日銀、銀行から買い入れた株式の売却完了 ETFは時間かけて検討
[東京 14日 ロイター] - 日銀が民間金融機関から買い入れた株式の売却を10日までに完了していたことが明らかになった。金融危機時に買い入れた株式の売却を合計10年かけて終えたことで、市場の関心は日銀が保有する巨額の上場投資信託(ETF)の扱いに向かう。日銀は時間をかけて取り扱いを検討していく方針とみられる。
日銀が買い入れた株式の売却完了は14日発表の営業毎旬報告で判明した。日銀は2002年11月から04年9月までの間と、09年2月から10年4月までの間、金融システムの安定確保のために金融機関から保有株式を買い入れた。2つの期間の累計買い入れ額は2兆4058億円。07年10月から市場での売却を始めたものの、リーマン・ショックの発生で08年10月にいったん停止、16年4月から売却を再開した。保有株の売却完了まで、合計で約10年を要した。
保有株式の売却が終了したことで、市場では日銀が保有するETFの取り扱いへの関心が高まりそうだ。異次元緩和の一環で大量に買い入れたETFの残高は簿価で37兆円、3月末時点の時価は70兆円に上る。
ETFの取り扱いを巡っては、立憲民主党がETFを政府が買い取った上で分配金収入などを子育て支援の財源として活用することを求めるなど、政界や有識者から様々な案が浮上している。
ゴールドマン・サックス証券は11日付リポートで、ETFを巡る日銀の基本要綱に盛り込まれた、処分は適正な対価で行う、損失発生の回避、市場かく乱の回避の3原則を踏まえれば「現実的な方法は、日銀が時間をかけ少額ずつ市場に売却すること」と指摘。「年間簿価6000億円(時価1.1兆円)で60年ほどかけて処分、あるいはこの倍で年間簿価1.2兆円(時価2.3兆円)、30年超の処分期間が現実的な目安」とした。同リポートは元日銀金融市場局長の大谷聡氏(同証券の経済調査シニアアドバイザー)などが作成した。
植田和男総裁は6月の会見で、ETFの取り扱いを聞かれ「私どもの3原則に従って処分していける方法について、時間をかけて検討していく」と答えた。
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