川﨑重工、ドローン撃墜の艦載型高出力レーザー装置のコンセプトを初公開 #DSEI2025
川﨑重工業は5月21~23日に千葉・幕張メッセで開かれた「DSEI Japan 2025」で、敵のドローンを撃墜する艦載型の高出力レーザーシステムのコンセプトを初公開した。海上自衛隊のイージス艦やもがみ型護衛艦に搭載された100キロワットの高出力レーザー装置が、高速で飛来するドローンを撃ち落とすイメージ映像が写っている。
ドローン対処用レーザーでは、川崎重工が100キロワットの高出力型、三菱重工業が10キロワットの車載型の開発をそれぞれ進めてきた。海自艦艇向けの艦載型のコンセプトを披露するのは今回の川崎重工が初めてとなる。
川崎重工の担当者によると、同社は陸上配備型のレーザーシステムを2年前に防衛装備庁に納入し、現在は試験中となっている。同社担当者は、世界の海軍専門ニュースサイトのネーバルニュースの取材に対し、艦載型の高出力レーザーシステムが完成するには今後数年かかると述べ、同社が防衛装備庁の開発事業に正式に参画できることに期待を示した。
●三菱重工、ドローン撃墜の高出力レーザー装置の実物初公開
2023年3月に開催された「DSEI Japan 2023」では、三菱重工が1.2キロ先のドローンを迎撃した10キロワットのレーザー装置の実物を初公開した。
防衛省は2025年度予算で、艦載用レーザーシステムの研究費用として183億円を確保した。予算資料で「洋上の環境に適応し、多数飛来する小型無人機の新たな脅威に対応可能な、艦載型の高出力レーザーシステムを研究」と説明した。
また、防衛省は今年度予算で、車両搭載型レーザー装置についての研究費用としても34億円を計上した。車両搭載型レーザー装置は2024年度まで研究を行ってきたが、「将来の経空脅威への対処能力向上の研究を実施」と説明した。
さらには高出力マイクロ波(HPM)に関する研究費用として8億円も確保した。レーザーは線で攻撃するのに対し、マイクロ波は円すい形状に広がるので1回の照射で飽和攻撃を仕掛ける敵のドローンを広範囲に対処できる。その一方で、敵が周波数を変更するなど、対抗措置を講じることが予想される。
マイクロ波はNECが関連研究を手掛けてきた。
防衛省は昨年7月、高出力マイクロ波システムに関する日米共同研究の開始に米国防総省と合意した。研究期間は6年。
●イージス・システム搭載艦2隻に装備を予定
現在のところ、高出力レーザーシステムは、新造中の海自イージス・システム搭載艦2隻に2032年以降の装備が予定されている。三菱重工がその1番艦、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が2番艦を建造中で、2027、2028各年度の就役を目指している。
2024年版防衛白書に掲載されたイージス・システム搭載艦の最新のイメージ図。ドローンによる飽和攻撃に対処するため、2032年以降に高出力レーザーシステムなどの装備が予定されている(防衛省)退役時期が迫るこんごう型イージス艦の後継艦にも高出力レーザーシステムは装備されるとみられる。JMUが「DSEI Japan 2025」で初公開したDDGXと呼ばれるこの後継艦のコンセプトモデル(全長170メートル)には、レーザーシステム3基が設置されていた。具体的には艦橋上部に1基、後部甲板に左右2基のレーザーシステムがそれぞれ設けられていた。
ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が「DSEI Japan 2025」で初公開したDDGXと呼ばれるこの後継艦のコンセプトモデル(全長170メートル)には、レーザー3基が設置されていた。具体的には艦橋上部に1基、後部甲板に2基のレーザーがそれぞれ設けられていた(筆者撮影)汎用護衛艦(DD)のサイズに相当する後継艦のJMUのコンセプトモデル(全長150メートル)にも、艦橋上部にレーザーシステム1基が設置されていた。
ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が「DSEI Japan 2025」で初公開したDDGXと呼ばれるこの後継艦のコンセプトモデル(全長150メートル)には、レーザー1基が艦橋上部に設けられていた。このモデルは汎用護衛艦(DD)のサイズに相当する(筆者撮影)日本に接近する中国軍の無人機の数は急増し、活動範囲も拡大している。防衛省統合幕僚監部によると、航空自衛隊が2024年度に戦闘機を緊急発進(スクランブル)させた中国軍の無人機の数は計23回の30機に及んだ。これは、空自が2013年9月に尖閣諸島周辺を飛行する中国機とみられる無人機に対し、初めてスクランブルを実施して以来、過去最多の年間回数と機数となる。2024年度の23回は、2013年度から2023年度までの総数に並び、急激に増えた。
日本のドローン対処能力の足元を見て、中国が今後も日本周辺への無人機の飛来をさらに増加させる可能性がある。高出力レーザーシステムの早期配備を含め、日本の対ドローン能力の向上が急がれる。
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