「日本のお母さんって、強い」世界のママが驚いた理由に日本人ママは:朝日新聞

「日本のお母さんって、強いね」――。世界各国の子育ての知恵を知ることができるイベントを取材すると、各国の女性たちが口にしたのは〝日本ママ最強説〟でした。お世辞ではなく、日本の子育てについて本当に驚いているようです。一体どういうこと? 5月10日は母の日。日本の子育てについて、多文化の視点で考えてみました。(朝日新聞withnews・松川希実)

ネパールの家庭で行われる特製オイルを使ったベビーマッサージを習う

世界各国のママたちの話を聞いたのは、3月末、豊島区で開かれた「多文化共生子育てフェス 世界赤ちゃん祭り」(NPO法人Mother's Tree Japan)の会場です。七つの異なる国や宗教のブースがあり、その土地の出産にまつわる「当たり前」を見聞きしたり、体験したりすることができます。

インドネシアのブースでは、産後の女性が腹に巻く「ベリーラップ(ベンクン)」を体験。出産で広がった骨盤をケアするもので、いくつものひもで骨盤を締め上げていきます。でも、産後に1人でやるのは大変そう……。

すると、インドネシア出身のティアラさんは「いえいえ、ベンクンは実家のお母さんや家族が巻いてくれるんです。それに産後のママは毎晩、オイルやクリームでトリートメントしてもらったり、もみほぐしてもらえたりします。インドネシアでは、産後40日間のママはお姫様みたいに生活するんです」と笑います。

隣のタイのブースでは、1歳の娘を連れた日本人女性が、蒸したハーブを包んだ「ハーブボール」を肩に当ててもらっていました。

女性は「気持ちいいです。この1年、時間がなくて、体のケアにも行けていなかったので」と目をつむります。おなかの第2子も気持ちよさに「胎動」で反応していたそうです。

タイのハーブボールを使って体をケアしてもらう女性

「日本のお母さんは本当にすごい」。そう話すのはミャンマーから来た留学生ザー・チー・ソーさん(22)です。「日本ではひとりで子育てをしているお母さん、いっぱいいるじゃないですか。ミャンマーでは考えられない」と、心底驚いたと話します。

「ミャンマーでは女性が妊娠すると、近所の人たちでその家を守るんです」と言います。

え、近所の人? 驚いて聞くと、ソーさんはにっこりうなずき、「うちは父が海外で仕事していたので半年間、家にいないことも多かったんです。その代わり近所の人が入れ代わり立ち代わり来て、子育てを手伝ってくれました。だから母は私たち2人きょうだいを育てられたんです」と語ります。

母が仕事をしている間は保育園代わりに、近所の人が子どもたちを見てくれたそうです。その代わり、成長したソーさんは近所の人の子育てのお手伝いへ行ったそうです。「私は出産経験はないですけど、子守はしてきました」と胸を張ります。

筆者は東京で子育てしていますが、顔見知りの近所の人にも、なかなか「子どもを見ていて」とは言えなさそうだと衝撃を受けました。

「日本ってもはや」ママの吐露

日本のママは「ひとりで育てる日本のお母さんは強い」と言われていることをどう思っているのでしょうか?

「世界赤ちゃん祭り」に生後7カ月の第1子を連れて来場していた筒井美穂さんと行光弥生さんは「えーーー!」と驚き、「そんなことないです! 毎日つらいです」「メンタル弱弱(よわよわ)です」と全力で否定します。

ふたりは出産日が近いこともあり、息抜きにイベントに来たといいます。ワンオペ子育てに奮闘する仲間なのだそう。

核家族で、頼れる家族も親戚も近くにはいません。

インドネシアの「40日間お姫様扱い」という文化を聞くと「うらやましい。日本もそうなってほしい」と苦笑しますが、その顔には諦めムードが漂います。

筒井さんは「なんとなくですけど、日本ってもはや『ワンオペ』って言うと『かっこいい!』というか、『ワンオペが当たり前』という感じになっていませんか?」と言います。

行光さんも同調し、「できちゃうと、『できるから大丈夫だろ』って見られてしまって。本当は『無理やりやった』『なんとかやった』って感じなんですけどね。毎日はげるような思いでやっている」と苦笑しつつ、つらさを吐露しました。

孤独な子育てに悩んでいた母親が、多文化のママと集まり息抜きをする物語「りんごのきのしたで」を読む作家いわたあきこさん

母がタイ、父が日本出身で、タイと日本どちらの子育ても見てきた梶本忍さんは、「日本のお母さんは、まず、強い。人に頼らないですよね」と話します。

「タイは家族に頼るし、『サポートしてもらうのが当たり前』という文化。仕事でも、息抜き目当てでも『預けて良い?』と親に都合を聞く前に、『預けるから、よろしく』って感じです」と話します。

梶本さん自身、日本で子育てをしており、日本社会ではそれが簡単ではない現状も感じつつ、「日本のママも、もっと人に頼れたら、余裕のある子育てができるかもしれないのに」と感じています。

梶本さんが日本で救われたのは、「ママ友」同士のコミュニティーだったと言います。

「つらい気持ちを、共感できることで気が楽になりました。コミュニティーが大事、人のとのつながりがとても大事なんだと分かりました」

世界のダンスを楽しむ参加者

日本生まれで、バングラデシュ出身の夫と結婚したアフィーファさんは、3人目の出産と子育てを11年間、夫の母国で経験しました。

ひとり目、ふたり目の日本での出産・子育ては苦労したからだったそうです。

バングラデシュの子育てで驚いたのは、産後、毎日、約束もなくふらっと自宅に誰かしら親戚が訪ねてくること。

「なんで来るの?」と夫に聞くと「来たいからに決まっているだろ!」とあきれられたと言います。

しかし、訪れた人をアフィーファさんがおもてなしする必要はなく、当然のように料理をしてくれたり、皿洗いをしてくれたり、赤ちゃんの面倒を見たりしてくれたと言います。

「来てくれることで、むしろ楽になるぐらい。みんな、私や赤ちゃんを心配して、様子を見に来てくれていたんです」

アフィーファさんは「バングラデシュは物があふれている国ではないです。仕事もあまりありません。その代わり、時間に余裕のある人はたくさんいて、助けてくれる。こちらも頼れるんです」と話します。

日本は高齢者も働く社会で、誰しも余裕がないように見えると言うアフィーファさん。「みんなが人を助ける余裕がないと、子育てもぎすぎすしてくるのかも」

さらに先日、アフィーファさんに孫が生まれました。息子の妻はバングラデシュ出身で、産後に訪ねると「もうできない!」と言って、寝てしまったそうです。「日本ってなかなかそうやって素直に『助けて』って言えないじゃないですか。だから驚いちゃいました」と感心します。

「ひとりでできちゃう」、「助けてと言えない」――。日本のママが〝強い〟と言われる背景には表裏一体の事情がありました。

多文化の子育てを知り、思いを語り合うトークショー

「実家」の文化はそれぞれ違っても、今は同じ日本で子育てをしている各国のお母さんたち。時に孤独な子育てをがんばる同士です。

世界赤ちゃん祭りでは、一緒にネパールのベビーマッサージを習ったり、お互いの国の音楽で踊ったりして、ママたちの笑顔があふれていました。「人とつながる」ことでふと、肩の荷が下りることは、世界共通なのかもしれません。

今の日本で各国の知恵や習慣、家族や近所との絆をそのまま取り入れるのは難しいかもしれません。それでも「子育ては人に頼るのが当たり前」という〝異なる〟文化を知ることで、筆者は少し心が軽くなった気がしました。

ネパールの家庭で行われる特製オイルを使ったベビーマッサージを習う

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この記事を書いた人

松川希実
デジタル編成本部|withnews編集部
専門・関心分野
移民、外国人、多文化共生、介護、子育て、教育

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