ガザで栄養補助食品を求め並んでいた子どもら、イスラエル軍の空爆で死亡 病院が発表

画像提供, Reuters

パレスチナ・ガザ地区中部のデイル・アル・バラフで10日朝、栄養補助食品を手に入れようと診療所前で並んでいた少なくとも15人がイスラエルの空爆で殺害された。現地の病院が説明した。8人は子ども、2人は成人女性だったという。

イスラエル軍は、「ハマスのテロリスト」を攻撃したと主張。民間人の被害は遺憾だとした。

空爆があったアルタヤラ診療所に近いアル・アクサ殉教者病院の映像には、子ども数人の遺体が床に横たえられ、負傷者を医師らが手当てをしている様子が映っている。

同診療所を運営する米援助団体「プロジェクト・ホープ」は、診療所の前では栄養不良や感染症、慢性疾患などの患者が診療開始を待っていたとし、攻撃は明白な国際法違反だと非難した。

空爆を目撃したユセフ・アル・アイディさんは、「突然、ドローン(無人機)が近づいてくる音が聞こえ、爆発が起こった」、「足元で地面が揺れ、周囲は血と耳をつんざく悲鳴だらけになった」とAFP通信に話した。

アル・アクサ病院にいたインティサールさんは、妊娠中だっためいのマナルさんとその娘ファティマさんの遺体が同病院の遺体安置室に置かれ、マナルさんの息子が集中治療室にいるとBBCに説明。「今回のことが起きたとき、彼女は子どもたちのサプリメントをもらおうと並んでいた」と話した。

国連児童基金(ユニセフ)のキャサリン・ラッセル事務局長は、「命をつなぐための支援を受けようとする家族を殺害することは受け入れられない」と非難した。

画像説明, アル・アクサ病院の外では、アルタヤラ診療所の前で殺された人々の葬儀が営まれ、祈りがささげられた(10日)

イスラエル国防軍(IDF)は今回の空爆について、2023年10月7日のイスラエルへの攻撃に参加したハマスのエリート部隊ヌフバのメンバー1人を攻撃したとする声明を発表。

「この地域で多数の負傷者が出たとの報告があることを認識している。この事案については現在検証中だ」、「無関係の人々に危害が及んだことを遺憾に思う」とした。

イスラエルとイスラム組織ハマスは、停戦合意に向けて交渉を続けている。じうしたなか、ガザでは10日も、診療所での空爆の犠牲者を含め66人が、イスラエル軍によって殺害されたとされる。

停戦交渉をめぐっては、カタールやエジプトと共に仲介役を務めるアメリカが、楽観的な見方を示している。だが、合意への打開には至っていないとみられる。

ガザでハマスが運営する民間防衛隊によると、10日にはガザ南部の海岸アル・マワシ地区でもイスラエル軍のドローンによるテントへの攻撃があり、5人が殺害されたという。

これらの攻撃は、イスラエルとハマスが、停戦合意に向けて仲介国を通した間接協議をカタールの首都ドーハで進めているなかで起きた。

イスラエルとハマスの間には大きな溝が残っているとみられる。

イスラエルの高官は9日夜、米ワシントンで記者団に対し、合意まで1~2週間はかかる可能性があると発言。60日間の停戦で合意に至れば、イスラエルはその時間を使いってハマスに対し、武装解除を条件とした恒久的な戦争終結を提案するとした。

訪米中のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は10日、「停戦の初めに、我々は戦争の恒久的な終結、つまり恒久的な停戦についての交渉に入る」と述べた。また、停戦合意のイスラエル側の条件として、ハマスの武装解除とガザの非軍事化を挙げた。

ネタニヤフ氏は、「これが交渉で達成できるのであれば、それに越したことはない。もし60日後に交渉で達成できていなければ、私たちは別の方法で達成する。勇敢な軍の力を使ってだ」と述べた。

これに先立ち、ハマスは声明を発表し、イスラエルの「頑(かたく)なさ」のために交渉は難航しているとした。また、人質10人の解放に合意して柔軟姿勢を示したとし、イスラエルの攻撃を終わらせる「包括的」な合意を求めているとの立場を繰り返した。

一方、欧州連合(EU)は10日、ガザに支援物資を運び入れるためにさらに多くの検問所を開き、インフラを修復し、支援スタッフを保護することで、イスラエルと合意したと発表した。

EUのカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表は、「イスラエルが合意されたすべての措置を実施することを期待している」と述べた。

国連は、ガザに4カ月ぶりに燃料を運び入れたと発表した。だが、今回の7万5000リットルは1日分の需要にも満たないとし、適切な燃料供給が直ちになされなければ、命にかかわる重要なサービスがストップすると警告した。

ハマスは2023年10月7日、イスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。イスラエル軍はこれに対抗し、ガザで軍事作戦を開始した。

ハマスが運営するガザ保健当局は、それ以来、ガザで少なくとも5万7762人が殺害されたとしている。

ガザ住民のほとんどは複数回にわたり避難を強いられている。ガザでは建物の90%以上が破壊または損傷していると推定されている。医療、飲料水、衛生システムも崩壊し、食料、燃料、医薬品、避難所が不足している。

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