大谷翔平から「走れ!」 満塁機でまさかの本盗サイン…キム・ヘソンを助けた"イジリ"

 ドジャースの新戦力として活躍しているのが、韓国人キム・ヘソン内野手だ。オープン戦は15試合で打率.207と結果を出せず。開幕こそマイナーで迎えたが、5月3日に初昇格。15日(日本時間16日)の本拠地・アスレチックス戦の第1打席から球団新人記録に並ぶ9打席連続出塁を記録するなど「恐怖の9番打者」として存在感を見せている。

 シーズン途中からのメジャー合流。チームへの溶け込みへ、大谷翔平投手も一役買っているようだ。出場4試合目となった9日(同10日)の敵地・マーリンズ戦。7回2死満塁の大チャンスで、キムは三塁走者、大谷は二塁走者だった。その時だった。二塁ベース上の大谷は本塁方向へ顎を“クイッ”。「走れ! 走れ!」とのポーズを繰り返した。

 打者は主力のフリーマン。本盗のサインは当然ジョークだったが、メジャー昇格したばかりで緊張の連続だったキムにとって、試合中の“イジリ”で気持ちが軽くなったようだ。「とてもいい人。いつも楽しんでいて、いい雰囲気を作ってくれるのでいい選手です」。26歳に柔和な笑みが広がった。

 大谷とキムは同じ代理人事務所CAAスポーツに所属。昨オフのメジャー球団と交渉中も同じ場所で練習をしてきた。キャンプ中も山本由伸、佐々木朗希両投手らを交えたアジア出身者の食事会を開催。「いつもとても明るく、いつも幸せそうで、私にもよくしてくれるので、選手としては助かる。私はとても居心地が良いです」と頭を下げた。

 そんなキムにも“野望”がある。来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では侍ジャパンと1次ラウンドで対戦する。大谷らドジャースのチームメートと対戦する可能性がある。「できれば出たいと思っています。そのこと(大谷らとの対戦)に一番ワクワクしているんです。日本は前回のWBC王者なので、とても強い。同じグループなので、しっかりと準備したい」と意気込みを語る。

 1999年1月生まれ。山本由伸とは同学年の26歳だ。「こっちではホテル暮らしになるのが韓国との違いですが、ほとんどの時間は球場のグラウンドで過ごしている。大したことではありません。(今季の目標は)できる限りメジャーにいて怪我をしないこと」と言葉に力を込めた。

○著者プロフィール 小谷真弥(こたに・まさや)1983年、大阪・大阪狭山市生まれ。埼玉・東松山市育ち。明大明治高、明大野球部を経て2006年報知新聞社に入社。地方部(富山・石川)を経て09年に運動第一部(野球部)へ異動。09年ロッテ、10、11年横浜、12年から巨人、15年から日本ハム、17年からメジャー担当。19年2月からFull-Count編集部に所属。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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