石川県の元高校生起業家が、インスタ500万回再生の“能登のお土産”を作った理由(BUSINESS INSIDER JAPAN)
「石川県の高校生が作ったお土産『ミルクとしお』でーす!」 この夏、地元・石川県に帰省していた都内の大学に通う私は、金沢駅のお土産屋さんの前でこんな声を聞いた。2024年1月1日に発生した能登半島地震、その復興支援のために作ったというお土産のポップアップの呼び込みだった。 【SNSで話題】せいまさんが作った新しいお土産「ミルクとしお」と話題となったSNS投稿の詳細(全11枚) 当時は「そんなものもあるのか」と、とくに気にしていなかったが、数日後、たまたまインスタグラムのリールに流れてきた発売までの軌跡を見て、衝撃を受けた。 「ミルクとしお」の仕掛け人は、現在同志社大学経済学部に通う大学1年生の「せいま」こと向出惺真(むかいで・せいま)さん19歳。石川県出身のせいまさんは、2024年夏、当時高校3年生で起業。「ミルクとしお」をプロデュースしてきた。 せいまさんのインスタの視聴回数は多いもので500万回を超える。なかには元AKB48の指原莉乃さんや、現防衛大臣の小泉進次郎議員といった「大物」とコラボしている動画もある。調べてみると、お土産製造に向けて2025年2月に実施したクラウドファンディングでは、約340万円の資金が集まっており、同郷で同世代の私は、ただただ胸が熱くなった。 いち高校生、しかも起業文化が東京ほど成熟していない石川県で、せいまさんはなぜこんなにも多くの人を巻き込みながら、復興への灯火を掲げ続けられたのか。本人に話を聞いた。
「ミルクとしお」は能登産の「ミルク」と「しお」を原料にしたシンプルなお菓子。原料、生産、加工、パッケージ製作など、全て石川県内の事業者に依頼している。8枚入りで1350円(税込)と少し強気な価格設定は関係者全員にしっかりと「利益」という形で資金が循環し、復興につなげたいとの考えからだ。 2025年4月に発売すると、初月には約6000箱の売り上げを達成。6月には、石川県小松市のふるさと納税の返礼品にも選定された。石川県観光連盟の公式サイトを見ると、老舗銘菓と並んでおすすめのお土産として選出されている。 いち高校生が、ゼロからお土産を製造するまでの道のりは、当然簡単ではなかった。ただ、「何か復興のためにできないか」という想いが、せいまさんを突き動かした。 2024年1月1日。能登半島地震が発生したとき、せいまさんは石川県加賀市で家族と共に過ごしていたという。加賀市は震源地である能登半島沖から直線距離で150km以上距離が離れていたこともあり、せいまさんや家族は事なきを得た。ただ、石川県内では能登半島を中心に大きな被害があったのは、報じられていた通りだ。 「自分たちにできることはないか」 当時、加賀市内の高校で生徒会長を勤めていたせいまさんは、震災後すぐに生徒会のメンバーと連絡を取り合った。教員とも相談し、学校としてボランティアに参加できるような体制を整え、行政などから要請があれば、すぐに支援に駆けつけられるように準備していた。 しかし、どれだけ待っても学生であるせいまさんたちに声がかかることはなかった。 何かしたいのに、なにもできない ──。モヤモヤが募っていった。