記録破りのオオメジロザメを発見、2つの海を7200キロ超も移動
オオメジロザメは攻撃的で沿岸部に暮らす傾向があるため、人々に恐れられている。今回、体長約2.5メートルのメスが7200キロ超という記録的な長距離を移動していたことが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY RYAN DALY)
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2024年夏、ガーナの漁師トゥラワ・ハキームさんが、同じ西アフリカ沿岸部に位置するナイジェリアの都市ラゴスの沖合で漁をしていたとき、乗組員がオオメジロザメを釣り上げた。ハキームさんはこのとき、木製の漁船に引き上げられたこのサメが、ある記録を塗り替えようとしていることを知らなかった。
体長約2.5メートルのこのメスは、少なくとも7200キロを超える壮大な旅を成し遂げていたのだ。知られている限り、この種では最長の移動距離で、オオメジロザメが2つの海を泳いだことが記録された初めての事例だった。5月8日付けで学術誌「Ecology」に発表された研究論文によれば、このサメはアフリカ南東部、インド洋のモザンビーク海峡からアフリカ南端を回り、大西洋を北上してナイジェリアに泳ぎ着いた。(参考記事:「ザトウクジラの定説覆す大移動が多数判明、最長移動記録も更新」)
「びっくりしました」とハキームさんは言う。「彼らがそれほど遠くまで移動できるとは知りませんでした」
ハキームさんの漁船の乗組員が、地元の市場で肉を売るためにこのサメの解体作業を始めると、体内から小さな黒い筒が出てきた。それにはメールアドレスとともに、「研究用:返却した人には報酬あり」と書かれていた。
興味を引かれたハキームさんはメールを送ってみた。メールの宛先は、今回の論文の筆頭著者であり、南アフリカ、海洋学研究所でサメの生態を研究しているライアン・デイリー氏だった。この研究所は、西インド洋の研究プロジェクトを主導している。2021年、デイリー氏は南アフリカで、このサメに音響発信機を埋め込んでいた。
同様に衝撃を受けたデイリー氏も、最初は懐疑的だった。「これは詐欺かもしれないと思いました。このようなことが起こる確率は100万分の1くらいでしょう」
今回、幸運にも捕獲できたこのサメは、オオメジロザメの移動について新たな知見をもたらした。また、これまで特定の海洋生物の移動を遮ってきた障壁が、気候変動によって壊される可能性があることを示唆している。