イラン爆撃の代償、核計画の実態一層見えなくなる恐れ-専門家指摘
トランプ米大統領がイランの主要核施設3カ所を攻撃するよう軍に命じたことで、核に関するイランの能力のうち、既に知られている分については大きく損なわれた可能性がある。しかし、このことは同時に、核に関してイランのどこに何が残されているのかを把握するという極めて困難な新たな課題も生んだ。
トランプ大統領は21日夜、厳重に防御された施設を「徹底的に破壊した」と述べたが、独立した分析でその主張が裏付けられたわけではない。
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イランの核計画を詳しく知る関係者3人によれば、今回の軍事作戦は迅速に成果をもたらしたというより、ウランの所在確認やイランによる核兵器製造を阻止するといった作業を一層複雑なものにした。
国際原子力機関(IAEA)の監視団はイラン国内にとどまっている。イスラエルが対イラン攻撃を開始した13日より前には、1日当たり1カ所以上の施設で監視活動に当たっていた。監視団は攻撃による被害の程度を見極めようとしている。
軍事行動によってイランが明らかにしている施設は破壊できるかもしれないが、逆にこうした行動を受けてイランが核開発計画を地下に移す動きが強まる可能性がある。
ロンドンを拠点とするシンクタンク、英王立防衛安全保障研究所の上級調査フェロー、ダリヤ・ドルジコワ氏は、米国の参戦でイランがIAEAへの協力を拡大する可能性は乏しいと指摘。
「もっとあり得るシナリオは、イランが今回の事態を受けて、協力や透明性の向上には効果がなく、今後同様の攻撃を避けるには、より深い部分に施設を建設すること、施設を公表せずにおくことが賢明だと考えるようになるというものだ」と述べた。
IAEAの査察団はこの1週間余り、イランが保有する核兵器級に近い高濃縮ウランの貯蔵場所を確認できていない。イランの複数の当局者はIAEAとの合意を破り、非公開の場所に移動させたことを認めている。
IAEAで検証・安全保障政策課長を務めたタリク・ラウフ氏は、今回の空爆によりイランが貯蔵するウランを追跡するのが一段と困難になったと指摘した。
グロッシ事務局長は18日、イスラエルによるイラン攻撃で活動が妨げられ、高濃縮ウランの貯蔵場所を特定できなくなったことを明らかにしていた。
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IAEA査察官としてイラクとリビアで活動したロバート・ケリー氏は、攻撃によってイランにおける核の監視手段にも深刻な被害が及んだと分析。
「施設が爆撃され、あらゆる種類の物質が拡散してしまった。IAEAはもはや、環境サンプリングという手法を使うことができなくなった」と述べた。
原題:Bombing Iran’s Nuclear Sites Complicates Hunt for What’s Left(抜粋)