中国のスパイ工作、台湾の政権中枢を籠絡…「斬首行動」容易になると危機感

 【台北=園田将嗣】台湾に対する中国のスパイ工作が政権中枢に及んでいることが判明し、波紋を呼んでいる。総統府の元顧問や外交部長(外相)の元秘書など、与党・民進党の関係者5人が中国側に機密情報を提供した疑いが浮上し、検察当局が捜査する一方、「身内」が籠絡された 頼清徳(ライチンドォー) 政権も対策に乗り出した。

台湾総統府

 台湾・中央通信社の報道などによると、総統府の元顧問は、当時副総統だった頼氏が2023年8月に南米パラグアイを訪問した際、旅程や宿泊先などの情報を中国側に提供した疑いで、検察に拘束された。

 台湾当局者は地元メディア「風傳媒」に、こうした情報の漏えいは「中国による(要人を暗殺する)『斬首』行動が容易になる」と危機感を示した。

  呉釗燮(ウージャオシエ) ・国家安全会議秘書長が 蔡英文(ツァイインウェン) 前政権で外交部長を務めていた当時の元秘書や、游錫堃・前立法院長(国会議長)の元秘書も、報酬と引き換えに機密情報を漏えいした疑いで、検察の捜査を受けている。

 検察はこのほかに、民進党・新北市議の元助手と、同党の元職員も捜査しているが、過去に中国で事業をしていた市議元助手が、最初に中国側に取り込まれたとみている。

 台湾で2020年以降、中国に関するスパイ容疑で起訴された159人のうち、約6割は現役・退役軍人だった。中国は「独立勢力」と敵視する民進党政権の内部情報や動向を把握する狙いがあるとみられる。

 頼政権は、機密情報に接触する軍関係者への検査を強化するとともに、民進党の幹部や職員が中国と香港・マカオを行き来したり、中国の高官と接触したりする際に報告する仕組みなどを設ける方針だ。ただ、こうした対策で中国の浸透を防げるかどうかは不透明だ。

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