“いつもと違う”選び方のススメ(ZDNET Japan)
「選択の暴政(tyranny of choice)」という考え方がある。選択肢が豊富であれば、誰もが自分にとって最も幸せなものを選べるはずだという理屈だ。しかし実際には、選択肢が多すぎることで、かえって不安や迷い、そして選んだ後の不満につながることが少なくない。 この概念を「iPhone 17」シリーズに当てはめるなら、Appleはまさに“暴君”と呼ぶにふさわしい存在だ。というのも、ベースモデルであるiPhone 17は、これまで以上に「プロ」らしく進化しており、2025年において最もコストパフォーマンスに優れた選択肢となっている。一方で、「iPhone 17 Pro」と「iPhone 17 Pro Max」は、前年のProモデルが抱えていた2つの大きな弱点を克服している。そして、「iPhone Air」は、未来のテクノロジーを今すぐ体験できる機会を提供してくれる。 筆者は2007年の初代モデルから買い替えを繰り返してきた。今回も4つのモデルを実際に手に取って試してみたが、これまでとは全く異なる印象を持った。その理由について、これから各モデルの特徴と、それぞれに最適なユーザー像を見ながら解き明かしていこう。 iPhone 17はより多くの人にフィットする存在 まず、今回のベースモデルを軽視してはいけない。これまで筆者は、ベースモデルを主に子供や若者、iPhone初心者、あるいはとにかく新しい端末が必要な場合に勧めてきた。費用を抑えたいというニーズに応えるモデルだったからだ。 しかし、今回は状況が違う。AppleがiPhone 17に施した強化は、筆者にとって2025年の同社イベント最大の驚きだった。まず、画面技術が大幅に刷新され、サイズは前年の6.1インチから6.3インチへと大型化。ベゼルは薄くなり、120Hzの「ProMotion」ディスプレー、ピーク輝度3000ニト、反射防止コーティング、常時表示機能が搭載された。 カメラも進化している。4800万画素のFusionメインカメラとFusion超広角カメラが採用され、さらにProやAirモデルと同じく強化されたセルフィーカメラ技術も搭載された。これは2400万画素の正方形センサーで、ポートレートモードとランドスケープモードの両方に対応し、端末を傾けることなく自動で切り替えられる。実質的に1800万画素での撮影が可能だ。 さらに、機械学習を活用して写真に写っている全ての顔を認識し、自動的に最適なモードで撮影してくれる機能も追加された。Appleがこの新しいカメラ技術をProモデルだけに限定せず、ベースモデルにも搭載したことは高く評価したい。 価格面でも魅力的だ。iPhone 17の価格を799ドルに据え置きながら、基本ストレージを128GBから256GBに引き上げた。「iPhone 16」では、256GBモデルは899ドルだったため、実質的には100ドルの値下げと言える。同価格帯の競合製品であるGoogleの「Pixel 10」やサムスン電子の「Galaxy S25」も、ベースモデルのストレージは128GBで価格は799ドルだ。 性能面でも、望遠ズームがないことと、次世代セルフィーカメラとデュアルキャプチャー機能が追加された点を除けば、iPhone 17は「iPhone 16 Pro」とほぼ同等だ。ちなみに、iPhone 16 Proは128GBで999ドル、256GBで1099ドルだった。 そのため、これまでProモデルを勧めていたユーザー層に対して、ベースモデルのiPhone 17を勧めることができるのは非常にうれしい。数百ドルの節約が可能だからだ。望遠ズームをあまり使わず、「iPhone 14 Pro」や「iPhone 13 Pro」、あるいはそれ以前のモデルからの買い替えを検討している人には、iPhone 17を強く推奨したい。今やこのモデルは、より本格的なスマートフォンへと進化している。 iPhone Airで体験する未来 iPhone Airは、ベースモデルとProモデルの中間に位置しており、シリーズの中でもやや“呪われた”ポジションにある。これまで、「iPhone 12 mini」「iPhone 13 mini」や「iPhone 14 Plus」「iPhone 15 Plus」「iPhone 16 Plus」が苦戦を強いられてきた。 サムスン電子の「Galaxy S25 Edge」と同様に、iPhone Airは折りたたみ式スマートフォン(サムスン電子の場合は「Galaxy Z Fold7」)への進化を見据えた技術的なデモンストレーションと捉えられている。つまり、Appleのエンジニアがどれだけ薄くて軽い端末を作れるかを示す試みである。 そのため、iPhone Airは過去の失敗の影に加え、2026年秋に登場が予想されている折りたたみ式iPhoneの存在にも影響されている。 それでも、iPhone Airは手に取った瞬間に「すごい!」という感動を呼び起こすモデルだった。その薄さ、軽さ、そして未来的なデザインは非常に印象的だ。9月19日以降、Apple Storeや携帯電話ショップで実際に手に取ってみて、USB-Cポートの幅とほぼ同じ厚さの端末に触れたとき、同じような驚きを感じるかもしれない。 これは2025年における最も印象的な技術的成果のひとつであることは間違いない。しかし、それを「買うべきか」と問われれば、多くの人に対しては「買うべきではない」と答えるだろう。なぜなら、ベースモデルのiPhone 17の方がカメラ性能が高く、価格も安いからだ。また、ヘビーユーザーにとっては、iPhone Airのバッテリー持ちやカメラ性能には物足りなさを感じるだろう。 ただし、テクノロジーの最先端に触れることに喜びを感じる人、他の人よりも一歩先を行きたいと考える人にとっては、iPhone Airは非常に魅力的な選択肢となる。「Google Glass」や「Apple Vision Pro」を喜んで使っていたような人なら、2026年に登場するであろう「iPhone Fold」(仮称)の最有力候補者でもあるはずだ。iPhone Airは、そんな未来を今すぐ体験させてくれるモデルだ。 ただし、日常的にスマートフォンを1日4時間以上使うのであれば、購入前に慎重に検討することをおすすめする。