左指がない球児の活躍に県岐阜商前監督が称賛!大ブレイクの始まりは前監督に届いた「外野手転向直訴」のメール|記事一覧|高校野球ドットコム

 夏の甲子園で公立校唯一の4強入りを果たした県岐阜商。今大会のヒーローになりつつあるのが7番ライトの横山 温大外野手(3年)だ。横山は左手の指が生まれつき欠損しているハンディを乗り越え、岐阜大会では19打数10安打の活躍で、チーム首位打者。甲子園4試合でも16打数5安打と4試合連続で安打を記録している。守備でも、右手にグラブを嵌め、右手で捕球するとグラブを左胸にかかえて、すばやく右手でボールをつかんで返球する動作は非常に素早い。

甲子園で躍動する横山に目を細めるのが、鍛治舎巧・県岐阜商前監督だ。昨年まで県岐阜商の監督を務めていた鍛治舎氏にとって横山は教え子の一人だ。

横山は愛知・江南ボーイズでは投手として活躍し、県岐阜商でも投手として入部したが、思うように活躍できない日々が続いたという。そんな中、鍛治舎監督のもとに一通のメールが届いた。送り主は横山だった。

〈夜遅くすみません。 自分は今ピッチャーをやっています。しかし、 今の自分のレ ベルでは中々ベンチに入れないと思います。

中学生の時に野手もしていました。自分はピッチャーよりバッティングの方がハンデは大きいと思いますが、 バッティングに自信があります。 なので、外野手として挑戦したい です〉

 鍛治舎前監督は文面からでも力強い決意が伝わる内容に、外野手転向を快諾し、1年生の11月に野手として再スタートを切った。そして2年生の春にはAチームに昇格した。この時の進化に驚かされたという。

「その間の彼の努力は、まさしく筆舌に尽くせない内容。バットを昼夜、振り続け、スイングスピードはAチームの基準140キロに迫る値となっていました。凄い!のひと言でしたね」

 右手で捕球し、すぐにグラブ持ち替える技術も築き上げていった。

「中学生として初めて見た時彼は、グラブを左手首にくくりつけて捕球していました。

高校入学時に見ると、高校野球では規則違反となる為、右手で捕球して素早く持ち替えて投げるように変化しました。そして、徐々に健常者のプレーとスピード差はないように進化していました」

 7番打者ながらチーム屈指の打撃技術を誇る横山の打撃について「左手はバットに添えているだけ。右手1本で振り切るバッティングは、バットが最短距離でミートポイントに向かっていく正確なスイング軌道を描いている。広角にヒットが打てるのは、下半身を中心とした軸がしっかりしているから。実にシンプルで確率の高いバッティングです」と高評価する。

 たゆまぬ努力で、高い技術を発揮して活躍しつづける横山に心打たれるファンも多い。そんな姿に鍛治舎前監督は「ハンディキャップをものともしないメンタルの強さ、次元の違う努力によりレギュラーを勝ち取った彼は、着実に成果を積み上げ、この甲子園でも、更なる積み上げに成功し、スタンドからも視聴者からも、万雷の拍手を浴びる選手に成長してくれました。昨年まで彼の成長に並走した監督として、指導者冥利に尽きます!」と称賛した。

 横浜戦の1回表にはライトへの大飛球を右手一本でキャッチするファインプレーを見せ、大接戦を呼び込むきっかけを作った。準決勝の日大三戦でも勝利を呼び込むプレーを見せることができるか。


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