ソフトバンク好調な上期決算 楽天モバイルには「同じ努力してから言って」
ソフトバンクは、2025年度第2四半期(上期)の決算を発表した。対前年で増収増益、全セグメントで増収増益を記録。売上高、営業利益、純利益は過去最高を記録した。法人向け事業の拡大を加速させ、コンシューマ事業と並ぶ3兆円規模にまで拡大するという目標も語られた。
ソフトバンクの2025年度上期の売上高は、対前年8%増の3兆4,008億円。営業利益は7%増の6,289億円、純利益は8%増の3,488億円だった。また、全セグメント(コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション・その他、メディア・EC、ファイナンス)で増収増益。売上高に占める非通信の割合は、2020年上期の47%から、63%にまで拡大している。
上期のコンシューマ事業は対前年で3%増の1兆4,757億円、営業利益は3%増の3,309億円。MNPは順調で、スマートフォン契約数は累計3,206万契約になった。
「短期解約者が見込みより多く、獲得コストの考え方を変え、効率を上げないといけないのが反省点。全体的には順調だった。昔のように流動する時代ではないが、微増はなんとか確保していきたい。(ほかのセグメントと比較して)好調というほどではないが、“守りきった”なと」(ソフトバンク代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏)。
事業の拡大がおだやかになっているコンシューマ事業に対し、法人向け事業が好調。上期のエンタープライズ事業の売上高は8%増の4,820億円、営業利益は10%増の1,041億円だった。
エンタープライズ事業以上に勢いが目立ったのがディストリビューション事業で、上期の売上高は17%増の5,058億円、営業利益は36%増の220億円になった。ディストリビューション事業の好調の要因は、継続収入(取扱高)が1,525億円になるなど、サブスクリプションが拡大したことを挙げている。
通期では、エンタープライズ事業、ディストリビューション事業のどちらも売上1兆円突破が目標で、将来的にはこれら法人向け全体で売上3兆円を目指す。3兆円は現在のコンシューマ事業と同規模で、収益構造の変革も試みる方針となる。
PayPayなどのファイナンス事業は、上期の売上高が対前年で24%増の1,897億円、営業利益は116%増の385億円と非常に好調。上期のPayPayの連結決済取扱高(GMV)は対前年で25%増の9.2兆円、連結EBITDAは100%増(倍増)の483億円。
ソフトバンクはクラウド事業として「ソブリンCloud+ソブリンAI」の方針を発表しており、クラウドのソフトウェア群ではオラクルと取り組むことや、独自に開発する生成AIのLLM「Sarashina」、AIデータセンターを建設してGPUによる「AI計算基盤」を構築するといった取り組みが説明された。
エージェントAIを大規模法人が取り入れられるようにするクリスタル・インテリジェンスについては、OpenAIと共同で「SB OAI Japan」を設立し事業を展開する予定。2026年のサービス提供を目指す。
「進捗は至って順調。成長の種のひとつ。アルファ版で社内検証を始めたところだが、現場の技術者は、これはもう異次元だと言っている。今までのChatGPTとかの世界観で語れるものではない。企業の仕事のあり方、プロダクトのスピード感がガラッと変わる」(宮川氏)と、革新的なものになるとしている。
質疑応答では、コンシューマのモバイル事業が堅調だった要因が問われた。宮川氏はまずワイモバイルが値上げに踏み切った点について「正直、上手にやったなと思っている。ユーザーにも受け入れられた」との見方を示した。
「ソフトバンク」の料金については、コスト高騰などを背景に「我々もどこかで動かざるを得ないだろう。検討している段階。明日かもしれないし1年後かもしれない」と語り、値上げが検討事項になっていることを語っている。
楽天モバイルが9月、「低価格・無制限を継続する」とあえて宣言し、その理由として「次世代ネットワークによりコストを削減し、低価格を実現」と説明していたことについては、宮川氏はやや語気を強めながら苦言を呈した。
宮川氏はCTOとして長く基地局の全国展開に携わってきた経験を踏まえ、人口カバー率の向上で壁になる最後の5~10%を埋めるためには、稼働率が低く、鉄塔建設や長距離光ファイバーの敷設などで非常に高コストになる“地方の面展開”が必要になると指摘。「そうした努力をした上で同じ発言をしてほしい。ローミングに頼った現状では(≒地方にコストをかけておらず)不公平」と語り、楽天が語る優位性は同じ土俵の内容ではないとした。