S&P500種、予想上回る上昇にストラテジストが追随-史上まれな展開

米国株が春先の低迷から反発して以降、証券会社のストラテジストは株価目標を次々と引き上げてきたが、それでもなおこの上昇の勢いを過小評価し続けている。

  過去最高値を更新している現在の市場では、S&P500種株価指数が年末目標予想の平均を約3%上回っている。ブルームバーグの集計によると現在の平均は6486。この時期に実際のリターンが予想をこれほど上回ったのは2024年と1999年だけだ。

  トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争や米経済の減速兆候といった懸念をものともせず、株価が上昇を続けていることは、ウォール街のストラテジストたちにとって、いかに厄介な局面であるかを浮き彫りにしている。

  こうした要因は、予想を上回る利益の伸びや、人工知能(AI)の進展を追い風にした大手ハイテク株への熱狂、さらに最近では追加利下げの思惑などにかき消されている。

  その結果、ゴールドマン・サックスやドイツ銀行などのストラテジストは、トランプ氏の関税発動で始まった下落からS&P500種が予想外の回復を見せる中で、予測の引き上げに追われる展開となっている。

  ウォール街のベテランであるヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏は「アナリストは通常、決算シーズンを前に控えめな見通しを出す傾向にあるが、今回は特に慎重だった。ストラテジストも同様だと思う」と述べた。そのうえで、「私は経済の底堅さに対して一貫して楽観的な立場をとってきたが、それでも関税にもかかわらず企業収益や利益率がほとんど揺らがなかったのには驚いている」と語った。

  7月以降、S&P500種企業の利益成長見通しは着実に引き上げられており、株式投資家にとって楽観的な材料がさらに増えている。ブルームバーグのデータによれば、アナリストは現在、S&P500種構成企業の利益が今年9.4%増加すると予想しており、レーバーデー直後の7.1%から上方修正された。

  ヤルデニ氏自身も今月、年末のS&P500種の目標水準を6600から6800に引き上げており、今年はこれまでになく予想を何度も見直す必要があったと認めている。2025年末までにS&P500種が「メルトアップ(急騰)」して7000に達する可能性も25%あると見積もっており、連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げを続ければその確率はさらに高まるとみている。

  ストラテジストが強気の予測をなかなか打ち出せないのには、それなりの理由がある。S&P500種は4月の安値からすでに34%上昇しており、株価収益率(PER)は2021年1月以来の高水準に達している。一方で、関税が成長とインフレの見通しに最終的にどのような影響を及ぼすかについては、依然として不透明だ。

  それでも、株式相場の着実な上昇は、年初にウォール街のストラテジストが抱いていた楽観ムードを事実上復活させている。年初にはS&P500種が年間で約13%上昇するとの予想が主流だったが、貿易戦争がその見通しを覆し、5月時点では2%高にまで引き下げられていた。これは2020年のコロナ禍以来、最も大きな下方修正だった。その後、株式相場の反発が続いたことで、6月には予測の上方修正が相次いだ。

  エバコアISIの株式クオンツ・チーフ・ストラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏は「われわれが特に驚いているのは、これほどまでに後退もせず、ひたすら続く上昇の勢いだ」と語る。同氏の年末時点でのS&P500種予想は6250と従来より引き上げられており、2026年末までには7750に達するとの見方も示している。22日の終値は6700弱。

  先週、FOMCが9カ月ぶりに利下げを再開したことは、今回の株価上昇が持続力を持つとの期待をさらに高める要因となっている。

  バークレイズのデータによれば、過去50年間でFOMCが利下げに踏み切った際、S&P500種が過去最高値から1%以内の水準にあったケースは16回あり、そのすべてで1年後には株価がさらに上昇していたという。先週もまさにその状況に該当した。

  さらに、米経済が成長を続ける一方で、低所得者層や中小企業への影響が出始めた減速傾向に対して、FOMCが対応の姿勢を見せていることから、米国株は「まさに二重の恩恵を受けている」とHSBCホールディングスのチーフ・マルチアセット・ストラテジスト、マックス・ケトナー氏は指摘する。

  同氏は「このような政策環境は極めてまれで、引き続き積極的なリスク選好の姿勢を正当化する」と述べた。

原題:Wall Street Strategists Chase S&P 500 Like Few Times in History(抜粋)

— 取材協力 Lu Wang

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