米国のイラン空爆、原子炉への攻撃を意図的に回避-衛星写真が示唆

米空軍がイランの核開発計画に破壊的な攻撃を加えたにもかかわらず、重要な研究施設の原子炉を攻撃しないよう注意を払っていたことが衛星画像で示唆された。

  国際原子力機関(IAEA)が発表した最新の被害報告書には、イスファハン核技術・研究センターで稼働中の3基の研究用原子炉が含まれていない。これらのうち1基は、1991年に中国が製造した「小型中性子源原子炉(MNSR)」で、900グラムの核兵器級ウランを燃料として使用している。

  米当局者は週末、トランプ大統領がイスラエルと共にイラン攻撃に踏み切ったことによる最終的な被害の評価には時間を要すると述べた。ただ、衛星画像の公開が進む中、ウィーンの高官4人によると、イスファハンの原子炉施設は意図的に攻撃を避けられたように見えるという。これらの関係者は機密情報を扱う立場にあるため、匿名を条件に語った。

  米国の攻撃に対し、イランはカタールにある米軍基地にミサイルを発射した。ただ、カタールによると、ミサイルは迎撃され、死傷者は出なかったという。

  週明け23日には、IAEA理事会がウィーンで緊急会合を開き、イランの核計画に対する攻撃について協議した。たとえ、イスファハンのように出力の低い原子炉であっても、稼働中の原子炉を攻撃することは深刻な前例を作る恐れがあると、関係者は指摘している。

  またIAEAの査察官らは、イランに対し、高濃縮ウランの現在の保管場所について報告するよう要求。これに対し、イラン側は、今回の攻撃が核拡散防止を目指す国際的な外交努力に重大な損害を与えたと警告した。

  IAEAのイラン代表を務めるレザ・ナジャフィ氏は、米国の攻撃により「国際的な不拡散体制に根本的かつ回復不能な打撃を与え、現在の核不拡散防止条約(NPT)枠組みが無効であることを決定的に示した」と述べた。

  NPTは約半世紀前に成立した国際条約で、イランなどの締約国に対し、核兵器の開発を行わないことを条件に原子力技術へのアクセスを認めている。核技術の多くは民生用と軍事用の両方に転用可能であるため、IAEAが核物質の軍事転用を防ぐ役割を担っている。

  イスファハンの研究用原子炉は、さまざまな物質を中性子で照射し、原子反応を研究するために使用されていた。この「中性子放射化分析(NAA)」と呼ばれる技術は、かつて米国が核兵器開発を進める上で重要な役割を果たしたが、現在では産業界や放射線医学の分野でも活用されている。

  小型原子炉の1基が設置されているとみられる場所は、樹木が植えられたタイル敷きの広場に隣接しており、そのそばの建物は破壊されている。この建物は上級研究者らが集う場として整備されていた可能性があると、分析官の1人が述べた。

  米国はイスファハンへの攻撃に加え、ナタンズおよびフォルドゥの地下ウラン濃縮施設の破壊も試みたが、IAEAによると、米国とイスラエルの攻撃による環境への影響は局所的なものにとどまっているという。

  濃縮ウランは爆弾や原子炉で照射されて初めて、より深刻な放射性物質の拡散が発生する。IAEAは先週、イラン唯一の商業用原子力発電所であるブーシェフル原発が直撃された場合には、「極めて大量の放射能が放出」され、「最も深刻」な結果をもたらすと警告している。

原題:Satellite Images Suggest US Avoided Iran’s Nuclear Reactors (1)(抜粋)

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