今流行中のエボラ出血熱にはなぜワクチンが役に立たない? 次の一手は間に合うのか

 ワクチンは、病原体の一部を安全な形で免疫系に示すことによって、侵入してきた病原体を免疫系が認識して攻撃できるよう訓練する、という仕組みだ。エボラウイルスの場合、この訓練に用いるのに最も適しているのは、ウイルス表面を覆う糖タンパク質だ。  エボラウイルスをクリスマスツリーにたとえるなら、糖タンパク質は「オーナメント(飾り)」だと、米ラ・ホヤ免疫学研究所の最高経営責任者(CEO)で免疫学者のエリカ・オルマン・サファイア氏は言う。  これらの飾りは、免疫系にとっても研究者にとっても非常に見つけやすいため、ワクチンを迅速に開発するときに最も適した標的となる。  ただし、この糖タンパク質はエボラウイルスの種類ごとに大きく異なる。最も一般的なザイール型も、最もまれなブンディブギョ型も、核となる構造はどちらも非常によく似ているものの、表面にまとう糖タンパク質は約35%が異なっている。ザイール型のクリスマスツリーが赤いボールの飾りで覆われているとするなら、ブンディブギョ型のツリーは、飾りのうち3分の1ほどが銀色の星に置き換わっているようなものだ。  エルベボワクチンはおそらく、ブンディブギョ型にもある程度の防御効果を発揮するだろうが、現在の流行を食い止めるためにコンゴ民主共和国で投入するには力不足だと、ガイズバート氏は言う。2011年に発表された実験結果によると、ザイール型に特化したワクチンをサルに接種したところ、ブンディブギョ型への感染を生き延びた個体は全体の4分の3(75%)だった。  これはそう悪くない数字に思えるかもしれない。だが、保健当局への不信感から対策が難航し、現地で多くの死者が出ている現状を踏まえると、十分な効果とは言い難い。 「大勢の人にワクチンを接種したとしても、十分な交差免疫(ワクチンで作られた抗体が、似た構造をもつ別の病原体に一定の効果を発揮すること)が得られずに半数が死んでいくとしたら、ワクチン全般に対する激しい反発が起こるでしょう」と、米テキサス大学医学部ガルベストン校のウイルス学者トーマス・ガイズバート氏は言う。「非常に厳しい判断を迫られているのです」  世界保健機関(WHO)は、エルベボがほかの種のエボラウイルスに対して交差免疫の効果を示す証拠について、「限定的であり、結論を下せるものではない」としている。

ナショナル ジオグラフィック日本版

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