「介護じゃなくて自立」孤独解消、自由と安心 高齢者シェアハウスで新しい老後生活

「ドーナッツあるよ。はいどうぞ」 「ティータイムや」  滋賀県大津市で介護事業を行う会社が運営している、高齢者向けシェアハウス。5階建ての最上階のワンフロア、全13部屋を高齢者向けのシェアハウスとして、今年5月にオープン。  現在70代〜90代までの男女6人が生活しています。 石川ヨシノさん(91) 「みんなとしゃべってると、自分の気持ちも晴れてくるやろ」  共有スペースのリビングには、大きなソファとテレビ。キッチンは自由に使え、いつでも料理ができます。お風呂は広くて清潔感ある浴場で、24時間自由に入浴可能です。  個室はワンルーム、およそ18平米で全室エアコン付き。月々の家賃は管理費、共益費込みで5万5000円です。  今年8月に入居した竹山進さん(79)。 「見てこれ」 「(Q.日によって変えるんですか?)服によって」  印刷業や派遣業を営み、61歳で引退しました。 「20年ほど前にお袋が亡くなって、それから一人住まい」 「(Q.お子さんも?)連絡なし」  離婚後、両親とともに実家の一軒家で暮らしていた竹山さん。両親が亡くなってから20年間一人暮らしをしていましたが、自宅の管理が難しくなり、市からの紹介で高齢者シェアハウスに入居しました。 「介護じゃない、自立やねんな。好きなことができるし、おばあちゃんなんかとしゃべるのが楽しいからね」 「(Q.ビールすごいですね)介護施設だったらありえない」

 シェアハウスでは入居者が一緒に食事を作る日も。この日の昼食はギョーザ。 「上手にできませんね。こんなんなった」 「ギョーザの形じゃないもん」 「シューマイやシューマイ」  自然に会話が生まれ、笑顔も。 「それは具が多い」 「多いか」 「あんまりぎょうさん入れるとはみ出る」 「こんなもん?」 「そんなもんや」 「口の中入れたら一緒やろ」 連治さん(78) 「一人で黙り込んでテレビ見てるだけやったら、だんだんしゃべらへんようになりますしね。お近づきになれてうれしい」  一般的な高齢者施設では看護師や介護スタッフによる支援がありますが、一日のスケジュールが決められていることが大半です。  一方のこちらの高齢者向けシェアハウスは、入居者たちは自分のペースで生活しながら、体操教室などのサービスを受けられます。  この日はスタッフが運転する車で、入居者全員で買い物へ。 竹山さん 「目の保養。(買うのは)今度にしよう」 石川さん 「部分入れ歯用なかった?部分入れ歯用が欲しかったな」 「部分入れ歯用これや」 「自分一人では行けへんやろ。こうして、皆連れてきてくれてね。うれしいんです」


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 最年長91歳の石川ヨシノさん。ケアマネージャーの紹介で、今年9月に入居しました。 「自分の物は自分で洗濯せんとね」  製紙メーカーで働いていた石川さんは24歳で結婚。夫と2人の子どもがいましたが、4年前、天涯孤独になりました。 「お父さんが先死んで2年ぐらいして今度、息子ががんにかかって死んだ。娘は若い時に死んで心筋梗塞(こうそく)があって。私1人が残されて」 「お遍路さん。四国行った時。70代で行ったね」 「(Q.思い出ですね)捨てないで置いてある。私が死んだ時に(棺に)入れてほしいなと思ってんねやけど、誰かに死ぬ前に言っておかないとね」 「(Q.1人で住んでるときは、不安なことも多かった?)テレビだけ見てるやろ。ここ(心)の中に(不安が)たまって。やっぱり人間話をしないといかん、人とね。徐々に(交流)していけば元気になるかなあ」 石川さん 「何してんの?」 竹山さん 「私のごちそう。ショウガ焼き」 石川さん 「おいしそうやん」  ヘルパーと一緒に夕食を作っていた竹山さんとキッチンでばったり会い、つかの間の会話。 石川さん 「フライパンは自分で?」 竹山さん 「自分の」 石川さん 「フライパンないから買うてこないかん」  高齢者向けシェアハウスの魅力は交流し、助け合うことでつながりが芽生え、孤独を感じない暮らしができること。 安江道代さん(79) 「廊下で出会っても、こんにちはとかおやすみとかいう言葉が出るから。元気でトイレ行かはるなとか、よく分かるから良いこと」 ビルの大家 「たまにサバの炊いたのを持って行ったり、おコメ配ったりしてますから。そういうのも楽しいやん」 安江さん 「いっぱい持ってきて」

 高齢者の新しい暮らしの形は他にもあります。神奈川県藤沢市には、高齢者と若者が支え合って暮らす多世代共生型アパートがあります。  全7部屋の単身者向けのワンルームで、現在、20代の若者から90代の高齢者が暮らしています。  高齢者の部屋は段差の少ないバリアフリー設計で、人の動きに反応する見守りセンサーが取り付けられているほか、アパートには訪問看護の事務所やクリニックもあり、気軽に相談ができます。  最大の特徴は、高齢者と若者が日常的にコミュニケーションを取れる仕組みがあること。その一つが、若者による高齢者への声かけです。 入居者 宮川陸さん(26) 「最低週1回は各お部屋にごあいさつをお伺いしてるんですけど、できる範囲でもっと増やせる時は増やすという感じですね」  そしてもう一つが、月に1回アパートに併設するカフェで行われるお茶会です。 倉橋遼さん(33) 「12月にクリスマス会みたいなことをやれるといいかなと」 入居者(70代)   「ここのスイーツ男子が(クリスマスケーキを)作ってくれるって言ってるよ」 「そうなの?すごい」 「彼のクッキーとかすっごくおいしくて」  お茶会の他にも、一緒にランチに出かけたりと高齢者と若者で世代を超えたつながりが生まれています。 入居者(70代)   「みんな知り合いだから、来ておしゃべりしたり。距離感がすごく居心地がいいんですよ。年は関係なくて馬の合う友達ができる」

テレビ朝日系(ANN)
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