まるで工芸品な3kg超のアルミ塊! 官能的すぎる“磁気×メカニカル”なキーボード「Lofree Hyzen」を試す:武者良太の我武者羅ガジェット道(1/5 ページ)

 今、ハイエンドのキーボード界では「ラピッドトリガー」という機能が浸透し、着実にユーザー数を増やしてきました。高級ゲームコントローラーのスティックで主流となった「ホールエフェクト」(磁気ホール効果)を活用したこの入力機構は、mm秒単位の反応速度を競うデバイスの象徴です。これまでは主に競技性を重視するゲーミングキーボードや、自作キーボード界で採用されてきました。

 本当に素晴らしい技術ではあるものの、その一方で失われたものがあります。それはキータイピングの“悦び”です。競技性を極限まで追求したモデルの多くは、軽量化を優先するあまり、ボディーの質感はプラスチック然としてしまい、キータッチもどこか無機質で頼りなさを感じるものが少なくありません。

 そんな効率重視すぎたジャンルに、新製品でチャレンジしたのが、デザインとキータッチを追求してきたブランド、Lofree(ロフリー)です。

 今回取り上げるのは、最新モデルとなる「Hyzen」(ヘイゼン)です。ファンクションキー/テンキーレスの65%レイアウトだというのに、本体は大きく感じるし、何より重い。金属の塊みたいなキーボードです。

質感の高さランキングならトップを狙えるキーボード「Hyzen」

 そして、使われているキースイッチ機構がまた興味深いのです。最新のTMR(トンネル磁気抵抗)センサーと、メカニカルの物理構造を融合させたハイブリッドスイッチを搭載しているといいます。

 このモデルから見えてくるのは、速さと官能さ、この相反する二要素の両立です。Lofreeはどう着地させたのでしょうか。実機を隅々まで見ていきましょう。

※レビュー機は発売前の試作品で、製品版と異なる場合があります

 今回試すのは、有線/Bluetooth/2.4GHz帯ワイヤレスでの接続に対応するHyzen-tri-modeモデルです。通常価格は299ドル(約4万8000円)です。有線接続のみ対応するモデルは279ドル(約4万4770円)です。

 コイツの箱がまずデカい。そこから取り出したキャリングケースがまたデカい。一体何が入っているのでしょうか。

フェルト生地が貼られたキャリングケース。VRゴーグルが入っていそうな質感です

 キャリングケースを開けると、Hyzen本体を包んだ布スリーブと、付属オプションが入っていました。え、これだけ?

このキャリングケースはHyzen-tri-modeにのみ付属する

 付属するオプション品も多くはありません。キーキャップを外す工具、2.4GHzワイヤレスレシーバー、交換用キーキャップ、USB Type-Cケーブルです。多いか少ないかでいったら、趣味性の高いキーボードの中では普通寄りですが、この容量のモノを収納するケースとしては、存在感ありまくりですね。このあたりにも、デザインで遊ぶLofreeらしさを感じます。

Esc、上下/左右のカーソル、Enter、BackSpaceといった交換用キーキャップ、8K対応のドングルやUSBケーブルといった付属品

 そして、Hyzen本体です。主なスペックは以下の通りです。

とにかく重いHyzen本体
Hyzen-tri-mode Hyzen-wired-mode(有線専用モデル) ボディー素材 アルミニウム アルミニウム 配列 65%レイアウト 65%レイアウト スイッチ Lofree × Kailh Nexus(TMR×メカニカル・ハイブリッド) Lofree × Kailh Nexus(TMR×メカニカル・ハイブリッド) 接続方式 有線(USB Type-C)/2.4GHzワイヤレス/Bluetooth 5.3 有線(USB Type-C) ポーリングレート 最大8000Hz(有線/2.4GHz) 最大8000Hz(有線/2.4GHz) アクチュエーションポイント 0.01mm~3.5mm(0.01mm単位で調整可能) 0.01mm~3.5mm(0.01mm単位で調整可能) バッテリー容量 1万mAh なし サイズ 約330.9(幅)×142.3(奥行き)×48.4(高さ)mm 約330.9(幅)×142.3(奥行き)×48.4(高さ)mm 重量 約3130g 約2520g

 ボディーはアルミニウムブロックから精密にCNC加工されています。一般的なキーボードのように、トップケースとボトムケースをネジで留める構造ではありません。手に持つと、指先に伝わるのは継ぎ目のない冷たい金属の塊です。

 表面はきめ細かなサンドブラスト加工が施されており、光を吸い込みつつも、エッジの部分が鈍い輝きを放ちます。直線と鋭い角度を多用した造形は、まさにテスラのサイバートラックが持つ、ポリゴン数を削ぎ落とした物体ならではの力強さをイメージさせます。

写真のキーキャップはフロストタイプ。マットなアルミフレームとの相性がいい

 カラーバリエーションはアルミブロックの質感が強烈なシルバーと、スペースグレーの2色です。いずれも「デスクトップを彩る工芸品なのでは?」と感じるほど、存在感がありすぎです。

存在が際立つ外観。65%キーボードとは思えない

 まるで高級オーディオアンプのような見た目の美しさと、物量投入時代を思い出す重さです。65%レイアウトという、フルサイズキーボードから約4割の面積を削ぎ落とした比較的コンパクトなサイズ感でありながら、重量は約3.1kg(有線接続モデルは約2.5kg)もあります。

 一般的なプラスチック製のメカニカルキーボードの約2倍、といえば、ヘビー級であることが伝わるでしょうか。

スペースグレーも同様に半透明のキーキャップ、マット加工のアルミフレームを持つ

 この重量は、単なる高級感の演出ではありません。いくら激しくキーをたたいても、キーボードがズレる不快感を物理的に封じ込めてくれます。さらにタイピング時の微振動をアルミの質量が全て吸収してくれるという。テーブルにキーボードを埋め込んだかのような安定感があります。

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 Hyzenは単なるルックスのいいキーボードではありません。最も重視すべき要素は、入力認識用にTMRセンサーを採用したことです。

キーボードとして見ると、実は最先端を行くモデル

 TMRセンサーは、多くのラピッドトリガーキーボードが使うホールエフェクトタイプの磁気スイッチセンサーよりも高感度で、0.01mm単位のアクチュエーションポイント調整機能を実現しています。0.1mmではなく0.01mmですからね。これは人間が体感できる限界を超えた、まさに理論上の最速を追求した結果です。

キースイッチは交換できる

 実際のゲームプレイや文章入力などにおいて、この0.01mmの違いが直接スコアや業務改善に結び付くかは議論の余地がありますが、入力デバイスとして可能な限りの解像度を提供するという姿勢はとにかく熱いです。

 そして確実な操作感を重視したい方は、3.5mmまでの深い設定にすることも可能です。実際に入力してみると、磁気なのにメカニカルなキータッチもあるところに驚きます。

キータッチ優先の方にも触れてほしい磁気+機械式のLofree Nexusスイッチを採用する

 磁気キーボードの最大の弱点は、スイッチ内部に物理的な接点がないために、スカスカとしたリニア一辺倒なキータッチになりがちなことでした。

 Lofreeはこの問題に対し、Kailhと共同開発したNexusスイッチを採用しています。このスイッチは、磁気検知用のマグネットとは別に、従来のメカニカルスイッチのようなリーフ構造(板バネ)を内蔵しています。これにより、磁気スイッチ特有の滑らかさを維持しながら、メカニカル特有の芯のある感触と底打ちのタクタイル感が同居しているのです。これはかなり気持ちがいい。

 さらに内部には、幾層にも重なった吸音フォームが入っています。アルミボディーの剛性と相まって、タイピング音はコツコツという密度が高めのもの。かつキータッチはしっとりとした落ち着きのある感触になっており、上質です。

 ファンクションキーを無くした65%配列キーボードは、キー数が少ないというデメリットがありますが、それを補ってくれるのがこのサイドノブ。Fnキーとの組み合わせで数字キーの機能を変えます。

機能性を高めるサイドノブ

 数字キーとして使う時は何も表示させず、ノブを回したとき、またはFnキーを押したときはF1~の表示になります。さらにノブ+Fnキーでさらなる機能性をもたらす。キー数の少なさを、物理的なインタフェースの楽しさで補うというアプローチは実にLofreeらしいといえませんか。

数字キーの機能を変更できる

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