バーチャルハトにメッセージを託す「伝書鳩アプリ」が人気。実際の距離分、時間がかかります
いきなりですが、本物の伝書鳩の仕組み、知ってます? かなり優秀です。
というのも今、「Carrier Pidge」というアプリが話題になっておりまして。なんと仮想伝書鳩アプリなんです。伝書鳩なので、メッセージを送ってもすぐには届きません。送信には、実際の地理的距離が反映されるので、相手が遠くにいるほど届くまでに時間がかかります。
「早く、便利に 」が基本のこの時代に逆行している、おもしろい発想だと思いますが、実はこうしたレトロ文化のアプリってほかにも結構あるんです。たとえば、2017年にスタートした文通相手を見つけるアプリ「Slowly」なんかは、ずっと人気です。
どんな仕組みのアプリ?
そして今回のCarrier Pidgeは、伝書鳩が時間をかけてメッセージを運んでくれます。手紙を運ぶ旅で自分の鳩が死んでしまうこともあり、その場合は課金して新しい鳩を買わなければならないという機能まであります。
一見面倒くさそうですが、好評を得ているこのアプリ。理由は、通知やメッセージに追われるデジタル疲れを、あえて連絡を遅く、不便にすることで少し和らげるからかもしれません。昔は何をするにも時間がかかったけれど、その分、なんか人生ってもっと生き生きしてたっていうのを思い出させてくれます。
Carrier Pidgeを使っている27歳のオリビア・マクドナルドさんは、ニューヨーク・タイムズに、「不便なほうが、かえっていいものもある」と語っています。
でも、ここでひとつ言いたいのが、伝書鳩は決して「昔の不便な通信手段」ではなかったということ。むしろ、かなり優秀な通信手段でした。新しい技術に置き換わるなかで、鳩ならではの仕組みも一緒に失われてしまったのです。
ここからは少し、伝書鳩ってどんな仕組みなのか、寄り道してみましょう。
もし本物の伝書鳩を忠実に再現したアプリがあったら、それはそれでかなり楽しそうです。「たまごっち」とメッセージアプリ、それにGPSを使った宝探しゲーム「ジオキャッシング」を足したようなものになるかもしれません。
本物の伝書鳩は、好きな場所には飛ばせない
というのも、本物の伝書鳩は、手紙を送りたい相手のところへの道を知っていて飛んでいくわけではないんです。まず自分のところで鳩を孵化させて育て、その場所を「帰る家」として覚えさせます。
そのうえで、自分にメッセージを送りそうな人のところへ、あらかじめその鳩を預けておきます。友人や仕事仲間に直接渡してもいいですし、かつては気球で鳩を各地へ運ぶような方法もありました。
そして相手が自分に連絡したくなったら、メッセージなどを鳩につけて放します。すると鳩は、育った場所へ帰ってくるというわけです。つまり、Carrier PidgeのApp Storeでの説明にあるように「誰にでも伝書鳩を送る」というより、本物の伝書鳩が得意なのは「自分の家へ帰る」ことなんです。
伝書鳩の仕組みをそのままアプリにしたら面白そう
だからこそ、この仕組みをそのままアプリにしたらおもしろいかもしれません。
アプリの中で自分の鳩を育て、実際に誰かと会ったときに、その人へ何羽か預けておく。すると、その人はあとでその鳩を使って、自分宛てにメッセージを送れるという仕組み。どうでしょう?
iPhoneなら、端末同士を近づけて連絡先を交換する操作をそのまま「鳩交換」に使えそうですよね? もちろん、自分から返事を送りたいなら、相手の鳩も預かっておく必要があります。なので、自分の鳩だけでなく、他人から預かったデジタル鳩の餌や世話もしなければならないわけです。預かった鳩なんで、ごちそうを食べさせたり、そこに課金要素を入れるのも、アリですよね。
帰巣本能を利用して鳩に情報を運ばせる方法は何千年も前から使われており、記録としては少なくとも古代ローマ時代までさかのぼります。鳩による通信が長い歴史を生き延びてきたのには理由があります。そして、伝書鳩は今でも存在します。単純に、鳩で物を運ぶという方法がちゃんと機能するからです。
場合によっては、インターネットより速いことだってあります。
鳩がインターネットを超えることもある
たとえば以前Gizmodoでも紹介したように、2009年には、南アフリカの金融サービス会社が、大量のデータを約80km離れた相手に送る実験を行いました。方法はシンプルです。Winstonという伝書鳩の脚にメモリーカードを取り付けて飛ばしたのです。
当時、その地域のインターネット回線はかなり遅く、Winstonが目的地まで飛んでいる間に転送できたデータは、鳩が運んだ量のわずか4%だったそうです。
話は逸れましたが、伝書鳩アプリが人気になったり、ガラケーが出てきたり、最近便利すぎることにうんざりしてる風潮を感じますよね。