太古の地球が「うんち」でいっぱいになって、生物が爆発的に増加した説
うんちは生命誕生の立役者?
カンブリア紀(約5億3900万年前から4億8500万年前)が始まって最初の約2000万年間、地球では生命が爆発的に増加しました。
「カンブリア爆発」と呼ばれる、生物の進化における一大イベントです。何でこんな現象が起こったのかについては、科学者の間でも意見が分かれています。
しかし今回、これまでで最も奇抜な仮説が登場しました。なんと「うんち」。それも、とてつもない量のうんちがカンブリア爆発を引き起こしたというのです。
うんちの養分
より正確に言えば、少しずつ蓄積した糞便が、海全体に有機物や栄養分を行き渡らせ、生命の誕生と進化に適した海洋環境を作り出したというこの説。
学術誌『Trends in Ecology & Evolution』に掲載された研究結果では、糞の化石の分布と、複雑な消化器官を持つ動物の出現との間に重要なつながりがあると指摘されています。
Credit: Flinders University「酸素濃度の上昇をはじめとする要因に比べ、太古の生態系における糞便の重要性は見過ごされがちです」と、研究の共著者でオーストラリアのフリンダース大学の古生物学者Russell Bicknell氏は声明で述べています。
生命の大誕生
英国自然史博物館の解説によると、現在知られている主要な動物群のほぼすべてが、カンブリア紀に出現したとされています。
さらに最近の研究では、複雑な構造を持つ動物は、それより少し前に登場していた可能性も示されていますが、現時点で地球上の初期生命の進化を語る場合、カンブリア爆発が重要な基準点となっています。
Bicknell氏と、共著者でドイツのカールスルーエ工科大学の古生物学者Julien Kimming氏は、ニュースサイト「The Conversation」への寄稿記事で、これまでに見つかっている糞の化石の年代を調べたところ、カンブリア紀の始まりごろのものだったと説明。
糞の化石は、専門的には「糞石(コプロライト)」と呼ばれます。一方、複雑な消化器官を持つ生物の化石が数多く見つかるようになるのは、カンブリア紀に入ってから。
Bicknell氏とKimming氏は以下のように記しています。
腸や糞石の化石記録は、カンブリア紀に劇的な変化を見せます時代が進むにつれて、より多様な糞石が現れるようになります。それと同時に、複雑な消化器官を持つ、保存状態の非常に良い化石も増加しました。特に、初期の節足動物で顕著に見られます。
生命を増やした循環
両氏が論文で説明しているように、カンブリア爆発の原因を探る研究の多くは、酸素濃度や食物網、生物地球化学的循環に注目してきました。
一方、約36カ所の地層から発見されているカンブリア紀の糞石は、主に初期生物の消化器官を調べるために利用されてきました。
Credit: Flinders Universityそこで研究チームは、糞便がどのように生まれ、生態系でどのような役割を果たしたのかを探ることにしました。論文では、これを「動物の進化において最も根本的でありながら、いまだ解明が難しい問題のひとつ」としています。
両氏は寄稿記事で、現代の海において、糞が「生物ポンプ」の重要な要素になっていると説明しています。生物ポンプとは、生物の活動によって有機炭素や栄養分が海中を移動し、循環する仕組みのことです。
みんな、うんちをする
当時の生物学的な仕組みが現在と大きく異なっていなかったとすれば、動物の多様化によって、生態系にフィードバックループが生まれたと考えられます。
つまり、動物が増えれば糞も増え、それによって環境中に送り込まれる栄養分が増加。その栄養分がより多くの生物を支え、さらに大量の糞が生み出されるという循環です。
ただし研究チームは、この新説がほかの説を否定するものではなく、補完するものだとしています。
地球のシステムでは、ひとつの要因だけが独立して作用することはほとんどありません。
さまざまな要素が組み合わさってフィードバックループが生まれ、それがより大きな現象につながります。今回の場合、それが生命の奇跡的な爆発だったというわけです。