酒・タバコだけではない…10年以上続けると大腸がんリスク約2倍に、会社員が毎日やっている「身近な習慣」(プレジデントオンライン)
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国立がん研究センターによると、日本人が最もかかるがんは「大腸がん」だという。罹患者数は年間15万人を超え、無関係ではいられない病気だ。発症を防ぐには、どうすればいいのか。ライターの黒島暁生さんが、内科医の奥田昌子さんに取材した――。(第1回)■「大腸がん」日本人が最も多くかかるがん 日本人のライフスタイルが変容したと言われるようになって久しい。特に“食の欧米化”に伴って、日本人の多くは牛肉や乳製品、揚げ物の類を毎日抵抗なく摂取している。内科医の奥田昌子さんは、日本人の大腸がんが多くなっていることについて、食生活や運動習慣などの面から警鐘を鳴らす。なぜ日本人の大腸がんは増えたのか――その理由と対策について、奥田さんに話を聞いた。 国立がん研究センターの「がん統計」によると、大腸がんの最新データは罹患数15万人超(2023年)、死亡者数5万4000人超(2024年)となっている【1】。この数字は、罹患者数としては第1位、部位別死亡者数としては女性で第1位、男性で第2位(第1位は肺がん)である【1】。一生涯において大腸がんと診断される人は、男性で9.6%、女性で7.9%【2】と、大腸がんは多くの国民にとって無関係ではいられない存在になっている。 内科医で大腸がんに詳しい奥田昌子さんによれば、その原因のひとつは「食の欧米化」だという。 「日本において大腸がんの罹患者数が増え始めたのは、1960年代のことです。これは、牛肉や乳製品、揚げ物など、これまでの日本人の食事には少なかった食べ物が食卓に並ぶようになったことと無関係ではありません。
また、一部では、日本人は遺伝的素因により大腸がんに罹患しやすいのではないかとも言われています【3】。確かに、1990年ごろから、日本は大腸がんによる75歳未満の死亡率がアメリカ合衆国を追い抜いています【4】。もしも食の欧米化だけが原因であるならば、死亡率が並ぶことはあっても、上回ることはないはずです。そのような観点からみても、日本人は大腸がんにかかりやすいといえるのではないかと私も考えています」
■「牛乳・ヨーグルト」は週1〜2回程度で だがこれらの事実は、必ずしもネガティブな面だけではないと奥田さんは言う。 「大腸がんの罹患者数増加の原因が食の欧米化によることは、ほぼ間違いがない事実でしょう。しかし裏を返せば、生活習慣を見直すことによって大腸がんにかかりにくくすることが可能であることも意味します」 ではどのような食生活にすれば、大腸がんを遠ざけることができるのか。奥田さんの指摘は具体的だ。 「日本では、1955年から牛肉と、牛乳・乳製品の摂取量が9倍になったといわれています【5】。また、揚げ物の摂取量も当然増えていると考えるのが自然でしょう。実はこれらの食品には、飽和脂肪酸という物質が含まれており、内臓脂肪を増やす働きをします」 健康にいい食品の代表格として牛乳やヨーグルトを食べる人もいると思うが、奥田さんは総合的に勘案したうえで「おすすめできないですね」と話す。 「牛乳やヨーグルトは飽和脂肪酸が豊富に含まれていて、肥満にもなりやすいですし、大腸がんになる可能性も考えられます。 牛乳やヨーグルトが健康的なイメージを持つのは、カルシウムが摂取できるからだと考えられますが、カルシウムは別の食材からでも摂ることが可能です。事実、昔の日本人は現在ほど牛乳やヨーグルトを摂取していなかったはずですが、骨が脆かったという事実はないんです。 牛乳やヨーグルトが好きで食べたい人については摂取することを否定しません。ただ、その場合でも、週に1〜2回程度が適当なのではないかと考えています」■「デスクワーク」で発症率2倍の研究も 食生活のほかに、運動習慣などを含む生活習慣についても焦点をあてたい。現代人は1日の多くの時間を仕事に費やしているが、その仕事について重要な指摘があるのだと奥田さんは言う。 「現代人の多くは、座りっぱなし、つまりデスクワークが生活習慣としてあるため、これが大腸がん発症に大きな影響を与えている可能性が指摘されています。実は、タバコや酒と同等によくない習慣でもあるんです」 もちろん、根拠となるデータも存在する。 「立ち仕事とデスクワークの人を比較して、どの程度大腸がんの発症率が変わるかを調べた研究は多数あります。それらを総合すると、結果にバラツキはあるものの、立ち仕事の人は、デスクワークの人よりも、3〜5割、中には、7割ほど発症率が低かったのです。
また、オーストラリアの研究チームによれば、デスクワークを10年以上続けた人は、そうした仕事についたことがない人とくらべて、S状結腸など大腸の出口側にできるがんのリスクが約2倍になっていました【6】」
■理由は内臓脂肪の多さ 「おそらくその理由は、肥満――それも内臓脂肪だと考えられています。内臓脂肪は、その名の通り胃や腸などの内臓の周囲に蓄積する脂肪のことです。皮下組織に脂肪が蓄積する皮下脂肪と異なり、一見しただけでは、太っているようには見えません。内臓脂肪が蓄積すると、身体全体的には細いのに、お腹だけはぽっこり出ている……そんな体型になりやすいのです。 この内臓脂肪が多いと、がんの発症率が上がってしまいます。困ったことに、たった数キロ体重が増えただけでも、リスクが上がると言われているので注意が必要です」 内臓脂肪の増加については、男女差もあるという。 「女性よりも男性は内臓脂肪がつきやすい体質になっています。特に40歳以上のデスクワークが多い男性は、注意が必要です。もちろん男性だけでなく、40歳を過ぎたら、すべての人々に大腸がんの検査を年に1度は受けていただきたいですね」 大腸がんを発症しやすくする内臓脂肪。これを撃退する方法はあるのだろうか。 「厚生労働省も推奨しているのですが、有酸素運動によって脂肪を燃焼させることがもっとも効果的だと私も考えています。有酸素運動とは、脂質を酸素の力で燃やしてエネルギーに変え、筋肉を動かす運動のことです。たとえば、ウォーキングやジョギング、水泳などがよく知られた有酸素運動になると思います」■通勤手段を自転車に、駅では階段を使って 効果的な有酸素運動の時間、回数などについても、推奨された基準がある。 「有酸素運動は、1日30分程度を週に5日以上行うとよいとされています。有酸素運動をおこなううえで重要な点として、『一度におこなっても、分けておこなっても、得られる効果がほぼ同じ』というものがあります。したがって、10分ずつ3回にわけて行ってもいいですし、5分ずつ6回でもいいので、その人の生活のペースに合わせて運動を行うことができます。 あくまで目安としてですが、息が弾むくらいの運動強度が必要だと考えられています。心拍数にすると、100〜120bpmくらいでしょう」 忙しく働く現代人にとって、日々のルーティンを有酸素運動に代替できる点もありがたい。たとえば、奥田さんは次のような運動を提案する。 「会社勤めで忙しく、なかなか運動する時間がない人は多いと思います。しかしたとえば、これまで通勤でバスを使っていた場合に、それを自転車に替えるのはどうでしょう。もし片道10分だとすれば、往復で20分は立派な有酸素運動の時間を確保することができます。
あるいは、日常的な階段利用の有用性を示したイギリスの大規模データを用いた研究があります【7】。これは1日に合計50段、階段を上がることで、心臓病に罹患するリスクが下がることを発表したものです。大腸がんの話ではないものの、内臓脂肪の蓄積を防いで動脈硬化にならない身体づくりができるという点では、通じるものがあります」
■有酸素運動になる「ラジオ体操」がおすすめ コロナ禍以降、在宅勤務が推奨されている会社も多い。出社の必要がないため、最寄り駅までの往復というただでさえ少ないビジネスマンの運動時間が減少したとの指摘もある。しかし在宅勤務をしている人でも、意識を変えることで運動を継続することができるのではないかと奥田さんは言う。 「在宅勤務の場合、休み時間に外へ出てジョギングをする人もいるでしょう。もちろんそのように意識的に運動をすることは大切です。ただ、家のなかであっても、運動をすることは可能です。 もし自宅に階段がある人なら、安全性を考慮して一番下の段だけ使えば、踏み台昇降のような有酸素運動をすることができるでしょう。あるいは階段がない場合でも、ラジオ体操を行うことで脂肪を燃焼させることができます。ラジオ体操第1、第2を通して行うと、6分40秒の運動になるはずです。小学校のときに学校でやらされた体操ですが、実は有酸素運動の要素がふんだんに入っており、大人になってからこそ馬鹿にできない運動だと考えています。 階段を使用するにしても、自宅でラジオ体操をやるにしても、重要なことは、だらだらやるのではなくある程度息が弾んで汗ばむくらい機敏に動くということです。おそらく、2カ月くらい継続して行うと、体重が減少したり、お腹周りがすっきりしたり、身体が軽いことを実感したりするでしょう。こうした体験を通じて、『せっかく頑張ったから、暴飲暴食はやめておこう』と自制できるようになれば、食生活においてもプラスになるでしょう」 〈参考文献〉【1】国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス 大腸」【2】国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス 最新がん統計」【3】「Racial/ethnic differences in colorectal cancer risk: The multiethnic cohort study」【4】WHO Cancer Mortality Database(IARC)【5】農林水産省(農林省)「食料需要に関する基礎統計」「食料需給表」【6】「Long-Term Sedentary Work and the Risk of Subsite-specific Colorectal Cancer」【7】「Daily stair climbing, disease susceptibility, and risk of atherosclerotic cardiovascular disease: A prospective cohort study」----------奥田 昌子(おくだ・まさこ)内科医京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。医学部卒業後、博士課程に進み基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察/診療にあたる。海外医学文献と医学書の翻訳もおこなってきた。現在は産業医を兼務し、ストレス対応を含む総合診療を続けている。愛知県出身。著書に『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス)、『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)など多数。--------------------黒島 暁生(くろしま・あき)ライター、エッセイスト可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。
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内科医 奥田 昌子、ライター、エッセイスト 黒島 暁生