【米国市況】株は反発、企業収益への楽観で-円は154円台前半

31日の米株式相場は反発。テクノロジー大手に偏った上昇への懸念はくすぶるものの、企業収益に対する楽観がそれを上回り、強気相場は再び勢いづいた。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6840.20 17.86 0.26% ダウ工業株30種平均 47562.87 40.75 0.09% ナスダック総合指数 23724.96 143.82 0.61%

  S&P500種株価指数は、前日に上昇が小休止となったものの、この日はアマゾン・ドット・コムやアップルの明るい収益見通しを受けて再び上昇した。ただ、アップルは中国での売り上げ減が重しとなり、年末商戦への期待が高まる中でも下げに転じた。

  地政学的リスクや通商問題、米政府機関の一部閉鎖、高水準の株式バリュエーションなど、10月の市場はさまざまな要素を消化する必要があった。それでも最終的に相場を支えたのは、米企業の業績に対する信頼感と、利下げが企業収益の勢いを後押しするとの期待だった。

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は、今週は通商問題や金融政策、企業決算といったニュースが相次ぎ、投資家の強気シナリオに対する試金石となったと指摘。「足元の上昇基調に乗るかどうかを巡り懐疑的な見方が強まっている。ただ、これまでの根拠が次々と崩れてきた弱気派による悲観論の延長に過ぎないとのみる向きも多い」と述べ、「年末にかけて相場は堅調を維持するとの見方を裏付ける指標が引き続き多い」と分析した。

  4月の急落以降、S&P500種は約40%上昇。月間では6カ月連続高と、2021年以来最長の連続高となった。ナスダック100指数は8年ぶりとなる7カ月連続高。ハイテク大手の健全なバランスシートと人工知能(AI)への強気ムードが背景にある。

  「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大型ハイテク7銘柄は1.2%上昇した。アマゾンはほぼ10%高。

関連記事:アマゾン決算、AIバブルの懸念を緩和-クラウド事業が成長加速

  株式市場を取り巻く環境は引き続き良好とされる一方で、上昇をけん引する銘柄が限られる「裾野の狭さ」への懸念がくすぶっており、短期的にはこの点が相場上昇の足かせとなる可能性がある。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「市場参加者が限られているため、ハロウィーン気分を満喫している銘柄もあるが、多くの銘柄は下げている」と指摘。「現在の裾野の狭さを踏まえると、6カ月続く強気相場の中で押し目買いを狙うことが、リスクとリターンの観点から最も有利だとの見方を維持している」と述べた。

  ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのトーマス・リー氏は「第4四半期は季節的に強く、われわれは押し目買いを入れている」と述べた。その上で、「2桁成長を記録しているセクターは数多く、これはAI関連の話にとどまらず、米企業や多国籍企業が力強い利益成長を実現できていることを示している」と語った。

国債

  米国債市場では20年以下の国債利回りが小幅低下した。ただ、週間では上昇した。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長によるタカ派的な発言や、米経済の底堅さを示す兆候を受け、12月の利下げ観測が後退。金利スワップは、同月の利下げ確率がほぼ五分五分であることを示している。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.65% 0.0 0.00% 米10年債利回り 4.08% -2.0 -0.48% 米2年債利回り 3.58% -3.3 -0.90%     米東部時間 16時52分

  アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は、利下げ期待の「フロス」の一部がなくなったと指摘し、妥当な調整だとの見方を示した。「米国で金利がさらに低下するには、景気減速が必要だ」と述べた。

外為

  外為市場ではドル指数が3日続伸し、月間では今年2番目の大幅高となった。ユーロは対ドルで8月初旬以来の安値を付けた。円は1ドル=154円台前半を中心にもみ合いに終始した。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1220.88 2.28 0.19% ドル/円 ¥154.07 -¥0.06 -0.04% ユーロ/ドル $1.1537 -$0.0028 -0.24%     米東部時間 16時53分

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのストラテジスト、エリアス・ハダッド氏はダラス連銀ローガン総裁の発言について、「パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の見解と一致しており、利下げ見送りの支持に『賛同の声が高まっている』ことを浮き彫りにしている」と述べた。

  その上で、「当社は引き続き、FRBが0.25ポイントの追加利下げを実施するとみている」と発言。「景気に引き締め的な政策は、すでに脆弱(ぜいじゃく)な雇用環境をさらに悪化させる可能性があり、インフレが再び加速するリスクは現時点では顕在化していない」と話した。

関連記事:ダラス連銀総裁、今週FOMCで利下げ支持せず-シュミッド総裁と足並み

  ドル指数は月間ベースでは、今年2番目の大幅高となった。米経済や米金利見通しの手掛かりとなる公式統計の不足で不透明感が強まる中、ドル買いが優勢になった。

  TDセキュリティーズのストラテジスト、ジャヤティ・バラドワジ氏は「米国で主要な経済指標の発表がなく、関心が国外情勢に向かう中で、ドルの上昇はもうしばらく続くとみている」と述べた。その上で、「財政や選挙を巡る懸念が数多くある。まずフランス、そして日本、英国だ」と指摘した。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は3営業日続伸。市場では、米国によるベネズエラ攻撃の可能性と、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスの今週末の会合が意識された。

  OPECプラス会合では、3カ月連続での日量13万7000バレルの生産引き上げが基本シナリオになる見通しだ。参加国代表が今週明らかにした。これは市場予想とも一致する。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、朝方には大きく上昇する場面もあった。米国がベネズエラの軍事施設を含む標的への攻撃を計画しているとの報道に反応した。トランプ氏はその後、そのような攻撃は検討していないとして、報道を否定した。

関連記事:トランプ米大統領、ベネズエラ軍施設攻撃決定との報道を否定 

  ユーラシア・グループの地政学アナリスト、グレゴリー・ブルー氏はベネズエラについて、「米国の意図が体制転換にあるのなら、エネルギーインフラをおおむね無傷のまま維持する方が有利に働く。そうすれば、マドゥロ政権の後を継ぐいかなる政府にとっても財政的支えになる」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比41セント(0.7%)高の1バレル=60.98ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は0.6%上昇し、64.77ドル。12月限はこの日が最終取引だった。

  金スポット相場は反落。米中の貿易休戦が意識された。ただ、両国の長期的な競争を巡る懸念は払拭(ふっしょく)されておらず、下値は抑えられた。

  中国の習近平国家主席は、トランプ大統領との会談後初となる公式発言で、サプライチェーンを分断する動きに警告を発した。

  金は週間ベースでは2週連続下落。20日に過去最高値の4381.52ドルを付けてから、8%余り下げている。米追加利下げ観測が後退したことも、売り圧力になっている。パウエルFRB議長は今週、0.25ポイントの利下げを実施した後、12月の追加利下げは「既定路線ではない」と述べた。

  金連動型上場投資信託(ETF)からの保有金放出も相場の重しになった。ブルームバーグがまとめたデータによれば、金ETFの保有残高は6日連続で減少。ただ、30日には純流入に転じた。

  ウェストパック銀行のコモディティーアナリスト、ロバート・レニー氏は「タカ派的な米利下げに加え、米中貿易戦争の休戦、さらに金ETFからの大規模な放出が、調整ムードを強めている」と指摘。金価格は3750ドル近辺まで下落する可能性があるとの見方を示した。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時45現在、前日比21.18ドル(0.5%)安の1オンス=4003.36ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は19.40ドル(0.5%)安の3996.50ドルで引けた。

原題:Stock Bulls Power S&P 500’s Historic Winning Run: Markets Wrap(抜粋)

US Treasury Yields Climb as Traders Trim December Rate-Cut Bets

Dollar Extends Rally; Euro Hits Lowest Since August: Inside G-10

Dollar Has Second Best Month of 2025 on Data Void, Hawkish Fed

Oil Steadies as Traders Weigh US Moves on Venezuela, Oversupply

Gold Hovers Around $4,000 as Traders Weigh US-China Trade Truce  

— 取材協力 Phil Kuntz

関連記事: