ニコンに出資比率引き上げを提案、「レイバン」展開の欧州企業-関係者
ニコンが欧州の大手眼鏡メーカー、エシロールルックスオティカから出資比率引き上げの提案を受けていることが、26日分かった。両社の関係強化を目的に20%程度まで引き上げることを打診されているという。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
エシロールは昨年10月以降、ニコン株を買い増している。ブルームバーグのデータによると、現在は8.9%を保有する。追加出資は提案済みで両社は協議に入っているという。
昨年のセブン&アイ・ホールディングスに対するカナダのコンビニ大手アリマンタシオン・クシュタールの提案や、台湾・ヤゲオの芝浦電子への株式公開買い付け(TOB)など、日本企業に対する海外勢の買収や出資提案が相次いでいる。企業価値が他国に比べて割安なことや円安を背景に、日本企業がグローバル企業の戦略上のターゲットになる構図が鮮明になってきた。
ニコンはカメラや医療機器のほか、半導体の製造装置を扱っており、経済安全保障などの観点から「外国為替及び外国貿易法(外為法)」のコア業種に指定されている。このため、外国企業による10%以上の出資は同法上、事前届け出と審査のプロセスを経て承認を得る必要がある。
複数の関係者によると、エシロールはすでにニコン株の追加取得に向けて所管する省庁との事前協議も始めている。政府が安全保障上の懸念を示せば、出資の行方に影響を与えることになる。
協議は進行中で出資が実現するかどうかは不透明だと関係者は述べた。エシロールとニコンの広報担当者はコメントを控えた。財務省関係者にも取材を試みたが、現時点ではコメントは得られていない。
収益悪化
エシロールはフランスとイタリアに拠点を置く眼鏡メーカー世界最大手で、時価総額は約1232億ユーロ(約21兆円)に上る。有名ブランド「レイバン」などを展開し、アジア市場の拡大を中長期戦略の柱に据える。同社とニコンは2000年に設立した折半出資の合弁会社を通じて、眼鏡レンズの開発・生産・販売で連携してきた。
一方のニコンは業績が悪化している。25年4-6月期(第1四半期)の営業損益は12億円の赤字に転落した。主要顧客の1社である米インテルの投資抑制などもあり、業績回復には不透明感も漂う。今年に入って株価は12%下落し、時価総額は5000億円を下回る。
ニコンの大株主である英国の投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズの対応も焦点になりそうだ。ブルームバーグのデータによると、シルチェスターはニコン株の9.2%を保有する筆頭株主。開示資料では、増配や資本政策の見直しを求める可能性があると示している。
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