10年国債入札、日銀の利上げ観測と財政リスクで需要不透明
2日に実施される10年利付国債入札は、日本銀行の利上げ観測と政治的不確実性が強まる中で投資家の需要を試すことになる。
同日には日銀の氷見野良三副総裁が講演し、追加利上げに関して一段の示唆を与える可能性がある。また、自民党は7月の参院選の結果を総括し、両院議員総会に報告する予定だ。
野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジストは、10年債入札について「8月中旬の20年債入札以降、あまり良い印象を持っていない投資家が多く、慎重な姿勢で札を入れる展開になる」と予想した。「イベントが二つある日で、その結果が判明する前は必要最低限の動きになる」とみる。
日本の国債利回りは、日銀による段階的な買い入れ縮小や政府支出への世界的な懸念の高まりを背景に高水準にある。前回8月の10年債入札は投資家需要の強弱を反映する応札倍率が12カ月平均を下回り、先週行われた2年債入札に対する需要は16年ぶりの低水準となった。
新発10年債利回りは入札を控えた1日午後に1.625%まで上昇し、8月に記録した2008年以降の最高水準(1.63%)付近で推移した。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「利上げ継続と国債買い入れの減額が続くということで、どちらかというと金利上昇方向の見方が多い」ため、投資家の積極的な参加は見込みづらいと話す。あまり楽観的にはなれないが、利回りが1.6%台に乗せていれば「投資家需要はそれなりにある」との見方も示した。
日銀の氷見野副総裁の講演は、入札前の債券市場動向に影響を与える可能性がある。植田和男総裁は賃金には上昇圧力がかかり続けるとの見解を示し、翌日物金利スワップ(OIS)は年末までに利上げが行われる確率を約70%と織り込んでいる。
一方、自民党の参院選総括の結果は、総裁選の前倒し実施の賛否について党所属議員らの判断材料となり得る。石破氏の支持率は改善しているものの、党内では退陣を求める声が根強い。
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は「自民党総裁選を意識した動きになる」とした上で、石破首相が退陣した場合の次の政権が減税にかじを切ると、国債増発が懸念されると指摘。同時に、10月とみられている日銀の利上げが難しくなる可能性もあり、債券市場にとっては強弱両方の面があると話す。
ブルームバーグ・ストラテジストの見方:
今週の国債先物は軟調にスタートし、10年債と30年債の入札を前にしたヘッジの動きから下げを拡大する可能性が高い。
長期金利が循環的な高値圏にあるにもかかわらず、債券投資家の日本国債への関心が高まっている兆候はほとんど見られない。実際、9月は20年物と40年物の国債入札も消化する必要があり、今年最も入札が集中する月の一つとなる。
— MLIVストラテジスト、マーク・クランフィールド、関連記事はMLIV
財務省は先週、国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)会合のメンバーに対し、流動性供給入札の減額の是非を聞くアンケートを送付していたと、匿名を条件に複数の関係者が取材で明らかにした。財務省は7月に年度途中としては異例の超長期債発行減額を実施した。今回の動きは、さらなる需給調整に向けた姿勢を示すものと受け止められている。
パインブリッジの松川氏は「超長期債は減額の報道で買い優勢だが、10年債については減額の予想がない」ため、やや弱めの入札結果を予想している。
10年債入札を通過した後、投資家の注目は4日の30年債入札に移る見込みだ。岡三証の長谷川氏は、10年債入札が弱ければ、30年債やそれ以降の入札に対する警戒感にもつながると指摘した。