その名も「王」。高さ50cm、重さ2.2kg。新種の超デカい真菌

5,756

平木昌宏
Photo: 中国科学院昆明植物研究所

真菌界に、とんでもない「王」がいました。

中国・雲南省の森で見つかったのは、高さ最大50cmにもなる巨大な真菌。なかには重さ2.2kgに達した標本もありました。

真菌とは、キノコやカビ、パン作りに使う酵母などをまとめた呼び名です。「菌」といっても、大腸菌などの細菌とはまったく別の生き物。

地面から太い指が何本も突き出したような、なんとも不思議な姿…。見慣れたキノコの傘はなく、先端が枝分かれしています。

その名も「Dianjunus rex」。「rex」はラテン語で「王」。

新種どころか、新しい「科」まで誕生

Photo: 中国科学院昆明植物研究所

中国科学院昆明植物研究所などの研究チームが、この真菌を発見したのは、2024年から2025年にかけてのこと。

枯れた木の根元などから採集された真菌は、通常でも250〜600g。最大のものは2つの塊がつながり、2.2kgに達していました。

Photo: 中国科学院昆明植物研究所

この巨大な塊は、真菌が仲間を増やすための「胞子」をつくる部分。これほど大きなものは、真菌のなかでもめったに見られません。

しかし、研究チームが見た目や遺伝子を詳しく調べると、大きさ以上に驚くことがわかりました。

なんと、これまで知られていた真菌のどの「科」にも収まらなかったのです。

「科」とは、簡単にいえば、進化の歴史が近い生き物をまとめたグループのこと。

たとえば、ライオンやトラ、私たちの身近にいるネコは、同じ「ネコ科」の仲間です。一方、オオカミやイヌは「イヌ科」に分類されます。

今回の真菌にも近い親戚はいるのですが、体のつくりや遺伝子を調べると、既存の科にまとめるには違いが大きすぎました。

そこで研究チームは、新しい「種」だけでなく、その上の「属」、さらに大きなグループの「科」まで新設しました。

つまり、新しい生き物を1種類見つけたら、生き物の家系図に新しいグループまで加えることになったわけです。

恐竜が絶滅したころ、「王」の家系が生まれた?

Photo: 中国科学院昆明植物研究所

そして、この真菌にはもうひとつ面白い話があります。

学名の「rex」は、あのティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)と同じ言葉。研究チームは、その堂々とした巨体にちなんで名付けたそうです。

ところが、恐竜とのつながりは名前だけではありませんでした。

遺伝子の分析から、この真菌が属する家系は、約6500万年前にほかの仲間から枝分かれしたと推定されています。

ティラノサウルスなどの恐竜が絶滅したのは、今から約6600万年前。ほぼ同じ時代の話なんです。

ちなみに、研究者たちはこの真菌を「D-rex」という愛称で呼んでいます。

恐竜の「T-rex」が姿を消したころ、真菌界では「D-rex」につながる家系が枝分かれしていたのかもしれません。

Source: 中国科学院、Frontiers in Fungal Biology、Frontiers

関連記事: