トランプが対話の可能性を口にしてもイランが拒否する理由 長期戦に備えた「モザイク防衛」とは #エキスパートトピ

【資料】イラン第3代最高指導者に選出されたモジタバ・ハメネイ師(2016.7.18)。殺害されたアリー・ハメネイの次男。(写真:ロイター/アフロ)

米トランプ大統領は3月10日、イランとの対話の可能性に言及したが、イランのアラグチ外相は「対話が議題にのぼることはない」と拒否した。

そこには大きく二つの理由が考えられる。

第一に、このタイミングで協議しても得るものが少ないという判断だ。

米国が核協議を一方的に打ち切って攻撃を開始したため、今対話しても同じことの繰り返しになりかねないとイランが考えても不思議ではない。

第二に、長期化して困るのはむしろ米国という判断だ。

トランプが国内で逆風にさらされているからだけでなく、イランがもともと持久戦に備えてきたからだ。

ココがポイント

トランプ大統領“イランと対話も” モジタバ師に「彼が平和に生きられるとは思えない」 アメリカ軍は過去最大規模の攻撃へ

アラグチ氏は(中略)過去の交渉においてイラン政府は「非常に苦い経験」をしたと付け加えた。出典:AFP=時事 2026/3/10(火)

ただし、長期化すれば米国も政治的にジリ貧になりやすい。出典:六辻彰二 2026/3/9(月)

“Decentalized Mosaic Defense enables us to decide(後略)."

エキスパートの補足・見解

アラグチは開戦まもない3月2日、Xに「分権化されたモザイク防衛により我々は戦争がいつ、どうやって終わるかを決められる」と投稿した。そこには戦争の主導権をイランが握っているという自信をうかがえる。

一言でいうと「モザイク防衛」とは、軍事組織をトップダウンの中央集権ではなく分権化・重層化することだ。

陸海空軍、ミサイル部隊、革命防衛隊とその配下の民兵「バスィージ」などはそれぞれ独立し、緩やかなネットワークで結びついている。さらにそれぞれの司令官が殺害された場合に備えて、次期以降の司令官が第4代まであらかじめ決められている。

そのため1ヵ所が破壊されても全体は稼働し続ける。実際、米国とイスラエルは2月28日に最高指導者ハメネイをはじめ約40人の幹部を殺害したが、イランは機能停止に陥らなかった。

この戦略の要諦は相手を短期間で打ち負かすことではなく、生き残り続けて時間を稼ぎ、兵力で勝る相手を弱らせることにある。

イランがモザイク防衛にシフトしたのは、2003年に米国がイラクに侵攻し、フセイン政権を40日余りで崩壊させた後のことだ。それ以来想定してきた米国との正面衝突が始まった現在、イランが持久戦に向かうのは必然といえる。

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