『P5X』試遊レビュー。『ペルソナ5』ファンも安心して遊べるので大丈夫。無料で好きなペルソナを育成、ジョーカーたちとの関係など、気になる点を改めて確認
セガより2025年6月26日よりサービスが開始となった、スマートフォン・PC向けRPG『ペルソナ5: The Phantom X』(以下、『P5Xペルソナ5』(『P5
』)の世界観をベースとした新作タイトルで、中国などのアジア圏では2024年よりサービス中。それをブラッシュアップし、日本向けにサービス開始するのが今回の『P5X』だ。開発はセガ、アトラス、中国のBLACKWINGSスタジオの共同で手掛けている。 本記事では事前に約2時間試遊をした感想とともに、『P5X』の魅力をお伝えしよう。なお、記事の内容はすべて開発中のもので、正式サービス時には変更点があるかもしれないことを留意してほしい。
世界観は『P5』と共通しており、舞台となるのは現代的な日本。ストーリーは完全オリジナルで、プレイヤーは主人公となり、昼は学生、夜は怪盗として悪しき欲望を持つ人物を改心させるため暗躍していく。このあたりのイメージは『P5』と同じだ。
ゲーム冒頭では、ルフェルと名乗る人語を話すフクロウとの出会いや鼻の長い奇妙な男の待つベルベットルームへの訪問など、さまざまな不思議な現象に見舞われつつ、主人公はペルソナ能力(心の力を具現化した存在。ともに戦ってくれる)に目覚めていく。 主人公は固定のキャラクター。もちろん自由に名前を付けることもできるが、自分で名前を考えるのが苦手なユーザー向けに、アトラスが考えた案として“上城 渚”という名前がセットされている。これはクローズドβテストに参加したユーザーからの意見を踏まえ、日本版で改めて設定した要素とのこと。なお、名前は後で変更可能だ。
異世界・メメントスや、人の心がダンジョンのように具現化した“パレス”など、『P5』シリーズらしい要素も健在で、日常生活と異世界での冒険を交えながらゲームを進めていく。運営型タイトルなので、さすがに日付で行動を管理するカレンダー要素はなく、自分のペースで物語を進められるのもポイントだ。
試遊した物語は序盤のみだが、運営型タイトルとしては珍しいというか、かなり家庭用ゲームに近い作りになっている。最序盤こそ、シリーズファンへのサービスかのようにジョーカー(『P5』の主人公)を操作してバトルをくり広げるパートはあるが、あくまでオープニングティザーという感じ。 そこからはじっくりとストーリーが語られていき、バトルのチュートリアルが始まるのもゲーム開始から20分経ったころ。もちろん物語は運営型タイトルゆえに、ある程度は省略された展開だなとは感じるが、この手のタイトルにしては非常に丁寧だ。
ジャンプアクションなどの手触りも、クローズドβテスト時よりも洗練されているとのこと。
主人公とジョーカーが冒頭でなぜか対決。どのように物語に絡んでくるのだろうか。
会話パートやアニメシーンも豊富で、話しかけなくてもいい一般生徒などとの会話も日本版では増やしているそうで、より家庭用のRPG感覚で楽しめるように作っている。ちなみに会話時の顔グラフィックはアトラスで新たに描き起こし。これも日本版からの要素とのこと。
日本版は中国・アジア版をローカライズしたものだが、説明を聞いた限りでは単にセリフなどを日本語に翻訳するような作業だけには留まっていない。 演出のテンポ、アクションの触り心地、はたまた日本版だからこその新たなテキストの追加(ボイス収録も実施)など、リマスターに近いような作業が盛り込まれているそうだ。
ショップ役となるキャラクター(シャドウらしい)も現れるようだ。名はマルチム。
ログインボーナスはルフェルから支給される。物語性にこだわり、ルフェルと出会った後に表示されるように調整したそうだ。
といった具合に、運営型タイトルでありながらも、じっくり腰を据えて遊ぶ家庭用ゲームにできるだけ近づけているのが『P5X』となっている。 もちろん家庭用ゲームファンが煙たがりがちなガチャなどの要素もあるにはある。が、全体を見ると「えっとガチャはわかるけど、それはそれとしてどこで収益を得るつもりなの? 基本無料ゲームですよね?」と疑問が浮かぶほどに、豪華な作りになっていた。
会話シーンはスキップも可能で、日本版では新たにつぎの重要なシーン(バトルなど)まで一気にスキップする“連続スキップ”も用意。ストーリーは後で読むこともできるので、とにかくバトルをやり込みたい、さっさと進めたいという人にもうれしい配慮があるのは、運営型タイトルならではだろう(会話シーンを倍速にすることも可能)。
主人公の家を探索したりもできた。豪邸に住んでいるようだ。
メインクエストをこなしていくと進む物語はゲームの根幹を担うコンテンツ。ストーリーを読みながら、パレスに挑むなどして進行していく。攻略できればさらに続きのストーリーを楽しめるが、RPGゆえに敵が倒せなくて詰まってしまうこともあるだろう。 そこからが運営型タイトルらしい要素で、本作はスタミナを消費して周回コンテンツに挑める。育成をする→物語を進める→詰まったら育成をする、といったサイクルでゲームを進めていくイメージだ。
パレス攻略が、いわゆるメインクエスト。進行度に応じて報酬が手に入る。
また、日常パートも育成に紐づいている。キャラクターたちとの交流を育んでいく、料理や園芸でアイテムを作る、バイトでお金を溜めて素材・アイテムを買う。これらの行動によってより育成がはかどったり、バトルにも活用できる仕組み。
園芸を通じてキャラクターへのプレゼントなどが手に入る。
料理は消費アイテム。ジョーカーも料理の腕はたしかだったが、『P5X』の主人公も料理が得意なようだ。
ミニゲームも豊富に遊べるとのことだが、今回は時間の都合もあり未体験。
メインとなるパレス攻略と日常パートの一部要素を除くと、スタミナ消費せずに体験可能なものならば自由に楽しめるとのこと。また、遊ぶ時間が限られている人向け、または時短要素として、デイリー要素をサクッと終わらせられるように、周回クエストはスキップで一気にスタミナ消費できたりする。
日常でのサブ要素は、メニューからやれることへアクセスできた。
占いはレアイベントとのことで、訪れるとなにかしらうれしい効果をもらえる。
このあたりは昨今の運営型RPGではおなじみの手法だが、日常パートは『P5X』だからこその要素。作り込まれた渋谷や新宿などの街並みは歩いているだけで楽しく、見たことあるような店舗の見た目やポスターなどについつい目がいってしまう。ちなみにショップ定員のボイスは中国・アジア版だとすべて同じだが、日本版では店舗に合わせて収録し直しているそうだ。
月島のもんじゃ焼き屋など、『P5』にも出てきたスポットはそのままの形で登場する。
映画舘では実際に映画を視聴できる(テキストと音声のみ)。そのタイトルたちはパロディばかり!
バトルはターン制コマンド選択式で、敵の弱点を突くと敵がダウン。すべての敵をダウンさせると強力な全体攻撃“総攻撃”をくり出せるなど、このあたりは『P5』でもおなじみのシステムを採用している。パーティーは最大4人+サポートひとりで編成。 適宜状況に合わせた行動をしてくれるオートバトルも選択できるほか、3倍速などにも対応。演出も省略できるので、このあたりの快適性は家庭用と運営型の中間というか、うまい塩梅で調整されていた印象だ。
さすがに2時間程度の試遊ではバトルの奥深さをじっくり体験するには至らなかったが、ちょっと遊んだだけでも「『P5』以上に属性相性が重要なんだな」と気づいたので、パーティー編成が重要になるだろう。 また、仲間たちにはそれぞれ“ハイライト”と呼ばれる必殺技が用意されている。ゲージが溜まればいつでも発動できる切り札だ。このあたりは運営型RPGらしい要素だが、各技にかっこいいカットインが用意されているので、その演出も注目ポイントだ。
攻略に必要な育成要素はとても奥深く、本作の大きな魅力となっている。段階を経て解放されていくそうで、少し見ただけでもかなりのやり込み要素。『P5』よりもかなり複雑だが、育成しがいのあるシステムがたっぷりと用意されていた。
ペルソナ3』以降の主人公が持つ“ワイルド”の力だ。
育成要素を解説する前に、出撃する仲間たちについて知っておこう。基本的にペルソナはひとりにつき1体だが、主人公だけは専用ペルソナ“ヤノシーク”のほか、2体のペルソナを装備できる。『
主人公だけ育成方法がほかの仲間と異なり、レベルはクエストの達成などで得る経験値で上がっていく。ほかの仲間のレベル上限は、主人公のレベルに応じて引き上げられる(正確にはレベル上限を突破する、その上限値)。さらに、ほかのコンテンツでポイントを得ると、スキルを習得できる“スキーマ”が用意されている。
ほかの仲間たちは、バトルのほか経験値アイテムを消費してレベルアップさせていく。レベル上限が一定値ごとに設けられていて、素材を消費することで上限値がアップ。さらに、各種スキルも素材消費で強化可能。素材は周回クエストなどで手に入れていく。このあたりは運営型RPGでおなじみのシステムだ。
そして装備品として、主人公・仲間それぞれに武器が用意されている。武器を付け替えたり強くすることでもキャラクターを強化可能だ。 装備品の一種として“啓示”と呼ばれる要素があり、これは仲間キャラクターのみに適用される。さまざまなバフ効果のある啓示アイテムを装備することでキャラクターを強化できるというもの。同じタイプを装備すると力を発揮するセット効果も用意されており、効果数値などはランダムの部分もあるため、厳選しながら進める育成のやり込み要素のようだ。
『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』(『P5R』)で登場したマイパレスも用意されている。マイルーム内に家具などを飾るハウジングのようなシステムで、マイパレス内にいるキャラクターたちとの会話、仲間どうしの掛け合いなどが楽しめる。
マイパレスは放置要素にもなっていて、時間経過などでポイントを稼ぐと、マイパレス用のアイテムを購入可能。家具はただの飾りではなく、設置することでさまざまな効果を発揮するので、パーティー全体の強化にもつながっている。マイパレスのレベルは仲間たちの戦力によってアップしていくため、仲間全員を育てていくのが本作の基本となるだろう。
育成要素はほかにもあり、とても膨大。慣れないうちはたいへんそうに見えるが、段階を経て解放されていくとのこと。慣れればやることはシンプルになっていくだろうし、必要な素材などは取得できる場所をサーチして、その場へジャンプできたので、迷うことも少なそうだ。
育成したキャラクターは成長具合を一覧で見ることができ、SNS向けにシェア画像を生成できる。
仲間は物語の進行で加入するメンバーのほか、“怪ドル”という概念としてのみ参加するタイプもいる。怪ドルは設定がやや複雑なので説明は省くが、メインストーリーに直接的には絡まず、おもにガチャで入手できるキャラクターといったところだ。
本作オリジナルのキャラクターたちがペルソナ能力者として活躍するのだが、なかにはジョーカーなど『P5』のキャラクターも登場。おなじみのメンバーも仲間になるのはうれしいところ。
ガチャはキャラクターのほか、主人公に装備できるペルソナが排出される仕組み。仲間たちのペルソナやスキルは固定されているので、バトルに合わせてさまざまな編成を考えるのはとても楽しそう。また、ストーリーで加入するメンバーだけでも、基本的な部分は進められるようになっているとのこと。
ほかにも課金要素はあり、ざっと見たところおもに時短要素(育成アイテムセットなど)。欲しい人は買えばいい、くらいの立ち位置になっているようなので、そのあたりのバランス感覚は無課金ユーザーも安心して見ていられるのではないだろうか。
武器もガチャにあるのだが、一定レア度までは店舗で購入も可能とのこと。
ここまででも要素がてんこもりすぎなので、十分ゲームとして成立するだろう。驚いたのが、しっかりと本作にもペルソナの育成要素もある点。ペルソナはガチャやクエストなどで入手ができ、『真・女神転生』でいう仲魔のようなもの。一応ガチャは絡んでいるが、すべてのペルソナを無料で手に入れることができるようだ。
こちらもやや複雑だが、とりあえずこれを覚えておけば問題ない。
- ゲットしたペルソナは恒久的に使用できる
- 重複すると素材アイテムになる
たとえばジャックフロストを手に入れたら、それ以降ジャックフロストを手に入れても素材アイテム化するので、同じ種類のペルソナを複数使役する必要はない(というか、できない)。
もちろんペルソナ合体も完備。ペルソナの重複入手、または周回クエストで手に入る素材アイテムを消費すると、ペルソナに新たなスキルを付与できる。覚えたスキルは、スキル装備欄の枠内ならば付け替え可能で、一度覚えてしまえば後で自由に変更できる。 合体するペルソナはそれぞれに指定されたものだけ。その代わり、強化でペルソナの素材アイテムを消費すると、そのペルソナが持つスキルの中からランダムで1個習得できる。つまり、用意されたスキルならば、なんでも覚えられるというわけだ。
まさにペルソナ合体的な楽しみが本作にも用意されているというか、カスタム要素としては『P5』を超えている内容だ。『P5』では段階を経て強いペルソナをどんどん作っていく運用方法がメインだと思うが、本作では“自分の好きなペルソナをとことん鍛える”みたいな運用もできるだろう。 改めて言うが、ペルソナ部分はすべて無料でも達成できる。そして、やり込むほどに主人公が強くなるので攻略に役立てることが可能だ。いわゆる無課金ユーザーにもうれしく、とてもリッチな仕様だと感じた。ペルソナ育成だけで別のRPG作れちゃうよ。
『真・女神転生III』を思い出すかのように、マタドールにチャレンジ。
勝利するとマタドールのペルソナや素材などが手に入った。
これらの育成を駆使して、メインストーリーを進めたり、より難度の高い周回クエストをこなして、メンバー全体を強化していくのが本作の基本サイクルだ。
そうして強くしたキャラクターたちは“ベルベットルームの試練”、または“心の海の試練”といったコンテンツで活躍させることも可能。こちらは難度の高いバトルに挑んでいくやり込みコンテンツで、達成すればゲーム内通貨などの報酬が手に入る。 恒常的に用意されているチャレンジバトルのほか、一定期間ごとにリセットされるバトルも存在。後者はシーズン制のランキングバトルコンテンツにもなっていて、ハイスコアを稼いでほかのプレイヤーと競い合う対人要素にもなっている。
とはいえ、おそらく『P5』のおもなファン層はほかの人と率先して対戦したくはないだろうし、それがやるべきコンテンツとして用意されているのは不満に思うかもしれない。 だが、安心してほしい。ランキングバトルで得られるゲーム内通貨の差は、ランキングに応じて差はあるものの、上位でも下位でもさほど変わらないようなのだ。おもな報酬は称号の飾り部分を豪華にできたりなど、あくまで名誉。やり込み力を反映する場として用意してはいるが、ランキングはそれを見るためのオマケに近いと言える。
ランキング上位1%と60%以下でも、もらえるゲーム内通貨の差はかなり少ない(開発中ものなので、具体的な数値は変わる可能性あり)。
ギルド要素の中には、ほかのプレイヤーと協力して戦うレイドバトルもある。こちらは本当にエンドコンテンツの先のエンドコンテンツといった立ち位置。育成が奥深いぶん、その育成具合を発揮できる場が設けられているようだ。
さまざまな報酬が手に入る交換所もあったのだが、その項目も大量だった。
テレビアニメのような世界観、学生たちが奇怪な現象に立ち向かうジュブナイルストーリー、ペルソナを駆使したシンプルで奥深いバトルと、『P5』らしい要素はそのままに、オリジナルの展開でプレイヤーを引き付ける。そこに本作ならではの多岐に渡る育成要素が加わり、やり込み度は方向性の違いはあれど、『P5』と同等かそれ以上のコンテンツが用意されている。
『P5』で言うところのコープに当たる要素は“シナジー”という名前で実装。登場キャラクターと恋人どうしになることもできるようだ。
また、『P5』とのイベントも開催されるとのことで、こちらは『P5』の心の怪盗団と『P5X』の怪盗団が、『P5』でおなじみのパレスに似た空間で出会う形で展開。特別なストーリーと冒険を楽しめる。もうひとつのメインストーリーのような位置付けだそうだ。
家庭用ゲームをメインで楽しんでいるファン層は、運営型タイトルをやや敬遠してしまう傾向にあると思う。しかし本作は、できるだけ『ペルソナ
』ファンに楽しんでもらいたいと、家庭用ゲームのような作りに極力しているのが、節々から伝わってきた。 今回プレイはゲームパッドで遊ばせてもらったこともあり、操作感も家庭用ゲームのような触り心地だった。スマホで遊ぶ人も、ゲームパッドを用意しておくのがいいかも。 もちろん基本無料なので、気になる人はまずダウンロードして、ストーリーを読み進めてみてはいかがだろうか。
サブ要素は本当に多く存在し、お遊びが満載。街中で隠れたクエストのようなものを発見することもあった。