Steamやitch.ioでのゲーム検閲問題に関連して、Collective Shoutへのインタビューが海外メディアで公開

ゲームプラットフォーム「Steam」「itch.io」で一部の成人向けゲームが削除された問題で、そのきっかけとなったオーストラリアの団体「Collective Shout」のキャンペーンが、現在に至るまで注目を集めている。同団体は、女性への性的暴力を描くゲームを問題視し、決済事業者を通じてプラットフォームに働きかけたと自身で主張している。

この件について、海外のテックメディア「TweakTown」が、同団体のキャンペーンマネージャーであるケイトリン・ローパー(Caitlin Roper)氏への新たなインタビュー記事を公開した。

インタビューの中でローパー氏は、団体の活動の根幹にある思想として「女性と少女の地位を損ない、彼女らを客体化し、非人間的に扱うコンテンツに対して、その合法・非合法性に関わらず反対する(原文:We object to content that harms the status of women and girls, that objectifies and dehumanises them, regardless of legal or illegal status.)」と明確に主張している。

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目次

Steamやitch.ioにてゲームの検閲・削除に至るまでの経緯

この一連の問題の発端は、7月16日にSteamが決済代行業者の基準に反する作品を禁止するガイドラインを新たに設定し、複数のゲームが削除されたことだ。ここで特に問題とされていたのは「特定のジャンル」の成人向けゲームであった。

続いてゲーム販売プラットフォームのitch.ioも同月24日、NSFW(成人向け)作品を検索結果から除外すると発表。その際itch.ioは、発端となったのが『No Mercy』というゲームであることや、権利団体「Collective Shout」がSteamとitch.ioのコンテンツに対する懸念を決済業者へ訴えていたことを説明した。

これに対し、Collective Shoutは7月28日付の公式サイトへの投稿で経緯を説明。それによると、決済業者に接触したのはSteamが同団体の要求を無視し続けたためであるとしている。

また、itch.ioが全てのNSFW作品を除外したことに対し、Collective Shout側が問題視しているのはあくまで性的暴行や拷問を題材とした作品であり、全ての成人向けコンテンツではない、と説明していた。

合法・非合法に関わらず反対する根拠「女性への危害」

(画像は「Collective Shout」公式サイトより)

TweakTownのインタビューでローパー氏は、なぜ合法性だけを判断基準としないのかについて、同団体が根拠としている考え方を詳しく説明している。同氏が主張するには、団体の活動は「証拠に基づく(evidence-based)」ものであり、その論拠として、女性や少女の性的客体化が悪影響をもたらすことを数十年にわたり明らかにしてきたとされる世界的な研究を挙げている。

同団体の説明によれば、これらの研究は、女性を単なる性的対象として描くことが、女性自身の身体的・精神的健康に深刻な害を与えるだけでなく、社会における女性の地位にも影響を及ぼすと指摘しているという。

さらに、女性を客体化する描写が、男女双方に「女性の能力、道徳性、人間性」を低く見させる傾向を生み、ひいては男性による女性への暴力の一因にもなり得ると考えている。こうした理由から、同団体は単に法律に違反しているかどうかではなく、「女性と少女への危害が記録された証拠」を基準に問題となるコンテンツに反対している、と述べている。

また、このキャンペーンがゲーマーコミュニティの一部から「検閲」であると批判されていることに対して、ローパー氏は「レイプや女性への極端な暴力をシミュレートし、実行するファンタジーを抱くことは、誰の人権でもない」と反論。そのようなゲームにアクセスできなくなることは、人権侵害ではなく「些細な不便」に過ぎないとの考えを示している。

ゲームと現実における暴力の関連性についての同団体の見解

さらにインタビューでは、同団体が問題視する性的コンテンツに触れることが、現実世界での加害行為に繋がる可能性についても質問が及んだ。

ローパー氏は、キャンペーンへの反発として、自身たちが殺害予告や個人情報の暴露、顔を使ったポルノ画像の作成といった犯罪的脅迫を受けている現状を挙げた。その上で、「レイプゲームを擁護する男性の多くが女性に対する暴力犯罪を犯していることは明らかです。なぜなら、彼らは今まさに私たちに対してそれを実行しているからです」と述べた。

そして、レイプゲームを擁護する人々が見せる女性蔑視の態度はフィクションに留まらず、現実の女性への虐待に繋がるものであり、実際に虐待が行われているとの見解を示した。

損害を受けた開発者への責任は「プラットフォームにある」

インタビューでは、今回の措置によって合法的なゲームまで削除され、金銭的な損害を受けた開発者に対する見解も問われている。これに対しローパー氏は、Steamやitch.ioが本来行うべきモデレーションを適切に実施していれば、ポリシー違反の有無を確認するためにゲームを一時的に削除する必要はなかったはずだと回答した。

その上で、同団体が一貫して反対しているのはレイプや近親相姦、児童性的虐待といった、すでに違法であり決済事業者の規約でも禁止されているコンテンツであると強調。「私たちはプラットフォームの(削除)プロセスに責任を負う立場になく、関知もしていない」と述べ、レイプゲームから利益を得ているプラットフォームでの決済を停止するよう求める姿勢を堅持するとした。

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