「関税なんか気にしない」、FRB利下げ観測でリスク資産に買い殺到
米利下げ観測が高まる中、市場ではあらゆるリスク資産が積極的に買われている。トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争の影響に耐えている米経済が、さらに活況を呈するとの期待が背景にある。
米株式相場は13日、記録的な高値を更新する見通しだ。小型株や半導体関連銘柄が上げを主導している。世界的にも、ボラティリティー指数から欧州銀行の投機的債券、暗号資産(仮想通貨)に至るまで、企業収益や世界経済成長に対する投資家の自信がうかがえる。
トランプ氏の関税を巡る不安や、混迷する米経済政策が消費を冷やすのではないかとの懸念は、米大手テクノロジー企業の高い収益力がかき消しつつある。最新の経済指標で労働市場の軟化とほぼ予想通りのインフレが示され、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げが可能になるかもしれない。
ただ、関税の本格的な影響が米経済全体に浸透するには時間がかかるとの見方から、資産価格の上昇があまりに急ピッチで進んでいるのではないかとの疑問も一部で浮上している。
プレミア・ミトン・インベスターズのニール・ビレル最高投資責任者(CIO)は、「市場のムードは驚くほど強気だ。『関税がなんだ、そんなの気にしない』とでも言わんばかりだ」と指摘する。「現実の経済情勢とかけ離れた動きで、株式市場には楽観もしくは熱狂の波が押し寄せている」と述べた。
現時点でウォール街を支配しているのは、利下げへの楽観ムードだ。金利スワップ市場では9月の0.25ポイント利下げ確率を約90%と織り込んでおり、より大幅な利下げに賭けているトレーダーもいる。ベッセント米財務長官はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、金利は「おそらく150、175ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い水準にあるべきだろう」と語った。
関連記事:ベッセント米財務長官、FRBに150bp超える利下げ求める
S&P500種は、トランプ氏が「解放の日」と呼んで関税計画を発表した4月の安値から30%近く急伸。昨年11月の大統領選で同氏が勝利して以降でも、11%の値上がりとなっている。小型株で構成するラッセル2000指数は4カ月連続の上昇となる勢いだ。
チューリッヒ・インシュアランスのチーフ投資ストラテジスト、ガイ・ミラー氏は「米市場は新たな追い風を得た」と指摘。「米国外への分散投資について、耳にすることはもはや少なくなった。むしろ、その逆だ。米大型ハイテク企業は今後も確実に好業績を上げ続けると投資家は考えている」と話した。
シティグループのストラテジスト、スコット・クロナート氏はS&P500種の年末目標を今月再び引き上げた。減税が関税の影響を補うとの見通しを一部踏まえた。
一方、他の市場では4月からの回復はそれほど確かなものではない。米10年債利回りは3月末の水準から5bp以内にとどまり、ブルームバーグのドル指数はトランプ氏就任前の高値を依然として9%余り下回っている。
ヌビーンのマクロクレジット責任者でグローバル投資ストラテジスト、ローラ・クーパー氏は「9月に25または50bpの利下げが実施されそうだとの観測が強まる中、金利は一段の利下げを織り込む動きになるだろう」と分析。「前日発表されたインフレ指標が、この議論を活発にする道筋をつけた」と語った。
関連記事9月の米大幅利下げ観測に勢い、CPI統計がハト派の見方支える
ベッセント財務長官、9月FOMCで50bp利下げ検討の必要性に言及
原題:‘What Tariffs? Who Cares?’ as Inflation Data Ignites Risk Assets(抜粋)