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
韓国メディアも「K-LUCASはイラン製シャヘドをリバースエンジニアリングし、対イラン作戦に投入された米国製のLUCASと似た概念だ」と報じており、一般的には「コスパのいい自爆型ドローンがあればトマホークは不要」という極論も多いが、ホロウィッツ元国防次官補代理も「LUCASのペイロードは小さいのでトマホークの代わりになれない」「あくまでLUCASはトマホークを補完する兵器だ」と指摘し、一般人が対戦車兵器やFPVドローンの活躍を見て戦車不要論を叫ぶのと同じで自爆型ドローンは従来の長距離攻撃兵器を補完する存在でしかない。
ごく一部の国にしか製造できなかった長射程の精密誘導兵器がデュアルユース技術と市場で入手可能な部品で製造できるようになり、精密誘導兵器(ここでいう精密誘導の精度はトマホークのようなm単位の精度ではない)の大量使用時代に突入したため、これに高価で製造に時間がかかる兵器で対応するのが不可能になったため「最高の兵器だけしかいらない」というマインドと決別しただけであり「最高の兵器が不要」となったわけではない。
防衛省・自衛隊は、我が国への侵攻部隊を早期・遠方で阻止・排除するためスタンド・オフ防衛能力を強化し、この能力を早期に構築するため島嶼防衛用高速滑空弾の発射試験を行いました。https://t.co/UkwYraYIq4 pic.twitter.com/SjYyaRARsW
— 防衛装備庁 (@atla_kouhou_jp) February 7, 2025
日本は反撃能力を確保するため事実上の巡航ミサイル「12式地対艦誘導弾・能力向上型」の地発型、艦発型、空発型の3種、極超音速滑空体(HGV)を搭載する事実上の弾道ミサイル「島嶼防衛用高速滑空弾」の早期配備型(Block1)と性能向上型(Block2A/Block2B)、極超音速巡航ミサイルの「極超音速誘導弾」を開発中だが、どれも高価なシステムで「質」をカバーするものばかりなので、日本も世界のトレンドについていくためには「量」を担保する安価なシステムの開発が必要不可欠になってくる。
ちなみに米海軍は滑走路に依存しない長距離無人航空機=Runway Independent Maritime Expeditionary Strike (RIMES) 計画を立ち上げ、RIMESは戦闘機で使用する1,000ポンドクラスの弾薬、あるいはパレット化された弾薬を運搬・投下する能力、自爆攻撃において1,400海里の航続距離といった特性を備えた無人機を要求しており、もう最高の兵器だけしかいらないというマインドは過去のものになろうとしている。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Central Command