【分析】「トランプの戦争」はいつ終わるのか イラン内部の権力闘争で決まる可能性も
(CNN) 40年あまり前、イランはフセイン大統領が率いていたイラクとの戦争で数カ月間劣勢が続いた後、数千人の若い兵士らによる奇襲攻撃を仕掛けた。これで流れが変わった。 【映像】イラン、地下トンネルに並ぶドローンの映像公開 だが当時の最高指導者ホメイニ師はここで勝利を固める代わりに、それ以上の目標を掲げた。米国が支援を強めていたイラクの独裁者、フセイン氏を倒し、将来の敵に対してイランとの戦争には大きな代償がともなうことを見せつけるという目標だ。 イラクとの戦争は、現代イラン国家の形成における重要な転機となった。ホメイニ師の決断によって戦争は6年間に及ぶ消耗戦と化し、何十万人もの死者が出て、中東の現代史上最も凄惨(せいさん)な争いのひとつになった。それから数十年が経った今、イランはまたしても、戦争続行か和平合意かという選択に直面している。 イラクへの攻撃を率いたイスラム革命防衛隊の強硬派は、現在もイラン政権内で権力の座を支配している。かれらは米国・イスラエルとの現在の戦争をイラクとの戦争と同様に「押しつけられた戦争」ととらえ、その結果はどちらの力が強かったかではなく、どちらが耐え抜くかで決まると考えている。これに対して穏健寄りの勢力は、今までほとんど進展がなかった交渉の中に、イラン側の成果を固められるチャンスを感じ取っている。 6カ月に及ぶ戦争ではこう着状態が続き、イラン国内の分断が深まった。同国の絶対的権威である最高指導者モジダバ・ハメネイ師は、今も姿をくらましている。
対立するイランの政治家たちは、いずれも同国が戦争に勝ち抜いたと公言している。 とはいえ、イランにとって勝利がどうあるべきかをめぐっては、イデオロギーの深い溝が横たわったままだ。 一方にはペゼシュキアン大統領やガリバフ国会議長、アラグチ外相らをはじめとする実利主義的な実務派がいる。 この勢力は戦争で疲弊(ひへい)した経済や負担が大きい米軍の海上封鎖、国内インフラの損壊を理由に、決定的な合意を支持している。 かれらは国民に向け、有利な立場で争いに決着をつけられるチャンスは去りつつあると警告してきた。国民の間にも、国内の危機を緩和し、国際社会での孤立を解消して国家を存続させるためには、米国との間で47年前から続く対立を終わらせるのが最も確実な方法だとする考え方がある。実務派はその声を代弁している。 ペゼシュキアン氏は今月、「戦争はいずれ終わらせなければならない」と述べた。「今終わらせるほうがいい。今ならわが国が力と威厳を持つ立場にあり、全世界もわが国の勝利を認めるからだ」 これに反対するのが保守強硬派だ。イデオロギーの中心には米国への不信感がある。米国がイラン・イスラム共和国をつぶそうと躍起になっていると主張する。強硬派は過去半世紀以上、米国の真意を怪しむ警告を発してきた。今ではトランプ氏の戦争により、穏健派に対して正しさが証明された形だ。 強硬派はまた、現職の当局者らを「欧米志向」と批判し、国内の問題を誇張することで和平合意をめぐる世論の誘導を図っていると主張する。 英シンクタンク、王立国際問題研究所で中東・北アフリカ部門を率いるサナム・バキル氏は、CNNにこう語った。「強硬派は米国を、到底信用に値しないアクター(行為主体)とみている。トランプ氏本人に何度もだまされてきたため、今回もまさにそうなるだろうと思っている」 「かれらの考えでは、(戦争に)負けていないというのは勝ったということ。目的は米国からさらに良い条件を引き出して勝利を収めることだけでなく、国内の敵対勢力との競争に勝って生き長らえることだ」 かれらはペゼシュキアン氏に対し、強硬派の前大統領がヘリコプター墜落で死亡した後、たまたま就任することになった弱腰の大統領との見方を示す。同氏は6月の停戦合意にトランプ氏とともに署名したことでさらに非難され、壊滅状態の経済や米国との合意崩壊の責任を問う強硬派からの批判を許すことになった。 双方の溝は極めて深い。強硬派は、当局者らが疲弊した国民に合意を受け入れさせるため、経済危機への対応を故意に誤って圧力をかけたとまで主張する。合意もやむなしと思わせるために政府が燃料不足を演出したという声や、穏健派がクーデターを仕組んだという声まである。 強硬派のモハンマド・マナン・ライシ議員は「わが国は経済面で本当に行き詰まっているのか。それとも行き詰まりを印象づけているだけか」と問いかけた。「すべてが戦争のせいだとされてきたが、実はすべてが戦争にかかわっているわけではない」