TikTokが日本でネット通販開始 ユーザー数3300万人、日清食品やKATEも参画
中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は30日、Eコマース機能「TikTok Shop」のサービス提供を米国などに続き日本でも開始した。TikTokによるEコマースの展開は日本が17カ国目。従来の検索型のネット通販とは異なる新たな購買体験「ディスカバリー(発見型)Eコマース」を掲げ、動画を活用した商品訴求力の高い販売方法が特徴だ。国内3300万人を誇るユーザー数を武器に、大手メーカーや既存の通販サービスとも連携しながら、小売市場への勢力拡大を目指す。
バズった商品が伸びる「TikTok売れ」
TikTok Shopは、TikTokのアプリ内で商品の発見から購入までをシームレスに行えるEコマース機能で、ネット通販の普及率が高い国で先行展開されてきた。米国では昨年11月のブラックフライデーで1日に1億ドル(約150億円)を売り上げた。2021年にサービス展開したイギリスでは、TikTok Shop経由で美容商品が1秒に1個売れているという。
TikTokは昨年、日本におけるiPhone向けアプリストア「App Store」で最も多くダウンロードされたアプリで、若者を中心にユーザーを増やしてきた。日本のEコマース普及率は9%にとどまるが、消費者の購買力は高いとされる。TikTokでバズった商品の販売が伸びる「TikTok売れ」も起きるなど、Eコマースとの親和性が高いという。
TikTok Shopのデモ画面TikTok Shopの日本でのサービス開始時には、日清食品、花王グループのKATEといった大企業・有名ブランドも参画した。TikTok Shop用の新たな広告サービスも7月中に開始予定だ。これにより、企業はTikTok内で広告宣伝から販売まで一気通貫で行うことができるようになる。
従来型の通販サイトと連携も
アマゾンや楽天といった従来の検索型のネット通販では、ユーザーが欲しいものを自身で検索して探すのに対し、TikTok Shopではユーザーがコンテンツを楽しみながら、興味を持った商品をアプリ内で購入できる仕組みが特徴だ。
TikTok Shop Japanの邱開洲(きゅう・かいしゅう)執行役員は、「(TikTokは)ネット通販のプラットフォームである以前に、メディアプラットフォームだ」と強調。「日頃、コンテンツを見ている中で、今まで買おうとしていない商品との接点が生まれ、そのまますぐ購入できる」と優位性をアピールする。
一方、既存の通販サイトとTikTok Shopとの間で連携の交渉も行われているという。既に「BASE」(ベイス)や「Shopify」(ショッピファイ)といったEコマースサービスとはシステム連携しており、それらに出店している個人や企業は、TikTok Shopを通じて顧客とのタッチポイントを増やすことができる。
18歳未満の販売・購入は禁止
近年、Eコマースでは偽物や違法商品の販売、転売などが問題となり、プラットフォーム運営事業者には厳しい目が向けられている。新規参入するTikTokは「安心安全が最優先」とし、全ての商品や販売者に対して厳格な審査を行うという。18歳未満による販売・購入は禁止する。データの利用については「同意なく共有や販売が行われることはない」としている。
TikTok Shopの安全に関する取り組みについて説明する邱開洲執行役員中国などEコマースの普及率が高い国では、動画配信中に商品を売る「ライブコマース」の人気が高く、特売イベントは巨大な売上高を記録している。日本でも「SHOWROOM」(ショールーム)などが長く市場開拓に取り組んできたが、普及は限定的だ。
邱氏は「ライブ配信・ライブコマースは、かなりの規模がないと成り立たない」と指摘。ライブ配信機能を持つTikTokは、日本有数のユーザー基盤を武器に、国内勢が苦戦してきたライブコマース市場を掘り起こす考えだ。
また、将来のふるさと納税仲介も視野に入れるなど、さまざまな分野への展開を目指しているという。(西山諒)