今回の「REALFORCE R4」は超進化。新規も既存ユーザーも買ったほうがいい理由を教えましょう!
東プレの新型キーボード「REALFORCE R4」が、2025年10月15日に発売された。早速購入して使い始めているユーザーもいることだろう。
製品が発表されたのは10月13日だったが、直後の10月14日に開幕したテクノロジ展示会「CEATEC 2025」では東プレがブース出展しており、REALFORCE R4にいち早く触れることができたほか、担当者に話を伺うこともできた。
高性能かつ高耐久な純国産製品として広く知られ、キーボードの完成形の1つとも言われていた前回のR3から4年。どのような進化を果たし、既存ユーザーが乗り換えるほどの製品になっているのか?スペックからは見えてこないREALFORCE R4の詳細を聞くとともに、実際に製品を借りてR3と比較しながら使い勝手をチェックしてみた。
新しいREALFORCE R4では、 静電容量方式の近接センサー を活用したシームレスなスタンバイからの復帰や、より細かく調節可能になった APC(アクチュエーションポイントチェンジャー) 、キーボードからの マウスカーソル操作 といった点が新機能としてフィーチャーされている。しかし、 東プレとして最も力を入れた特徴的な点は「デザイン」 だという。
「 R4ではデザインにとにかくこだわって、複数のデザイナーにお願いして案を出してもらった。社内で何度も検討を重ね、REALFORCEらしさを体現しつつ、今の時代にマッチするデザインに仕上げた 」とのこと(山根氏)。
製品単体で見ると分かりにくいかもしれないが、R3と並べればはっきりとした違いに気付く。キーレイアウトは同一ではあるものの、前後左右のフレームの張り出しが抑えられ、狭額縁化していることが分かる。スペックシート上では幅が13mm、奥行きが16.5mmそれぞれ削減しており、明らかにコンパクトだ。
そして、使用時はさらにコンパクトに感じる。その理由は、主に奥側のフレームにおけるデザイン上の工夫によるものだ。真上から見るとほかより太く見える奥(上)側のフレームは、横から見ると斜めにカットされている。使用中だとちょうど視界に入らない角度でカットされているので、四方のフレーム幅がすべて同じに見えてより小さく感じるわけだ。
このようなデザインにしているのは、主に電池の搭載を考慮しているためだ。R4はR3と同じく、USBケーブルを使った有線接続とBluetoothによるワイヤレス接続の両方に対応するハイブリッドタイプで、ワイヤレス動作のために電池を使用する。
構造上、その格納場所は本体奥側に設けることになるため、単純に狭額縁にしてしまうとスペースの確保が難しい。しかし、斜めにカットするデザインにすることで、実使用時の印象をコンパクトにしつつ、電池の格納スペースも犠牲にせずに済んでいるのだ。
ところで、電池についてはR3で単3形乾電池2本だったところ、R4では単4形乾電池3本となっている。これもキーボードをコンパクト化するには不可欠な仕様変更だったそうだが、せっかく新型になるなら「乾電池ではなく充電式バッテリにしてほしかった」というユーザーもいるかもしれない。
東プレによると、充電式のリチウムイオンバッテリなどにしなかったのは、海外へ輸出する際の規制を回避する意味合いが大きいのだとか。バッテリ劣化による製品寿命への影響や、バッテリ交換時のコストの問題もあるが、あえて乾電池を選んでいるのは海外で使用するユーザーのため。我々日本のユーザーが海外に行くときも、不安なくキーボードを持ち出せるのはメリットと言えるのではないだろうか。
R4では電池が単4形乾電池3本に変わったわけだが、これによって一般的にはR3より全体の電池容量はやや低下してしまう。しかしながら、R4のワイヤレス接続時の稼働時間は約3カ月でR3とほとんど変わらないレベルのようだ。
その要因の1つは、新たに搭載した静電容量方式の近接センサーによる省電力化にある。ワイヤレス接続ではキータイプ時に即座に入力を検知できるようPCと常時通信している必要があり、そのままだと短期間で電池を消耗してしまう。そこで、通常は一定時間経過後にスタンバイ(スリープ)の状態に切り替え、使用していない間は電力消費を抑えるようにしている。
つまり、できるだけ短時間でスタンバイに入るようにすれば、その分省電力になり長持ちする。ただ、復帰するには電源ボタンを押すか、もしくは一度キータイプする必要があり、その初回入力が反映されないことになり得る。頻繁にスタンバイに入ってしまうと復帰時の手間や無駄なキー入力が増え、使い勝手の悪化は避けられない。
では、可能な限りの省電力を目指しつつ、使い勝手が損なわれないようにするにはどうすればいいか?R4で導入された近接センサーは、まさにその課題を解決するためのものだ。 キーボードの手前方向もしくは左右方向に手を近づけると、それを近接センサーが認識してスタンバイから復帰するため、いきなりキータイプしてもしっかり入力が反映されるというわけだ。
実際の使用感としても、着席してすぐPCにログオンしようとしたときでも無駄打ちが発生せず、スムーズに使い始められ、スタンバイ状態を意識することはまったくない。電源オン状態からスタンバイになるまでのアイドル時間は専用ユーティリティの「REALFORCE CONNECT」で調節できるが、最短の10分に設定しても問題ないだろう。
なお、R4ではBluetooth接続時もREALFORCE CONNECTによる設定が可能になった。R3ではカスタマイズしたいときにUSBケーブルを接続する必要があったため、ちょっとした手間になっていたが、R4ならいつでも気軽にカスタマイズできるのだ。
R4ならではのユニークな機能としてもう1つ、キーボードでマウスカーソルの操作ができるというのもある。「上下左右キーでマウスカーソルを動かせるだけでしょ?」といったイメージを持ってしまうかもしれないが、本当のところはもっと奥が深い。
マウス操作できるようにするには、先ほど紹介したREALFORCE CONNECTの「キーマップ入替」で設定する。「キーマップ入替」では各キーに好きな機能を割り当てることができ、R4ではここでマウス関連の機能も割り当てられるようになっているのだ(R4以外では該当の機能が表示されない)。
マウスカーソルの上下左右移動はもちろんのこと、左右ボタンや中央ボタン(ホイール)のクリック、ホイール回転、サイドボタンのアクション(進む・戻る)などを割り当てることが可能。 そして、当然ながらこれらの機能はどのキーに割り当てても良い。あまり使わないキーに割り当てるのもアリだが、キーボードから手を離さずマウス操作できるようにする、という本来の目的を考えれば、一番手の届きやすく使い勝手のいいキーにするのもアリだろう。
もちろん、そうすると重要な文字キーなどが使えなくなってしまう可能性はあるが心配無用だ。Fnキーを押したときだけ、という設定もできるし、R4は最大4つのキーマップを保存できるため、そのうちの1つを「マウス操作専用キーマップ」とすることも可能。このキーマップを切り替えるアクション自体も好きなキーに割り当てられるので、マウスモードにするのも、元のキーマップに戻すのもワンプッシュだ。
とはいえ、新たにキーマップを作らなくてもデフォルトのキーマップで、すでにひと通りのマウス操作が割り当てられている。Fnキーを押しながらWASDキーがマウスカーソルの上下左右移動、ZXCキーが左・中・右クリック、上下左右キーがマウスホイールとなっている。これをベースにカスタマイズして使うのもいいかもしれない。
実際の使い勝手はどうかというと、想像以上だ。こういった原稿の執筆やコーディングなどひたすら文字入力していく場面、あるいはWebブラウジングする場面では、特にマウスホイール操作が便利。キーボードにあるPageUp/PageDownキーだと、スクロール量が多すぎてしまいワープ感が強いが、ホイールの上下スクロールを割り当てたキーではマウス(OS)側で設定した1ノッチ分のスクロールになり、適度なスクロール量になる。
マウスカーソルの上下左右移動やクリック操作については、正直な感想を言えば、おそらく使いどころが限られそうではある。だが、テキスト編集中の右クリックからのサブメニュー選択などで威力を発揮してくれるだろう。2キーを同時押しすれば斜め方向の移動やドラッグ&ドロップも可能だ。
ただし、キーを押下したときのマウスカーソルの移動量や速度は一定(OS側のマウス ポインターの速度設定やキー長押し時の待ち時間設定による)なので、離れた場所に一気にカーソル移動したいとか、ドット単位の細かな操作をしたい、といったような目的には向かない。あくまでも補助的な機能として考えておくと良いだろう。
キースイッチはREALFORCEに一貫して採用されている独自の静電容量無接点方式で、これまで通り軽快かつ静音性の高いもの。キースイッチがオンになる位置を調節できるAPC(アクチュエーションポイントチェンジャー)機能は、0.8~3.0mmまで0.1mm刻みの22段階で設定でき、R3の4段階から5倍以上に細分化した。
耐久性も向上しており、R3のキー押下回数が5,000万回だったところから、R4では1億回以上へと大幅に高めている。ただ、東プレの山根氏いわく「 R3の5,000万回というのは、メーカーとして確実に保証できる数値として出しているもの。テスト自体はその何倍も行なって問題ないことを確認している 」とのことで、R4も「 最低ラインが1億回であって、一般的な使用環境ではそれ以上持つはず 」だという。
キーキャップには高強度のPBT樹脂を用い、キートップのプリントは昇華印刷によるもの。繊細なシボ加工も施すことで「 プリントした文字が消えにくく、摩耗によるテカりを抑えている 」ところもR3から受け継いでいる。耐久性を高めて製品寿命を長くすればするほど買い換え需要は減ってしまうことになるが、それでもあえて部品1つ1つに高耐久なものを選び抜いて使用していると明かす。
長く使い続けられるようにするこうした耐久性や使い心地へのこだわりは、初代から変わっていない。機械的にキーを繰り返し押下するだけのテストだけでなく、認定を受けた検査員が1つ1つのキーを四隅から押し、打鍵感を徹底的にチェックするテストも実施している。「 タイプフィーリングは人の感覚でしか判断できないところだからこそ、こだわっている 」と話す。
「日本のものづくり品質」を守り、壊れにくい、劣化しにくいキーボードを突き詰めて開発してきたREALFORCE Rシリーズは、「10年以上使っても打鍵感が変わらない」と語るユーザーが多い。実際、20年以上1つのキーボードを使い続けているヘビーユーザーも存在するのだそうだ。
「 部品を安いものにすればもっと利益は出る。でも、そういうことをしないのがREALFORCE。壊れないから好き、とお客様に言ってもらえることが、私たちの製品が誇る唯一無二の価値だと思っている 」と山根氏。
そうは言っても、長年使っていれば動作不良が発生する可能性がある。そういうときのために修理対応ももちろん行なっており、東プレでは製品の生産終了後もしばらくの間は部品を保有して「部品が残っている限り対応する」という。
しかも、キーボードのあらゆる箇所をクリーンアップしてくれるオーバーホールは、わずか8,800円で依頼できる。新品同様の動作に復活させられるため、もはや半永久的に使い続けられるキーボードと言っても過言ではない。
REALFORCE R4は、実績のある高耐久な静電容量無接点方式スイッチを採用し、これまでと同様の打鍵感を維持したうえで、高耐久にさらに磨きをかけて製品としての信頼性をまた一段高めた。そうした東プレのフラグシップ製品としてのベース部分はきっちり守りつつ、コンパクトサイズのスタイリッシュなデザインとし、省電力化やマウス機能のような新要素によって着実に進化させてきている。
3万6,520円(テンキーなし)~3万7,180円(テンキーあり)という一見高額な製品ではある。だが、 REALFORCEシリーズは隅々にまで配慮が行き届いたその使い心地、故障や劣化が少なく10年以上使い続けられる耐久性、その先も長く付き合っていけるサポート体制などを考えれば、決して高い投資ではないだろう。
ラインナップにはブラックとホワイト、テンキーありとなし、かな表記ありとなし、日本語配列と英語配列、キー押下圧は30g、45g、そして30gと45g混合の変荷重、といった仕様の異なるさまざまなパターンが用意されており、自分の好みにも合わせやすい。R3以前のユーザーはもちろんのこと、純粋に快適にタイプできるキーボードが欲しい、という方もぜひ一度チェックしてみてほしい。